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ナイター 卓球  作者: チキータ
3/5

サーブ3 開幕

近年、日本1と称される公園の桜もすっかりピンクから、ういういしい緑に変化を遂げていた。多くの人を魅了し、感動を与えてくれるピンクの花ビラはもちろん好きだが、盛大な祭りの後に役目を終えた花びらのあとに色づく静けさのグリーンの葉も何とも言えない良さがあった。僕はその公園の桜並木を通りながら、試合会場の体育館に向かった。会場となる体育館は公園のすぐ側にあった。最近は別の場所に新しくスポーツセンターが建てられていたが、この体育館は昔から、市民がスポーツをする場所として役割りを担ってきた。ナイター卓球もここで毎回行われている。体育館に到着すると玄関にはすでに多くの人が見えた。結構な人が、スポーツウェアに身を包み、肩から バックを担いでいる。自分と比べ、経験者オーラに満ち溢れていた。「まずいなあ。どうしよう」不安が胸を包み、1人うろうろと挙動不信になっていると「リュウタ、何してるの、行くわよ」と声が聞こえた。振り返ると朝日さんと相田さんが立っていた。「今日は開会式があるから、先に荷物置くわよ」朝日さんが階段を昇り、2階の観覧席に向かった。「リュウタさん、今日は宜しくお願いします。」「こちらこそ、宜しくお願いします。」相田さんが、僕に声を掛けてくれた後、朝日さんに続いた。僕も2人の後を追った。階段を昇ると、ピンポン玉を打ち合うリズミカルな音が無数に響きわたっていた。そして観客席から、会場を見ると、ブルーの卓球台が規則正しく会場ぎっしりと並んでいた。縦に4列、横に10台、計40台の卓球台でナイター卓球に参加する選手が集まりウォーミングアップを行っている。「リュウタ、相田さん。練習に行くから準備して」朝日さんに言われて、直ぐに準備を始めた。あらかじめ、ジャージの下に短パンとTシャツを着て来たので、ジャージを脱いで、ラケットを手に持った。「それじゃあ、練習に行くわよ」朝日さんを先頭に僕と相田さんは後をついて、会場に降りた。朝日さんが会場の扉を開け、僕達が中に入ると、そこは人の熱気で溢れていた。「すいません。半面良いですか?」朝日さんが、一台の卓球台で練習していた男性グループに声を掛けて卓球台の半面を貸してもらった。急いでボールを取り出して卓球台の前に立つと、普段はあまり感じないが、卓球台の表面のブルーが輝いて見えた。「それじゃあ行きますよ。」僕は恐る恐るネットの向こうにいる相田さんにボールを送った。卓球台でツーバウンドしたボールを相田さんが打ちやすいボールで返してくれた。そのボールをまたネットの向こうの相田さんに返した。何回かラリーを繰り返していると「2人とも、もっとラケット振って。遠慮しない」と背後から朝日さんの声が聞こえた。朝日さんの指示に従い、もう少しだけ強くラケットを振って見た。ボールはさっきよりも勢いを増して、相田さんに向かった。そのボールを相田さんが打ち返してくる。更に打ち返そうとすると、空振りし、ボールはラケットをすり抜けていった。「そんな感じ、思いきって」朝日さんは笑顔で言った。「それでは、練習を止めて、皆さんお集まり下さい。」会場の中に、開会式を知らせるアナウンスが流れた。ボールを打ち合っていた選手が皆手を止めて、各チーム毎に指定の場所に整列した。左右見渡すと、数えきれない人が立っていた。老若男女問わず、沢山の人が色様々なウェアに身を包んで立っていた。ウェアに特別な規制はなく、運動しやすい格好であれば良いとの事であったが、短パンTシャツの自分が少し恥ずかしくなった。

「これから第79回、H市ナイター卓球大会、開会式を始めます。大会長挨拶」背広をきた偉い人がマイクの前に進み挨拶を行った。「今回で、ナイター卓球も79回目を迎えました。今大会も110チーム、400人以上の選手の皆さんが、参加をしてくれます。皆さん、日頃の練習の成果を存分に発揮し、正々堂々闘って下さい。以上」大会長の挨拶が終わり、ルールの説明、注意事項などの話しがあって、開会式が終了となった。「それでは、皆さん、競技に入って下さい。」整列していた選手達が一斉に散らばり、各部で闘うコートの場所に散っていった。僕達の闘う6部は会場の真ん中付近の卓球台の列で行なわれる。場所を移動し、卓球台の側に陣取った。「それじゃあ、試合のオーダーを決めるわね。」朝日さんが、オーダー用紙をバックから取り出した。「今日は、武藤先生と藤波さんが、仕事で来れないから、私達で闘うことになるわよ。試合の順番だけど、どうしようか?ジャンケンにしようか。」朝日さんの提案に僕と相田さんは頷いた。「じゃあ、勝った人が好きな順番を選ぼう。」こういう時のジャンケン勝負に僕は滅法弱い。「ジャンケンぽーん」パーを出した僕はやっぱり負けた。選択権を数秒で失った。相田さんが、朝日さんに勝って、2番手を選んだ。朝日さんは、3番手、結果僕が開幕戦の1番手となり、オープニングゲームを闘うことになった。今日がデビュー戦の貧弱な僕が、栄誉ある1番手をゲッツしてしまった。緊張と不安の波が更に押し寄せて来るのを全身で感じていた。

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