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クリムゾンLED  作者: 葛之葉
2章 ファトゥナート動乱
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ガリオンとバラクーダ

 内政官、外交官、武官の人事を終えたエルピス国は関係各所がそれぞれ々に動き出していた。


 ティナ達武官の立場を与えられた武将達は、内政官を通じて新兵の募集の布告から着手する。


「‥‥‥一般人からの募集って、そんなに集まるんですかねエルピスで」


 ティナが呟つぶやいた。


「こう言うのばかりはね‥‥‥命をかける仕事に喜んで飛び付く人なんて少ないものよ? 特に今まで戦争なんて体験した事が無い人達にはね」


 ジュディがエルピスの各所に貼られた募集の紙を見ながらこぼした。


「他の希望者の可能性は、ファトゥナート大陸に存在する傭兵団達が新興国で名を上げる為に来るか、ならず者や個人で強い人達、近隣国で食い扶持ぶちが無いあぶれ者とかだと思うわよ」


 ジュディの言葉に、余り期待をしない方が良いのかなと思案するティナであった。


 ーー時は過ぎ、布告を出して二週間、一次募集の締め切りとなった。


 当初、三万人が来ればいと考えられていた募兵には、実に五万人を越える人数が集まっていた。


「予想外ね‥‥‥確かに相場の給金の1.5倍を提示してはみたけど」


 ロゼッタが、エルピスの郊外に仮設で建てた練兵施設れんぺいしせつの窓から、居並ぶ五万人を見てつぶやく。


「まあ、この中から逃げずにモノになる兵が三万も居たら御の字じゃねえの?」


 ロゼッタの横で同じ様に見ていたアルマが言った。


「相変わらず手厳しいわねアルマ、それでロゼッタ、どうするの?」

 ジュディがロゼッタに聞いた。


「これから、マリィに演説をして貰う事になっているわ、こう言うの得意だったからあの人」


 そう言って三人が窓へと目を向けると、マリィが兵達の前に作られた壇上だんじょうへと上がっていた。


 マリィが十分程何事かを叫び、演説が終了した。

 一瞬の間が空いた。


 瞬間、五万人の人達が地をとどろかすかの様な大号声がひびき渡る。


「ほら、ね?」


 ロゼッタが二人に向けて片目をつむり、笑顔で言った。


ーーーーー


 ロードグレイ帝国北西部、反乱分子最大の拠点があるこの地で、帝国による掃討作戦が行われていたいた。


「ハッハーッ!兵共よ、突き崩せっ!」


 巨大な体躯たいくの馬にまたがる巨体の大男が、帝国兵に向けて叫ぶ。


「第二隊!左側面より敵軍を抜けて拠点の城門をじ開けろ!ニニギス!貴様はこのまま此処ここで指揮を続けておけ!」


 ニニギスと呼ばれた美丈夫の男が、大男に聞き返す。


「ガリオン様、如何いかがなさるお積もりですか?」


 ガリオンと呼ばれた大男が笑いながら答える。


「俺様は、このままあの雑魚ざこの群れに突撃して皆殺しにしてくる! いいな!」


 言うが早いか、ガリオンは敵軍の真っ只中へと馬を疾駆させた。


 普通であれば何としてもガリオンをいさめるであろう状況であるが、しかしニニギスは慌てる事もなく後ろに控える兵に告げる。


「ガリオン様が狩りに行かれた、貴様等は逃げ出す雑魚ざこを仕留めながら着いてゆけ」


 千騎程がガリオンに向けて走り出した。


「部隊を分ける、半数はこのまま私と共に戦線を押していけ、残りは右翼に回り、城門へと向かった者共の助力を行う、掛かれ!」


 先に進み、敵を食い散らかすガリオンを見ながらニニギスは笑う。


「やはりあの方は凄まじい‥‥‥者共!ガリオン様におくれをとるな! 走りながら陣形を移すぞ、鋒矢ほうしだ!」


 十二使徒、ガリオン=スウェインによる北西部最大の反乱分子の掃討そうとうは、この一時間後拠点の陥落かんらくと無数の反乱分子達の死者を出して終結された。


ーーーーー


 アルシーナの東部に位置する拠点に、一人の女が酒を飲みながらくすぶっていた。


 そんな女の元に、鎧を着こんだ兵がやってきた。


「‥‥‥それで、相手は何て言ってきたんだい?」


 酒に酔い据すわった目で兵に聞いた。


「はっ!左大臣ガルネ卿より、事の成功のおりには空いている十二使徒の席を用意している、と」


 その言葉に酒を飲んでいた女、バラクーダはくちびるゆがめて笑う。


「そうかい、帝国はそこまでの条件を出してくれたかい‥‥‥」


 クックッと笑い、兵に顔を向けて返答する。


「了解した、時が来たおりには必ず、と伝えてきな」


 兵は、その言葉に敬礼をすると部屋を出ていく。


「アルシーナのボンクラ共‥‥‥このアタシを虚仮こけにしやがって‥‥‥」


 バラクーダが、持っていた木のジョッキを握り粉々に粉砕する。

 手に付いた酒を、舌であやしく舐めとりながら笑う。


「ベイソリュートもノートルダムも、あの白騎士団達も‥‥‥思い知らせてやるよ」


 おもむろに立ち上がり、腰の鉄鞭てつべんを取り出す。


「アーッハッハァッ!」


 鉄鞭が立て掛けてあった鉄の全身鎧に絡み付く。

 そのまま引き戻すと、全身鎧は鋭利な刃物で切られたかの様にバラバラになった。


「この!バラクーダを!舐めるんじゃないよっ!」


 拠点の一室に、バラクーダの狂気の笑い声が響いていた。

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