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死ぬ事って悪い事?

人が死ぬことは悪いことだろうか?

絶対に悪いことだという人が大半だろう。

その人達に聞いてみる。どうして?

そしたら大概こう答える。

その人の可能性が潰えてしまうから。

あなたが死んだら悲しむ人がいるから。

世界には生きたくても生きられない人がいるから。

あぁ、もう十分。そもそも、可能性なんて死ぬ前から無いかもしれない。更に言えば他人が悲しもうが知ったこっちゃない。生きたくても生きられない人?そんな物は運が悪かったで片付ける。

その理論でいくと生きている俺たちは運が良いってことになるが、そうでもない。

生きていくのは大変だ。何よりも金がかかる。子供一人育てきるのに三千万かかるらしい。つまりは俺たちは生まれた瞬間に三千万近くの借金を負うことが確定しているのだ。

産んだのは親の責任だから気にしなくて良い?

そんな事は無いだろう。育ててもらった恩なんてよく言うが。気にするな、なんて本当に思っている聖人の様な親がいったい何人いるだろうか。結局はその三千万によって二十年間近く親に拘束される羽目になる。

そしてその二十年が終わると今度は社会に拘束される。仕事を楽しんでいる人が何人いるだろうか。やりたい事をやれている人がどれくらいいるのだろう。多分少ない。しかも、僕はその少ない人々になれるとは思えない。

まぁ、そんな訳で現在高校二年生の俺、池石撓いけごくしなるは楽な死に方を絶賛考案中だ。

絶賛といっても誰にされるわけでもなく自分でしているだけだ。そこら辺は気にしないでほしい。

とにもかくにも楽な死に方といえば、安楽死だ。安くて楽しいくて死ねるとは最高だ。

まるでどこかの牛丼売ってるお店の様だが、これは却下だ。却下というか無理だ。安楽死出来る薬なんて売ってないし、売っていたとしたら皆飲んでしまって大変になっているだろう。それだけ死にたい人が多いという事でもあるんだろうが。

ここはやはり、飛び降りなんてどうだろうか。

いや、やっぱり却下だ。痛いのはまだ良いとしても、自体の状態が悪いというのはなんか嫌だ。そこら辺の感性は未だ正常である。

じゃあ首吊りなんてどうかな。

もちろん却下だ。クソを垂らして死ぬなんて死んでもごめんだ。決してダジャレではないぞ。

死ぬ事すら出来ないとは何とも悲しい人間だ。まぁ、死ぬ覚悟ができる様な奴なら死にたいなんて考えもしないだろうがな。

とにかく散歩でもしながら死に方を考えるか。

「そこの君! 死にたがっているな!」

え、何か後ろからすごい声が聞こえる。

「おい、君! 聞いているのか!?」

こういう時、人は大体自分じゃありませんようにと願う。

しかし、

「そこの制服の君!」

大体は自分で合っている。

声に呼び止められ振り向くとそこには、端正な顔立ちの低身長金髪ツインテールが立っていたのではなく。

端正な顔立ちの僕と同じ制服を着た青年が怒りの眼差しをこちらに向けていた。端正なだけまだ良かったとしようではないか。

「なんでしょうか?」

びくつきながら応える。

「君と同じ学校の天井生人てんじょうゆきとだ!」

いや、誰だよ。同じ学校までは理解できたけどその先は全く意味不明だよ。

「君、死にたがっているね?」

こいつがどうしてそんな事を知っているんだ。というか、明らかに危ない奴だ。帰ろう。

「何を言っているんですか? 失礼します」

「待ちたまえ!」

もう怖くなってきた、警察呼ぼうかな。

「僕にはわかるんだよ。死にたがっている人っていうのが。生まれつきの能力でね」

勝手に説明しだした。というか、何て迷惑なうえに面倒くさい能力なんだ!

それから三十分ほど天井さんの能力の説明が続いた。オーラが見えるとか、以前この能力で救った人には泣いてお礼を言われたとか、その他もろもろだが。

どうでもいいよ! 腕時計の説明書の方がよっぽど興味あるよ!

「ということで、今日から君の事を全力でサポートするぞ!」

いや一番いらないよ! 全力で邪魔だよ!

「君の死にたい理由はなんだい? いじめかい? それとも失恋?」

「無いです」

「え?」

「死にたい理由、無いです」

「嘘だろ!? その顔で死にたい理由が無いなんて」

失礼だなこいつ! もう顔不細工って言っちゃえよ! 自分でもわかってるよ!

「ほんとに無いんで、サポートとかいらないです」

「いや! ちょっと待ってほしい! それでも僕は君を救いたいんだ!」

「ほんといらないんで、失礼します」

すると、天井が急に僕の前に回り込み土下座を始めた。これは最悪なパターンだ。

案の定周りがざわつき始めた。

「僕に君を救わせてください!」

もう何の告白だよ。いや、何の宣誓だよ。こっちまで痛い目で見られるからやめろよ!

「わかった! わかりましたって! とりあえず頭を上げてください!」

「お、そうだな」

何だこいつ。

場所を喫茶店に移して話すことにした。

「僕は二年の天井だ! よろしく!」

「どうも、僕も二年の池石撓いけごくしなるです」

「池石君か! 地獄みたいな名前だな!」

気にしていること言うなよ。

「まぁ、という事で今日からガンガンサポートしていくから死にたくなったらいつでも言ってくれ!」

「あ、今死にたくなりました」

「なんだって!? 一体どうしてだ!?」

「いや、なんとなく」

「それじゃわかんないよおおおおおお!!!」

ほんとうるさいなこいつ。


つづく


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