◼︎ RINK_002_トリセツ_1 ◼︎
-1年間の夏休み・・・-
聞こえはいいが生き甲斐と修羅場が混合する1年間。
その原因は僕の生きがいの1つ・・・
<リアルフィールド>だ。
全世界ユーザー10億人を超える戦場オンラインゲーム。
リリースされて10年以上経つが、
年2回の大型アップデートが必ず行われ、
都度、時代ニーズを掴み常に最先端を行くゲームコンテンツ。
このリアルフィールドを開発し世界に拡大させた人物。
デベロッパー:CN.inc<<シーエヌ ドットインク>のCEOである。
- ピエール・エンリケ -
フランス人らしい色白で金と白のアッシュカラーのロングヘアー。
パリコレに出てもおかしくない端正な顔立ちとスタイル。
フォーブスの世界総資産個人ランキングでは、
ビルゲイツ、ジェフベゾフなど名高い事業家に次ぐ世界4位。
企業資産を合わせると世界1位だ。
まさに僕が目指す普通とは真逆のセレブ的リア充。
ビジュアル、お金だけではなく、人格的にも完璧だ。
莫大な資産は様々な機関に寄付金や投資を行い、
中でも<最先端医療>には年間 10億ドル以上。
日本円で1000億以上投資をしている。
最先端医療をメインにしたロースクールの設立議案も
カルフォルニア州上院議員から州議会に提出し、
政治的影響力も強い人物だ。
人類の成功者・・・そのピエール・エンリケが今から10年前・・・。
19歳で開発したのが<リアルフィールド>。
当時は当たり障りのないPCオンランインゲームだった。
だが、いち早くVR<バーチャルリアリティ>に着手したのがピエールだった。
ピエールは世界中の投資家、企業から資金を調達し、
たった2年でソフトやスコープなど各端末の開発に成功した。
そして・・・
そのソフトと端末をユーザーに無料提供した。
この画期的な企画はみるみる内にSNSに拡散され、
わずか1年でUU<ユニークユーザー>は1億に達した。
だが、ここ5年で飛躍したソシャゲ(スマホゲーム)仕様とは違い、
メアドやユーザーIDのみで誰でも安易にDLできるものではない。
ユーザー登録の為には、
欧米諸国では社会保障番号。
その他の国ではパスポートや住民票、免許証、保険証など
本人確認の書類が必須。
そしてその後、審査が行われる。その審査を行うのが・・・
元CIA、FBI、KGB、MI6、公安などの
機密期間出身のエージェントが身辺調査を行う。
この情報は公にはされていないが、CN.incは否定もしていない。
その個人情報の宝庫のCN.incのサーバは
NSA<アメリカ国家安全保障局>でもアクセスできない程
セキュリティは完璧。
ブラック、ホワイト、どちらのハッカーも
一度もサーバにはアクセスできていない。
なぜピエールはそこまでするのか?
本垢、ニセ垢など安易なソシャゲと違い、
各ユーザーに対して「自分は厳しい審査を通過した!」という自信と、
<IDへの愛情と価値>を植え付ける施策がピエールの狙いだった。
-キャラクター自身に自分自身を重ねあわせる-
リアルフィールドは戦場ゲームだ。
架空のファンタジーの世界ではなく、
舞台はリアルに再現された地球。
自社衛生を打ち上げたCN.incにとって、何ら問題なく開発は成功した。
そして肝心なゲーム内プロットは。
JF (justice forces):正義軍
WCF(world conquest forces):世界征服軍
この二つの軍組織による、地球争奪戦だ。
とてもシンプルなプロットだ・・・。
1時間ごとに双方のテリトリーマップが
各プレイヤー端末に送信され全体マップ上に更新される。
JFがブルー、WCFはレッド。
そして戦争中エリアは黄色に点滅する。
そして地球全体がブルーかレッド、
どちらか一色になるとリアルフィールドは・・・。
運営停止、
リアルフィールドの世界は終末を迎える。
この重要なプロットが
プレイヤーの感情と欲を揺さぶる・・・
-それは、裏切りだ-
どちらかが劣勢になると仲間を裏切り、敵対する軍に入隊する。
簡単に言うと・・・スパイ。
約3年前・・・リアルフィールド史上もっとも巨大な裏切りが決行された。
あと一歩までJF軍はコンプリート、
つまり「完全なる占領」までWCF軍を追い詰めた。
だがJF軍の巨大クルーの1つ・・・
「カラス」が裏切りを決行し、
WCF軍に寝返った。
寝返った理由は簡単だ。
「ゲームを終わらせたくない」
ただそれだけだ!
JF軍一筋の僕にとって、ムカついた感情が溢れ出てきた。
だけど・・・当時中学3年生だった僕は
もう一つの感情も芽生えた・・・。
「面白い」と。
裏切りと信頼・・・対比している二つの思想が日々繰り広げられる・・・
リアルフィールド。
この仮想空間、リアルフィールドで繰り広げられるそれぞれの思想が・・・。
「僕の思想と感情を虜にした」。
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