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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ミニ小説2 NO EXIT

作者: Yuri+

やめろ・・・・・・・・




こっちへこい!!

  




・・・なせ!・・・・・・はなせ!・・・・・・・





お前は・・・・・した・・・・・お前は・・・し・・・んだ・・・





うるさい・・・・・・・


























「・・・・・・・・ぁああ!!」




男は目覚めた。


どうやらさっきまで深く眠ってたらしく、頭に汗をかいてる。

嫌な夢。何者かに捕まる夢だろうか、それはわからない。

男は辺りを見渡した。



「う・・・・どこ・・・だ・・・?」


男はこの場所を知らなかった。 そう。 


ここの部屋は男のものではなかったのだ。



その部屋は、床がコンクリートでできていて、壁も同じ。

そして何故か上を向くと空が見える。



「どこだ? ここは・・・・・。」


男は立ち上がった。空を疑視した。動いている。



「なんだ? 俺はどうしてこの部屋に? うっ。」

と男はそう言い、痛みがした頭に手を近づけた。

触ってみると、ネトリとした感触が手に伝わってきた。


見てみると血だった。不思議なことに、痛みをもう感じなくなっていた。


「なんで血が? 俺は誰かに襲われたのか? 監禁されてるのか?」

男はなんでここにいるのか、どうやって来たのか考えた。

でも思い出せなかった。必死に考えてみたが、駄目だった。



部屋にあるのは、さっきまで男が寝てたベットが中央にある。

そしてその周りには、血の跡と、誰のかも分からないTシャツ一枚。 

それだけしかなかった。



「なんなんだこの部屋は・・・。ただベットとシャツ一枚だけかよ。

 なにもできねえじゃねえかよ。」

男は独り言を言えば言うほど惨めになった。

考えてもなにも分からない。 思い出せない。

 あげくの果てにベットとシャツだけの部屋である。


「はあ・・。」男はため息を吐いた。



空はずっと同じ情景で動いている。

見てるだけで吐き気がした。あの空に何があるのか。

男は分からなかった。


「ここでなにすりゃいいんだ? だれかいねえのか?」と男は

そう言い、自分の頭に両手を置いた。










あれからどれだけ経ったのだろうか。


時間が進んでない感じを、男は体に感じていた。

壁を蹴ってみた。いっぱい蹴った。 音が反響した。


でもなにも起きなかった。


「ああくそ・・・・。ここに来る前は・・・・俺はどこにいたんだ? 

なんで思い出せねえんだ? もっとなんか思い出せるはずだろ? 

くそお!」

男は壁に頭をぶつけた。 



その時、ぶつけたコンクリートの所だけ、破片が少し落ちた。


「ん? なんだ?」男は不思議に思った。




男は掘ってみた。何故かそこだけもろかった。 

男は少し喜び掘るスピードを早めた。







脱出できる。







男の頭の脳裏に、そんな言葉が浮かんだ。 


そんなことを思っていると、男の手に激痛が走った。

手を見ると、手のひらの真中に、まっすぐと切れた跡があった。


「! ああっいてえ! クソ! 」と男が手を離し、

掘った所を見てみると、穴の中心に尖った、

小さい平べったい突起物が見えた。


その周りを掘ってみた。突起物がだんだん大きくなっていく。


「なんだこれは?」


もっと掘り進めた。次は突起物がもっと平べったくなっていた。



「・・・・・ナイフ?」

出てきたのは、中ぐらいの大きさのナイフだった。

持つ所に、血のようなものが乾ききって、黒くなった跡が所々にある。



男は怖くなった。「ああ・・・・ああああああ!!」と男は叫びながら

ナイフを投げた。




見覚えあるナイフだった。




なんだ?  なんなんだ?  

なんで壁の中にナイフが?理解できない。 

しかもこれ・・・・俺が料理する時使ってたものじゃねえか・・・




男はその場から離れた。向こうの方の壁にもたれかかった。


「俺・・もしかして・・・・人を・・・・。」


そう言った瞬間だった。




ドン!!






