初めまして、異世界
私は源 蘭。普通の女子高校生だ。今日は祝日。一生懸命ゴロゴロするぞ!
「今日は気になってた小説本読むかぁー」
成績は中の下、運動も苦手な私だけど、唯一得意なのがイラスト。美術だけは毎回評価が良い。後、本を読むのも大好きだ。だから今日は小説を読みあさろうと思っていたのだ。
_成績が悪いのなら、その時間に勉強すれば良いじゃんっていうのは重々承知している。だけど楽しすぎてやめられないのだ。なのでだれか私の手を勉強へとあてる解決策を教えて欲しい。
「…私もこんなかに入ったら、変われるかな…」
そんな独り言を呟いた瞬間、突如私が開いた本が光り始めた。え!?何々!?怪奇現象!?とか思っていると、手が本の中に吸い込まれ始めた。
「うぁ?!何これ助けてぇえ!!」
慌ててベッドのシーツを掴んだが、少しの抵抗も虚しく、私は本の中へと全て吸い込まれた。
***
「うぎゃぁぁあああああああ、あ、あれ?」
落ちるかと思いきやそうではなく、変な空間に閉じ込められていた。少し辺りを見渡してみると、360度全て真っ白だ。扉は無く、シャボン玉がいくつかフヨフヨと浮いている。
「どこだろうここ…私夢の中にいるのかな……。」
そう言って、私が一歩前へ進むと、そこに音も無くシュンッと光を帯びた物体が目の前に現れた。
「うわぁたっ!とっ!な、何!?」
私は警戒して後ずさる。すると、頭の中に声が響いてきた。こ、こいつ、直接脳内に!?
『そう警戒するな。私は君に危害を加えるつもりはない。』
…この光っている球みたいなのが喋っているのだろうか。中性的な声で性別は不明だ。だがこんな不可解な空間にいる者?なんだ。だから、この現状を知っているかもしれない。
「な、だ、誰なんですか?それに、ここはどこなんですか?」
『ふむ…詳細は伝えられぬ。…だが、率直に、これだけは伝えておく。君は罰を背負わねばならない。』
「え…?罰?なんで?」
『そういう運命だからだ。…悲惨なことに、それは始まらなければならなかったのだよ。君が生まれたときから…いや、魂が、出来たときから。』
「ちょっと、何を言ってるのかさっぱり…」
『…そうか、まだ気付いていなかったのか。
まだ君は君自身の幻想に捕らわれたままだ。己の力で、その幻想を解いてみよ。そうすれば、君の真実が見えてくるだろう。それではな、健闘を祈る。』
意味が分からない。それにまって、まだ聞きたいことが…
と、口を開こうとした瞬間に息を呑んだ。突然の浮遊感に顔も真顔になる。
「へ?」
そしてそのまま私は真直線に急降下した。
「ぎやぁぁぁぁぁあああ!!!」
悲鳴は恐怖で途中で途切れ、私はガクンと意識を失った。
___それを見守るかのように、先程の光る球体はフヨフヨと安定して漂っていた。
『…全く、あちら側の**は随分と面倒事を…まぁ、それを暇つぶしにはなるかと引き受けた我も我だが…今更ながら心配になってきたぞ。』
そんな独り言を呟き、光る球体はシュンッと姿を消した。
***
「……う、う?」
私はバクバク言っている胸を押さえつつ、ガバッと飛び起きた。
ゆ、夢…だったのか…?
だが、元いた私の部屋ではない。なんだか子供の頃に憧れた、秘密の隠れ家的な部屋にある、触り心地抜群の見馴れないベッドの上にいた。そして、傍に座っていた、おとぎ話に出てきそうな、ローブを羽織った悪面のお婆さんがこちらを見てきた。
…突然なんだろうこの状況。
お互いに目を合わせる。うん。怖い。
「おぉ、ようやく起きたか「うわぁぁぁあーーー!!!!!」
「ぃきゃぁぁあぁあーーー!?!?!…っておい!人の顔をじっと見て更に叫ぶとは失敬な奴じゃな!!」
ご、ごめんなさい。…そして可愛らしい声をしてらっしゃいますね、お婆さん。
一話目閲覧ありがとうございます。