畑を作る! ②
♢10♢
あれから4時間かかって杭打ちは完了した。
スケさんとカクさんが、思っていたよりも体力がある。根性もだ。
……それに比べて勇者はゴミすぎる。
完全に2人の足を引っ張っていた。こいつは、まったく役に立たなかった。
もう、勇者をパーティから追放した方がいいんじゃないだろうか?
代わりの勇者を入れて魔王をぬっころした方がいい気がする。
「ハァ……ハァ……。やっと終わった!」
「勇者は、ほぼ何もしてなかったけどな。恥ずかしくないのか? いちお。勇者はお前じゃろ」
「恥ずかしくはない。体力なんてなくても生きていける。役に立たなくても生きていける。出来るヤツについていけばいいんだ!」
「最低じゃな。流石モンスター。ひくわー」
「「ひくわー」」
しかし、儂ら3人からの「ひくわー」にも特に気にしたふうのない勇者。
メンタルは強い! まるで鋼のようだ!
「終わったんだから帰ろう。アンが飯を作ってるはずだから」
そうじゃな、明日も早いしな。
「よし! 撤収! 明朝再びここに集合」
「「お疲れ様でした!」」
しかしね。勇者が空気すぎる。
どう鍛えたら魔王倒せるのか……。
ぜんぜん倒せる気がしないのは気のせいだよね?
正攻法でムリなら卑怯の限りを尽くすしかないかー。そんな勇者イヤじゃな。下衆すぎる。
好きなこと。得意なことを使うのがいいか?
その辺も考えんといかんな。
「あー、やっと飯だ!」
勇者力は1以下じゃろうし、持ち前の地力もない。
勇者とは名ばかりのハリボテ。量産品以下の性能。
うーん、悩むわ。
働きたくないという理由で勇者になったダメ人間。その目的は魔王を倒した討伐金でカジノを作る。
一切、物語もない。本当にただのクズ。世界が生み出したモンスター。
「ところで……」
ずっと考えごとをしていたから、口にするまで気づかなかった……。
「──飯が不味い! なんじゃこれ! 焦げてるし、半生だし、味も変! アン、どうした?!」
「だって、料理なんてやったことないし……」
「ならどうして飯を作りに行った! 正直に言おうよ。出来ないって!」
「また、いやらしいことされそうだし」
……なら、仕方ないな。
「納得した! 正直に言ったら、またアンにいやらしいことしたと認めたよ」
「否定はしない」
「……やっぱり」
しかし、明日からもこれではかなわん。明日からは儂が作るしかないか……。
「──明日からは俺が作る!」
クズが……勇者がそんなことを言う。
「いや、冗談はやめよう。勇者くんにそんなスキルないよね?」
「家が飯屋だったので割とできます」
意外な特技があったな。
まったく魔王倒すのに使えるとは思わないがな。
「そのマトモな技術を使って仕事しようとは思わないのか?」
「絶対イヤだ! 俺は不労所得で生活したい!」
聞くだけムダだった。
そんなマトモな考えがあるなら、遊び人にはならないし、勇者にもならない。
「だと思った。楽な人生のために勇者になるくらいじゃからな。飯屋ならいくらでも需要があり、ゆくゆくは自分の店だって持てたのに」
「勇者以外には興味ない。一攫千金のチャンスがある勇者にしか」
「「クズだわー」」
勇者以外の全員がハモる。
飯は不味いし勇者はクズ。もう最悪じゃな。
「儂は風呂入って寝る。せっかくのアンの手料理じゃから残さず食えよ。残したら明日は飯抜きな」
不味くても作ったことに変わりはない。
きちんと食べてやらねばな……。儂は絶対食わんけど。
「明日、遅れるなよ。連帯責任。この言葉を忘れないように」
クソヤロウのせいで今日は疲れた。
魔王に対抗するために界と勇者を量産するゴッド。
ちっとも残機減らないゴッド。いるだけでぬっころしたくなるゴッド。
ところで……。
「……お風呂は大丈夫だよね?」
料理がこれだったから、いちお確認しないと。熱湯のパターンと冷水のパターンがあるよね。
「そのくらいは出来るわよ!」
「一緒に……」
「──入らない!」
アンが冷たい。これは熱湯のパターンかもしれん。
昨日も断られた。儂の何がダメなの?
女同士でお風呂に入りたいだけなのに……。
「でも、一緒に寝るだけなら……」
な、なんと。昨日は断られたのに!
「なんで。急にどうしたの」
「朝、起きられない。誰かが起こしてくれないと無理」
「茶の間のコタツで寝るのは感心せんし、布団持っていっておけ」
アンは昨夜はコタツで寝てました。
上半身だけ冷やすと風邪ひくのでやめた方がいいよ。
「くれぐれも変なことしないように!」
「しないよ」
「言ったからね! 信用して同じ部屋に寝るんだからね!」
「わかった。お風呂入ったら、まっすぐ部屋に戻って寝てるから」
やったぜ! ……そう思ったんじゃが、本当に部屋に戻ったら眠くてアンの顔を見ることなく寝てました。
元々、なんにもするきはなかったよ? 本当だよ。
だけど、これもゴッドのせい! クソヤロウがいなければ……ぐぬぬぬっ。




