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■︎RINK_003_日常□

◆AM_07:45◇


僕はいつもとかわらない時間に家の玄関を出る。

家の前には車一台が通れるほどの道。

いつもと変わらない

毎朝恒例の専業主婦の井戸端会議。

そして、いつもと変わらない挨拶・・・。

専業主婦3人は、僕に気づきナチュラルな表情で微笑む。


「あら ジンギ君 おはよう」


僕はいつもと変わらない作り笑いを浮かべる


「あっ おはようございます!」

あっ・・・っと今気づいたかのようなフリをする。

これもいつもと変わらない・・・。


主婦達の足元には、退屈そうに寝そべる柴犬がチラっとこちらを見るが、

再び目を閉じて眠る・・・。

犬にとってもこの光景は日常なのだろう。


そして僕はいつもと変わらない通学路を進む・・・。

徒歩23分、近くも遠くもない学校へと続く通学時間。


その通学路をいつもと同じ歩幅、

いつもと同じタイミングで変わる3つの青信号。

いつもと同じ二十代のサラリーマンとOL、他の学校の高校生や小学生が並ぶバス停。


みんなかったるそうな表情でスマホを触り、朝から強い直射日光が

バスを待つ乗客を照らす。

毎回思う事だが・・・


-バス停の屋根って小さくないか?-


と心の中で復唱し、僕はその光景に視線を合わす事なく感覚で見つめる。

僕のいつもの日常だ・・・。


そして僕は同じ歩幅で右・・・左と歩みを進める。


ちなみに僕が通う<新桜花高等学校>は、

偏差値58。中の上、または上の下、程度の高校を選んで

2年前に一般入試で入学した。


平均は50だが、僕は3点高い53。

さすがに50ぴったしは普通すぎるし、50以下は嫌なので、53を基準に設定した。

当たり障りのない数字だ・・・。


学力はそこそこの進学校、だが部活動は盛んだ。

特に陸上は国体に出場し、都大会1位の100Mの同級生もいて、

たまにメディアに取り上げられる程度には強い。


そういえば、1度僕はミスを犯しそうになった・・・。

体育の授業で100M走1位の同級生に危なく勝ちそうになりかけた。

だが83M付近で僕の前方に誰もいない事に気づき、

僕はスピードを落とした・・・。


思ったより・・・同級生は遅かった。


8人中3位の僕はわざと息を切らし

「最後バテちゃってさ〜」と嘘をついた。

その言葉を聞いた国体の同級生は、勝ち誇った顔で、


「でも 途中までいい勝負だったぜ!」と僕に言った・・・


めでたい奴だと僕は思った。


普通なら、勉学もスポーツもその道を極めた方が

リア充アピールもできるし、

地位も名誉もお金も誰もが憧れる人生を送れる可能性が高い。


だが僕にとって・・・


-いつもと変わらない日常が一番幸せな事-


確かに・・・歴史学と人類学的で見ると・・・。

人間は挑戦する事で発展し勝者となり、

安定を求める者が敗者となり勝者に従う。


しかし僕にとっては後者は敗者ではない。

今の時代では安定思考こそが勝者だ!。


一生懸命頑張っても努力は裏切る。例え努力が実って成功を収めても

その成功を応援しようとする人間、その期待感が面倒な心理的影響を与え、

人間関係に災いが生まれる・・・。


そして、成功した人間のアラを探そうとするアンチ人間も存在する。


-僕はアンチ人間のストレス発散の材料にされるはごめんだ-


面倒なのは同世代の人間関係だけではない、

その10代の成功にたかる金欲(きんよく)の大人達だ。


例えば、甲子園のスター、陸上界のスター、フィギュア界のスターなどの

スポーツマネー。ちなみにメディアやマスコミも含む。


学業では全国模試上位、飛び級での大学進学、海外の大学への留学。

大手企業や大学の研究院、政治家、官僚など

組織の重役達は優秀な10代の確保に必死だ。


その大人達の欲と、その欲に踊らされている10代。

その10代の周りにいる家族や親戚の人間。

その全ての人間が僕にとっては・・・どちらも滑稽(こっけい)で仕方ない。


目立たず普通の会社員になって、普通に結婚していい父親を演じて、

平均寿命である80代でこの世を去る。

これが僕が導き出した・・・今の時代のニーズにあった


「人生の勝ち組だ!」


しかし・・・

・・・・・・普通に生きるのは意外と難しい。


本当に難しい・・・その大きな要因は・・・


「恋だ」


体育の授業で危うく国体の奴に勝ちそうになってしまったのも

全ては隣のグラウンドで走り高跳びの授業をしていた、

彼女が原因だ・・・


僕は走る前に彼女と目が合ってしまった・・・。


後で知った事だが。

彼女は僕を見ていたのではなくて、

学校のスターである国体のアイツを見ていた。


普通に考えればわかる事だが、

あの時に目が合ってしまった僕は、

我を見失った・・・。



◆AM_08:08◇


ちょうど23分・・・。


いつもと変わらず、僕の視線の右手に・・・学校の校門が見えてきた。

そして その前方から3人の女子が視線に入る。


3人組の真ん中には、黒のロングヘアーの女子が見える。


身長は158センチ、体重は42キロ。

視力は右目が1.2、左目は1.0。

胸囲きょういは84センチ・・・

身体検査で得た情報なので間違いない。


僕が校門前でこんな事を考えている事も知らない彼女は

いつもと変わらない・・・友達と話す優しい笑顔。

そして、その頬には・・・


-えくぼ-


く・・・たまらなく可愛い・・・。


正直に言うおう・・・

僕がいつもと変わらず

AM8:08に校門前に着くように歩みを進めるのは


全ては・・・「神崎 アオイ」・・・さん


あなたをじっと見つめていても不自然じゃない、


-この位置関係のためだ!-


この時間は僕にとって、

大切な生き甲斐だ!。


——— Now Loading ———


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