「!? うわあああああああ!?」男は叫び、そこから離れた。




男の前に落ちてきたのは、惨殺された死体だった。女だった。





あの空からどうゆうふうに落ちてきたかは、男には理解ができなかった。


「はあはあはあ・・・ははは・・・なんの冗談だよ? 一体なんなんだよ!

! 俺が何したって言うんだ!!! あああああああああ!!」

と男は叫び、コンクリートの周りを這いずりまわった。





さっきの死体を見て、男は普通ではいられなくなった。

俺の周りになにが起きてる? 何故死体が降ってくる? 

男は早くこの部屋を出たくなった。





男はその時、瞬間的にベットに走り、布団のなかにもぐった。

怯えながら震えた。

「これは夢だ・・・これは夢なんだ・・・・夢だ・・・夢だ・・・夢だ!」





男は夢だとしか考えなかった。

そうすれば目を覚ますと思ったのだ。

これは全部夢なんだ。

今見てるのも布団にもぐった感触もナイフを触った感触も夢なんだ。

男はそう考え、恐怖から逃げるようにした。


「間違いない・・だれかに監視されてるに違いない・・・!

これはなにかの実験かもしれない!

精神の限界を調べてるのかもしれない・・・!!

 今ごろ見てる奴は笑って結果を綺麗に書いてるかもしれない・・!!

くそ!! 夢なら目覚めてくれぇ・・お願いだ・・目覚めろォおお!! 」


男は布団の中で叫んだ。



次の瞬間だった。


ベットごと、上に上がる感覚がした。


「!? 今度はなんだよ!」と布団から出た。


男はベットの中心に座りながら、

上に上がってくベットの柵を掴んでいた。


「脱出できるのか?」と男は言い、顔を上に上げた。


だんだん空が近づいてくるのがわかった。手を伸ばした。


「ああ・・空だ!! 外だ!! 脱出できるぞ!! 

やった!後もうちょいだ。」



そう言いながら、手を近づいてくる空に向け続けた。










脱出できる・・・・・・・・これで悪夢から・・・・・・








そう思った瞬間だった。






空に限界に近づいた瞬間、手が空に当たった。平べったかった。



なんと天井は巨大なスクリーンだった。

動いていたのは空の映像だった。



「・・・・・・・・・・え?」

男は思考が止まった。


後70cmという所で初めて天井だと認識した男は、愕然とした。


脱出することは愚か、潰されてしまう。


男は一斉に鳥肌が立った。


「止めろ!!  近づくな!!」


男はそう言ったが、一方的にベットの上昇は止まらなかった。





潰される。


男はそう思った。


後10cm。


男は覚悟した。


ここで死ぬんだと。




「くそおおおお!!! もうだめだ!

 ああああああああああああああ!!」





ガゴン!!


天井とベットはぶつかった。間からは血が出ていた。




男は視界が暗くなった。痛みは感じなかった。 

どこか飛んでるような、浮遊してるような感覚が続いた。























・・・・・・・いな・・・・さいな・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・おい・・・・おい・・・・・・・・・・おい・・・・おい







・・・・・・おい!!


「ぁあああああああああ!!!」

男は目覚めた。


「お前、うるさいぞ! 他の囚人は寝てるから、

あんまり大きい声出すんじゃない!!」

男は牢屋にいた。

声をする方を見ると、少し太った看守が柵の方から男を見ていた。


「あの・・・俺なんでここにいるんですか?」


「何をとぼけたこと言ってるんだ!

 お前は捕まったんだぞ!妻殺しの罪でな!!」






「妻を殺した・・・・こ・・・ろ・・・・・・し・・・・・た?」






そう言った瞬間、男の脳裏にいきなり情景が広がった。




妻と料理してる時の情景だった。



幸せそうな顔してる妻が料理を楽しく作っていた。


妻がこっちを見た。



男はやっと思い出した。自分は妻を殺したのだ。




まさか・・・・空から落ちてきたものって・・・・・・妻?



次の情景に移った。



妻と作ったおいしそうな料理を食べている情景だ。


電話が鳴っている。居間のとなりにある廊下からだ。


妻が電話に出た。


何やら笑顔で話してる。



そうだ。妻は浮気してたんだっけ・・・・・・



妻が戻ってきた。


笑顔で「食べよ」と言ってくる。


誰と話してた。


ううん。仕事の話。


嘘つけ!!



