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第二話 勇者召喚の儀式

 おはようございます!蜜柑ねこです!

 やっと2話目です。箱根の疲れを乗り越え、バイトの合間をぬい、完成しました。


 ヒロインが増えすぎそうな予感でいっぱいです。3、4人いればいいかと思っていたのですが……。


 今回から、ウキウキ異世界ライフが始まっていきます。どうぞよろしくお願いします!

 身体が浮遊感に包みこまれている。死ぬという感覚はこういうものなのかもしれない。あの黒い球体に巻き込まれた瞬間、死んだのだろう。一種の心地よさとともに、天に昇っているかのようだ。


 しかし、この感覚はあまりにリアルだ。俺の異能は|感覚操作≪センセーション≫。感覚について、よく知っているつもりだ。死ぬ感覚について知っている訳ではないのだが、この浮遊感には覚えがある。

 恐る恐る目を開けると、そこに広がっているのは黒い空間などではなく、空だった。状況を理解するのに数秒かかったが、浮遊感の正体は落下によるものだった。


「うわぁぁぁぁ!死ぬ死ぬ死ぬッ!」


 情けない声を出すしか、この状況でできることはない。俺の異能は、空に浮くこともダメージをなくすこともできない。真下に緩衝材の代わりになるような森はないかと見てみるが、残念ながら草原だった。どうやら、人の集団がいるようだが助けてくれる訳ではないのだろう。こちらに気づいていないようだ。


 助からないと諦めたところで、ひとつの疑問に至る。見渡すかぎり、見慣れている光景がない。鉄による建造物がひとつとしてないのだ。巨大な城壁に囲まれた国、その中心にそびえたつ城。それらが草原のあちらこちらにある。そして、すべてが石造りだった。


「これが、創り変えた世界ってやつか」


 駕神教は神を凌駕してなにがしたかったんだろうか。というか、そんなことはどうでもいいので助けてほしい。どうしようもない死が目の前に迫ってくる。あの集団が助けてくれないだろうか。もはや祈ることしかできない。駕神教が神だというのだから、助かることは絶望的かもしれない。


「頼むから誰か助けてくれッ!」


「頼まれた」


 その声が聞こえた瞬間、フワッと抱きかかえられる。そして、そのまま落ちはじめた。二人になったことにより、さらに加速し始める。


「えええええッ!助けてくれんじゃないのッ!?」


「黙っていろ。舌を噛むぞ」


 ズドンッ!と激しい音とともに衝撃がくる。どうやら着地に成功したらしい。俺を助けてくれた人は怪我さえない様子だった。


「ありがとう、助かった」


「なに、頼まれたからな。私は傭兵だ。金さえもらえればなんでもする」


 そう言った人は、女の子だった。ぴょんぴょんと動くねこみみに赤毛を編み込んだ髪。白を基調としたロングコートに赤いミニスカート、控えめな胸がわずかに主張している。底が厚めのブーツに黒いニーソ、絶対領域にはナイフが装備されていた。


「どうした?別に獣人類は珍しくないだろう?」


「そうなのか?そういう世界だってことなのか」


 新しい種族を生み出すという意味で、神を凌駕したことのアピールなんだろうか。しかし、このチョイスにセンスを感じる。少しだけ感謝しよう。許してやる気はさらさらないのだが。


