目の前に勇者が現れた!
応募用の作品だったんですが、見事に選考落ちしました。勿体無いので直しながら載せます。
合計5万字くらいです。よろしくお願いします。
♢1♢
儂がこの世界を征服し、気が遠くなるくらいの時が流れた。当時を知る人間は年老いたり、とっくにあの世に行っていたりする。
まあ、まだ生きてるのもいるがな。
儂こと魔王がこの世界を征服したわけだが、魔王にはライバルというのがいる。俗に言う、勇者という人間たちだ。
これは倒しても! 倒しても!! 倒しても!!! 沸いてくる。魔王がいる限り永遠と。
どうやら、この争いに終止符は無いらしい。
今も……。
「──とうとう見つけたぞ、魔王! お前を倒し世界に平和をもたらす! いくぞ、みんな!」
目の前に勇者のパーティが現れた。
メンツは男3に女1。よく見る割合だな。
紅一点がいないと、残念なむさ苦しい集団になる。
男女2人2人も多いが、男女3人1人が王道かなー。
前にな、男1人に女3人というハーレムパーティもいたな。イチャイチャしてる雰囲気だったから、速攻で倒したけどな。
「──よかろう。未だに儂に挑む愚かさに免じて、相手をしよう! こい、勇者共!」
……………………。
「……くそっ、なんて強さだ。これが魔王か。すまないみんな。俺たちの夢はここで潰えてしまう。しかし、いつの日か俺たちを継ぐ者が必ず成し遂げてくれる! それを──」
黙って聞いてるつもりだったが、もう限界だった。
「ちょと待て。お前ら弱すぎるだろ。これまでやってきたことを言ってみろ」
「──まだ、なにも、していない!」
「……よくそんなんで挑んできたな。儂、長く魔王やっていたが初めてだ。これがゆとりか。恐ろしい。本当に怖い」
いろいろおかしかったんだ。コイツら。
勇者が現れるたび、いちいち気にしないんだが今回は無理だ。ツッコミどころが多い。
これは儂のキャパを越えてるかもしれん。
「いくつか質問するから、正直に答えろ。答えなかったり、嘘をついたりすると、この女が恥ずかしい目にあう」
──おっ、いい体してる。
それに、なかなかいい女だ。
「きゃあ! みんな、助けて……」
「人質とは卑怯な! ──なんでしょうか!」
「お前、わざと嘘を言うつもりだな。仲間に手を出すのはやめておけ。別れた時に気まづくなって解散するぞ。見るに耐えんから。パーティ内恋愛は禁止にしろ」
ギクシャクしてる勇者たちが現れてみろ。
気を使わなくちゃならないんだぞ? 戦う相手に。
そのことに触れないように……って、何を言わすんだ!
「まず最初に……どいつが勇者だ。手を上げろ」
わかる。儂もおかしな質問だと思う。だが、聞かなくてはならないんだ。
「俺ですけど?」
真ん中にいて、ずっと喋っていたやつが勇者だった。
良かったーー。
もし違うやつが手を上げたら儂は逃げた。
なんでこんな質問をしたのかは、すぐに分かる。
「勇者登録したのはいつだ?」
「3日前です。中央世界の職業屋さんでやりました」
「どうやって、ここに来た?」
「職業屋さんの、めちゃくちゃ爽やかなお兄さんが、この一番若い魔王がいいよ。と教えてくれて、サービスだと言ってここまで送ってくれました」
如何わしいお店の案内みたいだ。
──あの、クソヤロウ!!
そんなことじゃないかと思った。
このザコたちが、自力でここまで来れるはずがない! 間違いなく道中の敵に一撃でやられてるから!
「お前ら、どっから来た?」
「中央世界からですけど」
「違う! 生まれはどこだと言ってるんだ!」
ちゃんと答えなかったので、女のとある部分を触る。
「あんっ! や、やめてください」
──結構ある! 見えるとおり本物だ!
まあ、セクハラはこのくらいにしてと。
「なんて羨ましい……じゃなかった。やめろ! それ以上、彼女に酷いことをするな!」
「なら、早く質問に答えろ。さもないと……次は直に触る!」
「いやー、なんなのよ?! セクハラは犯罪よ」
「ちょっと黙っとれ」
女はふらりと儂に倒れこむ。
ちょっと眠らせてみた。
儂が術を解かねば、しばらくこのままじゃ……ぐふふふふっ。
あっ、いい匂い。
「やめろーー! ドヴァイ。ドヴァイから来ました! 全員ドヴァイ出身です」
……ドヴァイ? このなりでか?
「勇者。お前、世界に平和をもたらすとかほざいていたが、本当は何をするつもりなんじゃ? 魔王を倒して。名を上げて」
「そ、それは……」
「言わんのか? いいぞ、べつに言わなくても。女を裸にひん剥くだけだからーー」
「眠らせた女にそんな非道を? 流石は魔王。隠居しても、そこまでの外道だとは」
「ごーー」
勇者は言い淀む。
やはり、よからんことを考えてるな。コイツら。
「よん、さん、にい、いち、ぜろ!」
「──はやっ! 脱がすのも、はやっ!」
これ、どうなってんだ?
ウサギちゃんはどう脱がすのか……。
「バニーちゃんはどう脱がすんだ?」
「背中のところから……──違う! 卑怯だぞ魔王!」
「なんだ、見たくないのか? 勇者くん」
「みたいです!」
男たちの視線はバニーちゃんの神秘に集まる。
その結果。全員が大変満足した。
……気づいたか?
いやらしい意味ではなく、勇者たちのことだ。
勇者の仲間の女はバニーちゃん。
男3人も、どーみても遊び人。よくてチンピラ。チャラチャラしとる。
どいつが勇者かなんて分からない。
全員が遊び人のパーティなんてあるか?
それで魔王、倒しに行くのか?
そんなんで勝てると思ってるのか?
なんかの縛りプレイなのか?
おかしいだろ。そんな勇者。