浮気知ってたんだよな・・・・何回もしてるとこ見てて・・・

口論になって・・・・・・・



え?


お前・・・また他の男と喋ってたんだろ!! 

またか? お前何回浮気してんだ!? いい加減に止めろ!!


違う!! もう浮気は止めたの!!


嘘つけ! あの時もそう言ってごまかしたじゃねえか! 

今回もそうなんだろ。


妻がテーブルに置いてあったワインの瓶を持った。


ああそうよ!! 

大体あなたが私のこと愛さないから、つまらないから浮気したのよ!!

 あなたが愛せば浮気なんかしないわ!


確かに俺は仕事で忙しい時もあったよ! 

でもお前のことは愛してた! 

仕事場でも家帰ったら料理一緒に作ろうって考えてた! 

いつもは忙しくて帰れなかっただけだ!


でもあなたは帰ってきても、寝るだけ。

私は愛が欲しかったのよ。 

あなたの愛が。 あなたはそれを分かっていないの! 


じゃあ今度そうしよう! もし遅く帰ってきたらそうするから・・・・


ホントに? でもずっと私のことほったらかしだったじゃない!

 ずっと・・・・仕事のことばっかよ!!


だからこれからはって言ったじゃん。


ふざけないで!! そんなこと言ってまた忘れるわ!! 

あなただったら!!


お前って奴はなんでいつも自識過剰すんだよ!!

 そういうとこ嫌いなんだよ!!


ゴン!!


!?


妻がワインの瓶をテーブルにぶつけた。


危ねえな! 


じゃあ嫌いなら、終わりにしてやるわ!


え? おい止め・・・・・


うあああああああああ!!!!  グチャ!


ワイン瓶が、男の頭の後ろに当たった。


ああああああああ!!! なにすんだこの野郎!!


成敗したのよ。 

あなたが私の言ってることがどうやら分からないようだから!!


妻がそのまま玄関に向かう。


男の中で、殺意が芽生えた。


台所に情景が切り替わった。


また切り替わった。


こんどは玄関の所だ。手には、ナイフを持っていた。


なによ? まだ何か言うことあるの?


・・・・・・・・・・死ね。


え? 


死ねっつってんだよおおおおおおお!!


グサッ



この時殺しちゃったんだな・・・俺・・・だから刑務所にいるのか。



ああっ。なん・・・・・で・・・・・・・・


妻の腹から血がゆったりと出てきた。



その後は・・・・・・何回も刺したんだよな・・・。

くそ・・・・・・なんでやっちまったんだ・・・・・くそ・・・・くそぉ・・・・。








「とにかく静かにするようにな!! 

・・・おい。分かったか! 127番! おい!」


男は看守の声で我に返った。


「うるせえな! 分かったよ!」


「ったく。 おかしな奴だ。」と看守はいい、こっちに向かって唾を吐いた。




「はあ・・・今までのは夢だったのか・・・・・・。

なんだよ・・・・・どっちの世界も地獄じゃねえかよ・・・・・。」

頭の後ろには血の跡が固まって残っていた。


男は天井を見上げて、ため息を吐いた。








これはとある囚人の男が体験した話である。

夢でも、現実でも脱出できない男である。


あんな罪を犯さなければ男はこんな夢を見なかったのかもしれない。

でもこれは運命だったのかもしれない。


出口はない。 犯した罪は影となってまとわりつく。 離れない。 

現実にも出口はない。 


何故なら男は無期懲役だから。 永遠に出口はないのだ。



罪は一生消えることはない。



男は上を向いたまま、静かに笑いながら泣いた。

「脱出は無理か・・・・はは・・・・。」






牢屋に闇の光が入ってきた。



もうすぐ夜が深くなろうとしていた。






+++++++++++++++++++++++++++++

題名 「NO EXIT」


written by PLUS+PLUS



Presented by Y+-DESIGN

2011 8,17 Wednesday

ミニ小説第一弾と比べると作品の雰囲気が全然違います。



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