ゴッドが現れた。ぬっころしたい。
♢6♢
勇者たちに、炊事、洗濯、掃除、を指示してお出掛けです。中央世界に。
気になっていたじゃろ?
説明しようと思う。世界の仕組みについて。
中央世界というのは、全ての世界の中心にして、全ての世界の元となる世界。
今、お前たちがいるところじゃな。
それを一界と数える。
この世界には、その中央から別れたいくつもの世界が存在している。
その始まりは人口増加が原因。
次いで、勇者と魔王の乱立。
魔王が現れるたびに勇者が現れる。
勇者に倒されるたびに魔王が現れる。
世界はそれを繰り返していた。
1つの界で年中ドンパチやっていられてはかなわない。そう考えた神は魔王に界を与えた。
神の力を超えた魔王には、そうするしかなかったんじゃ。結果、今や120の界が存在する。中央世界を含めずにだ。
バカじゃない? 大くない?
そう思った、お前は正しい。
儂も思う。バカじゃない? と。
しかしな、それもバカが管理してるから仕方ないんだ。神という名のバカが。クソヤロウと言ってもいい。
残念ながら神も1人ではないのじゃ。
担当ごとに分かれている。
昔のように1人で管理はできなくなった。
増えすぎたから、人間が。
増える人間を駆除するのに魔王が生まれる。
魔王もまた世界のシステム。対となる勇者もじゃ。
永遠と続く、終わりの無い戦いがある。
クソヤロウを倒し、世界を平和にしない限りは! あのクソヤロウが原因だから!
──木っ端微塵にしてやる! 今日こそは!
「いらっしゃいませ。どんな職業がお望みでしょうか? 様々な職種、多様な界をご案内しております」
これが勇者登録できる職業屋。
好きな職業を選択でき、その職業を必要としている界を紹介してくれる。
受付のお姉さんが美人じゃなかったら、もうここで暴れているところだ。
このお姉さん。珍しく儂の顔を知らんらしい。
いつもは来店した時点で厳戒態勢になるからな。
「元! 魔王じゃ。勇者を1人ぬっころした」
「魔王さんでしたか。知らずご無礼を。報酬を受け取るということでよろしかったでしょうか?」
「いらん! というか、そのことで話がある。 ──クソヤロウを呼んでこい!」
その言葉で、お姉さんは儂の正体に気づく。
そして手元のスイッチを押す。
すると店内にけたたましい警報が鳴り響く。
世界広しといえど、神をクソヤロウと呼ぶのは儂しかいないからな。
「──僕のマオ。姿が見えなくなって心配していたんだよ! 引っ越すなら、僕に言ってくれなくちゃ!」
警報のする店内に男がやってくる。
無駄に爽やかな。無駄にイケメンな。無駄に長身な。無駄に──。
「──誰がお前のマオじゃ! 今日こそ死に晒せ!」
「照れちゃって可愛いんだ・か・ら。そんなに可愛いと、僕が狼になっちゃうよ☆」
「ロリコンは犯罪だ! このクソゴッド! 世界のために死ねーーーー!」
ゴッドを始末すべく渾身の一撃をくらわせる。
クソヤロウは避けるそぶりも見せずに直撃する。
店内がお見せできない惨状に変わる。
「はぁ、はぁ、あと1京いくらだったか……」
「9千800兆……」
「死ねーー!」
見せられない箇所は消滅し、新たにクソヤロウの声がする。
新たなクソヤロウを即座に始末する。再びお見せできない惨状に変わる。
「7千億とんで5000万……」
「死ねーー!」
幾度も繰り返してきた。
ゴッドの残機を減らすため。
「まあ、僕はまだまだ死なないよね。無駄なことはやめて僕と遊びに行こう!」
「いくかーー! ロリコンと2人きりとか無理に決まってんだろ!」
「ひどいなー、僕が好きなのはマオだけだよ☆」
「いいから死ねーー!」
勇者よりもゴッドにいなくなってほしい。
本当に無理。存在が無理。まじで全部無理だから。
この不毛な争いも続いている。
ゴッドの残機が0になるまで……。