勇者が仲間になった!
♢4♢
──ピロピロン
勇者たちが仲間になった!
名前を変えますか?
「と、普通はこうなるはずだ。勇者は勇者でいいとして、残りの3人。ウサギちゃんと……」
「絶対イヤ! 私の名前は──」
「まてまて、儂が主人。お前らペット。名前は儂が付ける。逆らうなら、こんどはどーしようかなー」
「この外道! 力で脅してペット扱いなんて、それでも人間なの!」
「儂、元魔王じゃし。ただの人間と違うし。歳も取らなければ成長もせんし」
そうなんだ。成長しないんだ……。
本当は、ボンキュッボンてなるはずなのに。
だから羨ましい。その儂にないものが。
まぁ、手に入ったんだから良しとしよう。
今日から一緒に寝ようーっと。
「ヤロウ2人はポチとタマと、ウサギちゃんは……」
「「犬猫なんすか?!」」
ゴミとカスは不服らしい。
せっかく素敵な名前を付けてあげたのに。
「イヤか? じゃあ、タマとポチならいいか?」
「「逆になっただけ!?」」
なんなんだよー、ゴミとカスじゃ可哀想だから考えてやったのに。他に思いつくのは……。
ああああ、とかにするか?
いや、モブAとモブBもいいかもしれん。
「待ってくれ。なにも名前なんか変えなくたって……」
今まで黙っていた勇者が、そう口を開く。
なにも分かってないな。コイツらは。
「問題です。魔王の手先になった勇者は、はたして勇者でしょうか。はい、勇者くん」
「……元、魔王なんですよね?」
「そうじゃな、さっきの天の声が現在の魔王じゃ。しかし、人間たちはどう思うじゃろうな。自分ならどう思う?」
「……勇者ではないかなー」
「正解! 寝返ったなんてしれたら、他の人間たちから狙われて魔王と同じくぬっころされる」
人間はそういうの厳しいから。
ほら、世界の半分貰うのとか認められない種族だから。
「それにじゃ、魔王に挑んでいって死んでないのもおかしい。お前らは死んだことにして行動する」
「そ、そんな、私たちもう故郷に帰れないの?」
可愛い。ウサギちゃんの耳がいいよね。
怯える感じが本物のウサギみたい。
「大丈夫だよ。ウサギちゃんは面倒見てあげるからね」
「──イヤ!」
おぉぅ。ウサギちゃんは結構気が強いね。
「まあ、魔王を倒して実績を上げれば問題ないがな。勇者として名声を得れば大抵のことは上手くいく」
「最初に言いなさいよ!」
「お前らは、ここであえなく儂にぬっころされた。そう報告しておく。カジノ作るんじゃろ? 魔王倒すんじゃろ? 返事は?」
「「はい……」」
あらかじめ死んだと報告しておいて、本当は生きていて魔王を倒したよ。としよう。
それでクソヤロウくらい騙せる。
「勇者と、お供のスケさん、カクさん。ウサギちゃんは……ウサギちゃんはー、ウサギちゃんでいい?」
「イヤだって言ってるでしょ! どんだけバニーに引っ張られてるの。あげるから、これ」
そう言って、バニーの耳を儂につけるウサギちゃん。もう……ウサギちゃんじゃない。
「あら可愛い。似合ってるわよ。とっても」
「──ならいい! 儂がウサギちゃん。お前はアンコ。儂、餡子好きだから」
「イヤ。本当にイヤ」
センスがないと言われました。
儂も譲らなかったので、最終的にアンで妥協してくれました。
♢
勇者と、スケさん、カクさん、アン、が仲間になった!
「まずは家に帰る。後ろをついてこい。離れたり1人で行動したりすると、ああなるからな」
道端にガイコツが転がっている。
この辺の敵にやられたんじゃろ。哀れ。
「気になってたんですが、ここ何もないですよね。街も村もあるようには見えないんですけど……」
「あるわけないじゃろ。ここの敵はエンカウントしたら、逃げるしか選択肢が無いレベルだからな。街も村もない! 一面の不毛の大地が広がる、まさにラスボスが住んでるようなところじゃ」
人里はないし、隠居の身にはちょうどいい場所ではあるがな。買い物だけは面倒だが手下ができた。
コイツらにやらせよう。他にもいろいろとね。
「こんなところに住んでるんですか? 魔王さんは」
「儂を魔王と呼ぶのはやめろ。魔王は一界一人。儂のことは、マオちゃんと呼べ!」
「「──マオちゃん?!」」
「儂は可愛らしさを追求する。それしか生きる道がないから。ボンキュッボンにはなれないから」
それが儂の生きる道。
可愛く君臨するしかない。お菓子の国に。
今日は本当にいいことを聞いた。
「俺たちは大丈夫なんだろうか……」
「大丈夫なわけないじゃない。魔王の手先になったのよ?」
「「全部、勇者が悪い」」
黙ってついてこれんのか。
ただ、誰かが一緒にいるのは久しぶりだな。
「くっちゃべってると置いていくぞ。ワンパンだぞ。教会からやり直しじゃぞ?」
そんなシステムはないがな。
ただ、教会はないが神はいる。
界を作り、人を作り、世界を運営する。
──クソヤロウが!!
あとで報告ついでにぬっころしてこよう。
今度こそ塵も残さず消してこよう。