「頭大丈夫か?どこか打ったりしたのか?」


「大丈夫だ。至って正常だ」


「それならいいんだが。では、お金をいただこうか。救出費は500円でどうだ」


 円って、変なところでサボっているな。日本語が通じていたり、変化したのは案外見た目だけなのかもしれない。

 非常用に制服にいれておいた野口さんを使おう。使えるといいんだけど。そして、服の内ポケットに手をいれようとしたところで気づく。


「制服じゃない!?」


「どうかしたか?」


「少し状況を整理させて」


 今の俺の格好は、めんどいと書かれたセンスのない文字ティーにパーカー、ジーンズという村人Aみたいな格好だった。当然、内ポケットなどなく、野口さんもいなかった。


「お金ないのか?家に取りに行くのもいいぞ」


「えーと、状況を説明させていただいてもよろしいでしょうか?」


 今、俺が置かれている状況を懇切丁寧に説明する。気づいたらここにいたことや、この前の世界についてなど、できるかぎり語った。

 終止、眉を寄せていてカワイイ顔が台無しだった。その疑っている顔も好きだけどさ。


「つまり、異世界から来ていて、ここがどこなのかもわからず、お金もないと?」


「左様でございます。ごめんなさい」


 この沈黙が怖い。殴り飛ばされるかもしれない。あの高度から、人間二人を抱えて着地できる身体能力だ。相当なものなのだろう。


「おもしろいな!」


「はい?」


「異世界からくるなんて物語のようだ!そういえば、今日勇者を召喚する儀式をするという話を聞いた。お前のことかもしれないな!王からお金をもらえるかもしれない!その金で報酬を払えばいい!」


 とりあえず、殴られなくてよかった。

 真下に見えた集団は、儀式をする連中だったのか。着地したところにはいなかった。きっと、幅跳びの要領で跳んで来たのだろう。

 しかし、勇者となるとなにかと戦わなければいけないのだろうか。だが、お金の問題もある。ここで逃げたら殺される!今か後か言われれば、後がいい。希望は捨てないッ!


「そうだな。とりあえず、王様に会いにいこうか。俺は宮野ユウだ、よろしく」


「決まりだな!私はエナだ。エナ・アミール。よろしく、ユウ!しかし、王に謁見、その後豪勢な食事。勇者を助けた報酬。楽しみだ!」


 これは、貰えなかった時が怖い。




 希望はハイハール王国というところにあるらしい。多種多様な種族が入り混じり、商業によって栄えた王国だそうだ。代々、ハイハール一族によって統治されており、9代目になるらしい。

 空は茜色になり暗くなってきているが、道を歩いていて活気に溢れているのがよくわかる。商店や屋台から元気な声が聞こえてきている。


「今日はもう遅いな。王に会うのは明日にしよう。私の家に泊まっていけ、ユウ」



「それでいいのか?なんか悪いな」


「別に構わん。お金ないんだろう?」


「確かにな。では、お言葉に甘えて」


「人の好意は素直に受け取っておくのがいいぞ。もうすぐ着くからな。少し狭いが我慢してくれ。傭兵はあまり儲からなくてな」


 しかし、趣のある街並みというか、ファンタジーゲームをモデルにしているかのようだな。カラー印刷のポスターが貼ってあったりと、文明のちぐはぐさを感じさせる。

 こじんまりとしてはいるが、自分好みの宿があると思いつつ通り過ぎようとしたところで声をかけられる。


「おかえりお兄ちゃん。あれ?まだどこかに行くの?」


 宿の前に、シオンに似たエプロン姿の従業員らしき人がいた。

 俺のことではないのだろうな。他にも人はいる。シオンに似ているのは気になるが、スルーして行こう。


「ちょっとお兄ちゃん?無視しないでよ?」


 裾を掴まれた。逃げられない。どうやら、俺のことで間違いないようだ。


「人違いじゃないですか?」


「なにトボけてるの?そんなダサい服着てるのお兄ちゃんくらいだよ?」


 やはりダサいか。もともと着てた服なんだけどな。でも、気にいってきたんだけど。


「本当にどうしたの?はっ!空から落下して、記憶喪失になっちゃったの!?私だよ!ユウ・フェルリルの妹、シオン・フェルリルだよ!この宿が私たちの家だよ!宿を作るとき、あんなにこだわってたでしょ!両親が亡くなった時、二人で頑張っていこうって約束したのに!それもこれも全部忘れちゃったの!?」


 必死の形相でたたみかけてくる。ここで泣かすのは本意ではない。一旦宿に入って話をするか。勇者召喚の儀式によって、召喚されたとばかり思っていたのだが、違うのだろうか。


