勇者が仲間になった! ②
♢5♢
そして帰ってきました。我が家。
不毛な大地に立つ一軒家。平屋だよ。
「……ここに住んでるんですか?」
「はいれ、はいれ。今日からみんなのお家なんだから!」
「「ボロい……」」
ゆとりはいかんな。趣があるとか言えんのか。
「城とかに住んでるんじゃないんですか?」
「前は住んでたが、無駄に広いばかりだからな。1人暮らしなら、これでじゅうーぶん」
しかし、いっきに4人増えるのか。
これはさすがに狭いかな?
「部屋は居間を除くと2つしかない。儂とアン。ヤロウ3人とで、一部屋ずつね」
玄関を上がり居間へと向かう途中、部屋が目に付いたので部屋割りを発表してみる。
「断固拒否するわ。絶対にムリ!」
即答とか。アンは本当に気が強いね。
「ヤロウたちと一緒に寝るならいいよ。夜な夜な、変なことされるよ。きっと」
「どっちも大差ない!」
「儂はしないよ? 嘘つかない。本当だよ?」
「信じられない」
頑なじゃな。本当にやんないんだけどなー。
別に年中セクハラしてるわけじゃないよ?
「その話は夜するとして、これからを考えるか」
「夜になっても嫌なものは嫌だからね」
「まあまあ、コタツに入ってみかんでも食べて」
促されるままに、みんなコタツに入る。
別にヤロウたちは含んでいなかったんじゃが……。
というか、儂の入るところは? 仕方ないな。
「なんで、私の横にくるのよ」
「えー、男の人の隣とか、わたしこわいー」
「世界ごと壊せる魔王が何を言ってんの?!」
「寂しいの……ずっと、1人でいるから……」
「……しょうがないからいいわよ」
──折れた! 可愛くいけばいいのか?!
可愛いは正義なのか?
「アン、優しいね。ありがとう」
「──うっ、不覚にもちょっと可愛いかも……」
渾身の可愛さアピールも有効。
儂に、この路線は合ってる。
「えーと、これからの話をするんじゃ?」
「そうだったな。その前に茶。勇者、早く淹れてきて。ついでにせんべいも持ってきて」
「俺が? 何故、俺だけ……」
「早くいけよ。パシリは基本だぞ」
「分かりました」
勇者は台所へと消えていく。
茶くらい淹れられるよね? ゆとりでも。ダメ勇者でも。
「1人で暮らしてるの?」
アンがそんなことを言う。
さっき、言った気がしたんじゃが?
「そうだ。隠居してしばらくは中央にいたが、一緒に暮らさないか? って魔王に誘われてな」
「一緒にっていうのは嘘ね」
「儂に、見せたかったんじゃろ。自分の努力を」
ちゃんとやっていると、そう言いたかった。そんなところじゃな。
「魔王なんていい暮らしをしてるんだと思ってた。こんなボロ家に1人で住んでるなんて想像できなかった」
「偏見じゃな。魔王といってもいろんなのがいる。アンのイメージ通りのやつ、本当に魔王なの? ってやつ、厨二病をこじらせたやつ。いろんなのがいるぞ」
魔王も時代に対応して多様化している。
最近の流行りはインテリ系。
ちゃんと、あがりを計算しているヤツ。
採算の取れる事業を展開し世界を動かしてる。
「お茶持ってきました」
テーブルに、お茶とせんべいが置かれる。
お茶くらいは大丈夫か。
「さて、これからじゃがお前らが一人前にならなければ話は進まない。儂が鍛えてやろう。魔王なんて目じゃないくらいに」
「「マオちゃん!」」
「俺は嫌だ。努力なんてゴメンだ。楽に強く、楽に魔王を倒したい!」
ダメ勇者のダメな発言が飛び出す。
ある意味スゴイと思う。ある意味ね?
「勇者は死んだほうがいいな」
「私もそう思う。何の準備もなしで突っ込んでこうなったのよ? 学びなさいよバカ!」
「「バーカ。バーカ」」
「俺には、友情、努力、勝利なんてものは存在しない。いかにして楽に、どうやって楽に、どうすれば楽にカジノまで至れるのかしかない!」
流石はモンスター。
この状況になってもそんなことを口にできるのか。
「もう後には引けんぞ。儂の手先になったんだからな。逃げたら人間の裏切り者として生きるしかない。もう、やるしか勇者に道はないのだ!」
「そんな、友情と勝利が必要になるなんて……」
「おい、努力はどうした? 一番必要じゃぞ、それ。クソザコのお前らにはな」
「この機会に、その腐った根性を叩き直してもらいなさい」
「アンに言われたら仕方ない。ウルトラスペシャルなコースでやってやろう。ヤロウたちは泣いたり笑ったりできなくしてやる」
「「──えっ!」」
ビシバシ鍛えます。
ウルトラスペシャルなコース設定で。
クズな発言をしてる暇がないくらいに。
逆らったりしたら、ドメスティックなバイオレンスが吹き荒れる。