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■RINK_008_セットアップ起動■


——「リアルフィールドの中で

  生きてる!???」——


僕の脳内に、この意味不明のワードがめぐる・・・。

世界のカリスマ、ピエールのカオスな言動に衝撃を受けた!


だが、それと同時にアオイさんの事が気になった———


アオイさんのお姉さん?・・・がリアルフィールド(RF)で生きている。

そのワードは僕以上に衝撃と怒りで動揺しているにちがいない。

ましてや開発者であるRFの生みの親、

ピエールに聞かされたワード。


呆れたアオイさんが跳び下りるんじゃないかと思い、

僕はアオイさんが(たたず)む屋上の(ふち)、アオイさんの両足を見つめた。


「・・・」

微動だにしない・・・。

アオイさんは屋上から見える、

18.25メートル先の地上を見つめている・・・。


その時アオイさんの右足が動いた。

「!!」


高さ3メートル、業務用のエアコンの室外機に身を隠し

その光景を見つめる僕は、

アオイさんの左手を摘もうと右足を踏み出そうとした。


だが、アオイさんの右足は後方に動いた。


——「!?」——


スマホ画面から3DCGのグラフィックで描写されているピエールは

微笑んでいる・・・


アオイさんはフェンスに左手をかけ、


——バァッ——


屋上の地面に向かってフェンスを飛び越える———

僕の視線から、水色のレースのパンツが

スカートと太ももの隙間から見えた。


本来であれば僕は目を背けるが、

そんな事より僕の脳裏によぎったのは。


——「アオイさんが!ピエールの言動を信じた!?」——


——スタッ——

屋上の地面に着地するアオイ・・・。

ジンギは呆然とアオイさんを見つめた・・・。

アオイも同じく呆然としている・・・。


アオイは前に3歩歩く・・・。

腰をかがめ、ゆっくり自分のスマホを地面に置く・・・。


そしてアオイは再び後方に3歩・・・。


スマホから描写されている

等身大のピエールを見つめるアオイ・・・。

等身大のピエールは182センチ71キロ・・・。

アオイは158センチ、ジンギは173センチ・・・。

二人から見ると想像以上にピエールは大きく見えた・・・。


ピエールは・・・ニコッと微笑む。そして甘い声でアオイに語りかける。


「ありがとうアオイ君」

「正直ずっと・・・下を見ながら話すのは首が疲れるから」

「同じ目線で」

アオイは興味のないピエールの言葉を(さえぎ)るように、


「お姉ちゃんはどこ!?」


微笑むピエールはゆっくりと口角が下がり、真顔になる。

そして覚めた目で自分を見つめるアオイの質問に

ピエールは冷静に答える。


「今は言えない」


「!」

アオイは怒りに満ちた鬼の形相で


「ふざけるな!お姉ちゃんはどこだ!?」


僕は思わず体がビクッと反応する。

学校のヒロインであるアオイさんの怒号


——僕は優しく微笑むアオイさんが好きだった——


だがそのアオイさんはいない。

その望んでいないギャップに押しつぶされそうになった僕は、

もう1つの感情も(あふ)れでてきた。


いや・・・もしかしたら、今・・・僕の目の前にいるのが


——「本当のアオイさん!?」——



アオイさんの肩と両腕・・・体が震えている・・・

だがこの震えは恐怖ではなく怒りを抑えきれない

震え・・・


「おっ!」

アオイさんはもう一度怒号を飛ばそうとした時


——バリバリッ!ビビビ——


ピエールの姿がノイズの波紋に包まれる。

——ビビ——


「待て!答えろ!」

アオイさんの怒号が再び屋上を包む。


僕はその光景を呆然と見つめる、

いや主導権はピエールにある。

僕は見つめるしかなかった・・・。

いや、状況は・・・アオイさんも同じだ。


「やはり・・・ロスと東京じゃ10分が限界か・・・時間がないね」

ところどころ音声が飛び始めた。


ノイズがかったピエールの姿は、

優しくもあり、不気味にも捉えるられる

絶妙な笑みを浮かべて、アオイさんを見つめている。

そして・・・


「アオイ君 お姉さんの真相を知りたければ・・・」

「シリコンバレーにおいで!」


——シリコンバレー!——


アメリカ、サンフランシスコ。大手IT企業の総本山。

CN.incの本社がある<聖地>。


RFのプレイヤーはもちろん全員知っている。

だが・・・アメリカ?

僕達高校生が行けるわけがない!


僕はアオイさんを伺うように見つめた・・・。

アオイさんはうつむき・・・屋上の地面を見つめている。

きっと・・・僕と同じ気持ちだ。

アメリカに行くのは難しいと思っている。


ピエールはその空気を察しているかのような口ぶりで


「大丈夫 チケットはこちらで用意したから!」


——!?——


アオイさんはとっさにピエールに視線を送る。


「明日 245便 13時44分成田発」

「君の自宅に届いているよ」


アオイさんは呆然とピエールを見つめ

「私はまだ行くとは」


ピエールはアオイさんが発したワードに被せるように

「行きたいって顔に書いてあるよ」

「・・・」


「お姉さんの真相を知りたいって!」


図星のアオイさんは沈黙した・・・

その沈黙は・・・


—— Yes ——

と答えたのと同じだと・・・僕とピエールは直感した。


しかし、その一部始終を傍観していた僕には

大きな疑問がある。


——RFにいるってどういう事だ?——


CN.incの本社にいるのか?でもそれならなぜアオイさんが必要なんだ?

第一なぜ死んでいる事を偽装する必要が?

ダメだ、疑問しかない・・・。


僕は腹ただしい程、主導権を握るピエールの

含み笑いを見つめるしかできなかった。


——バリバリッ!ビビビビビビッ——

ピエールの3DCGのピクセルが今まで以上に乱れる。


僕はこの光景を見守るしかできない自分にも腹を立てていた・・・

その感情で自然と僕の表情は、

険しさを増してピエールを見つめていた。


「そ%&#っ そろそろ時間#$&%だね」

ピエールの音声途切れとぎれになる。


だが、突如ノイズが消えた。

おそらく一時的にサーバーの容量を3DCGのサーバに移行したに違いない。


そんな事を僕は考えていた・・・その時。

僕は室外機から身を隠すように覗く僕とピエールの目があった気がした。


——「!!?」——


室外機の熱風と、陽が高くなり、僕の(ひたい)には汗が噴き出していた。

だがピエールと目があった瞬間・・・

冷や汗、僕は凍りつく感覚がした。


ピエールはすぐにアオイさんに視線を戻す。


——「なんだ・・・気のせいか」——


なぜか僕は安堵した・・・。

しかし再びピエールが僕を見つめた!。

「・・・」


——「確実に僕を見ている」——

そう思った瞬間


「トロイクルー隊長 user name_ウィンク」


——「!!!!!」——


如月(きさらぎ)ジンギ君・・・盗み聞きはダメだよ!」


僕はそのワードを聴いて、すぐさまアオイさんに視線を送る・・・


そこには・・・

呆然と僕を見つめるアオイさんの姿が目に入った——


—— Now Lording ——


誤字脱字すいません。

時間がある時に修正します。

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