「落ち着いて。ひとまず、宿に入って話をしよう。エナも一緒にきてくれ」


 宿にはいり、受付カウンターの奥にある部屋に行く。どうやら、ここからが家らしい。ローテーブルに座り、この状況について説明する。


「つまり、お兄ちゃんはお兄ちゃんであって、お兄ちゃんではないってこと?」


「よくわかんないけど、そう。俺の仮説では、ユウ・フェルリルの記憶を、宮野ユウの記憶で上書きしてしまったのではないかということ」


 ユウ・フェルリルは、宮野ユウの生まれ変わりという前提の仮説だ。

 ユウ・フェルリルは、魔法で空を飛ぶ練習をしていたらしい。きっと、今日も練習していたのだろう。

 地上では、勇者を召喚するための儀式を行っていたはず。ユウ・フェルリルが儀式の真上を通過した際、儀式がフェルリルを依代として認識したのだろう。そこで、繋がりを持っている俺が召喚という形で、身体を乗っ取ったのかもしれない。

 なぜ、俺が勇者として認識されたかはわからないが、現神と同じように異能を持っているからかもしれない。


「わかんないけどわかった。エナさん、お兄ちゃんを助けていただいてありがとうございました。よかったら、泊まっていってください。空いている部屋がありますので」


「ならば泊まっていくとするか。いろいろと聞きたいこともあるしな」


 俺は申し訳ない気持ちになってきたので、シオンの頭をヨシヨシと撫でる。どこからどう見てもシオンにしか見えない。勇者召喚の儀式をすれば、あの如月紫苑になるのだろうか。そうすると、この世界で生きてきたシオン・フェルリルは消える。なにやら、複雑な気持ちになってきた。勇者として戦っていくならば、彼女がいると心強いのだが。


「やっぱ、お兄ちゃんはお兄ちゃんだね」


「そうか?でも、やっぱ申し訳ないな」


「いいんだよ。よくはないけど。お兄ちゃんはお兄ちゃんであってお兄ちゃんだからね」


「なにそれ、意味わかんないわ」


「妹の名言です!妹たるもの、兄を全力で受け止め、支えるべし!」


 悲しんでいるであろうシオンに、なにもしてあげられない自分が悔しかった。逆に励まされているなんて、なんという失態だ!

 少しでも悲しみが和らぐといいなと、頭を撫でた。





 翌朝、シオンに起こされ朝飯をいただく。妹に起こされる朝はこんなにいいものだったのか。清々しい気分です。


「お兄ちゃんたち、今日は王城に行ってくるんでしょ?ちゃんとした格好をしないとね」


「確かに。エナはどんな格好で行くんだ?」


「このままだが?」


「じゃ、俺も普通でいいや」


「お兄ちゃん、めんどくさがりだもんね。仕方ないか。あ、ダサい文字ティーだけは着て行っちゃだめだよ」


 ダメなんだ。王様の反応をみてみたかったのに。ま、フードがついてるジャケットさえあれば最高。フードが好きなんだよな。そんなことはどうでもいいか。


 エナと共に王城の正門に着く。シオンは宿で仕事をしている。要件は門番に話せばいいのだろうか。鎧と長槍を持った、いかにもな人に話しかけようとして、留まる。


「なぁ、エナ」


「なんだ?」


「どうやって話しかけたらいいと思う?」


「うん?確かに難しいな。私が勇者です、王様に会わせてください、とかか?」


 うーん、と精一杯考えて出たセリフが、


「えーと、門番さん、異世界から来た勇者はいかがですか?」


だった。



 タイトルにもなっている、いわば決め台詞的なのが登場しました。たびたび、登場する予定です!


 さて、ヒロインが二人になりましたね。クールねこみみに後輩妹。この取り合わせはどうかと思います。

 エナなんかはイラストにしたらギャップが際立ってきそうですね。シオンは普段とバトルシーンのギャップをだせたらなと。


 次回、後輩妹はどうなるのか!?とバトルが始まってしまう!?を書きたいと思います。ついに、主人公が戦いますね。強いか弱いかはお楽しみに!


 感想などお待ちしております!ドシドシ投稿してくださいね!

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