一日目【夕刻】
「えぇ! ……今って夏休みじゃないの?!」
不意にそんな声が茜色に染まる公園に響く。
砂場で遊んでいた子供達二人がこっちを向くけどすぐに興味を失くしたように手元の砂の山を作る遊びに戻った。
今居る公園は昼に行ったショッピングモール近くの公園とは違う所であそこは大きな広場とベンチが点在するだけでのんびりしたい人や仲間達とサッカーみたいなことをする人達向けで、今居る公園は砂場やシーソーやブランコ含め他にも色々遊具が設置してあって近くに幼稚園でもあるのか遊具で遊ぶ子供とそれを見守りながら駄弁る奥様方の姿が見えてたりして、今は子供が二人とその保護者らしき女の人が一人居る。
「あぁもうちょっと静かに……人居るんだから。」
当人は「そんなバカな…」とか「夏休み制度廃止とか…」やら呟いている。
「それにそれ間違ってるから。 ちゃんと今は夏休みだよ。」
「えっ……?」
話しの始まりは、と言うと私がつい「あぁ折角の八月なのになぁ~、すぐに勉強三昧に戻らないといけないとか、面倒だなぁ。」なんて呟いてしまったところから。
彼が不思議そうな顔で首を傾げたものだから「今日がちょうど三連休の一日目なんだけど、この連休が終わったらもうずっと学校で勉強しないとなんだよ……。」と愚痴ったらこうずいぶんたいそうに驚かれた。
「学校、って言っても通常授業があるわけじゃなくてなんて言うんだろ…塾みたいな感じの講習? みたいなもの。 もちろん基本参加自由。」
ウチの学校は勉強をする環境、としては色々整っていて恵まれているんだと思う。
ただ、好き好んで勉強に励みたいわけがあるわけがなく……とりわけ私は。
「ウチの両親もどうせ長期休みと云ったって家でゴロゴロするしかしないんだから行ってこい、ってさ……。」
「はえ~。」
座っているブランコを軽く揺らしながら前を見る。
夕陽が低い位置にあって少し眩しい。
「……将来、何がしたいのか自分でも判らないんだ。」
そんなことを話し始めた。
会ったばかりの人に。
会ったばかりだと云うのに突然町を案内する、と云う名目で一日一緒に町を歩いて周った男の子相手に。
いきなり、自分がずっと悩んでいることを打ち明けようとしていた。
「と言うか私自身が何にも興味っていうものを持てないんだよね。 なんか、どうでもいい。」
彼も軽くブランコを揺らしながら、黙って私の話しを聞いている。
「勉強するのは将来のためだ、とか言われるけどピンとこない、って言うかへ~そう、的な。みんな大学でココ行きたい、とかこういうことしたい、とかたまに言ってたりするけどそういうのもなくてさ……そんなんで勉強に身が入るわけないでしょ?」
そう言って軽く笑う。
少し自虐的に嗤ってしまったと思った。
キーコ、キーコ、キーコ、キーコ。
公園の入口から一人の女の人が来る。
その姿を見つけて子供の一人が砂山を捨ててそちらに走って行く。
その子のお母さんを待っていたんだろう。
じゃあね~。 またね~ 。 ありがとうございました。 いえいえ。 そう言って子供達とお母さん達は別れそれぞれ自分の家に向かって行った。
しばらく経った、と思う。
突然彼は立ち上がった。
「さぁもう遅いし今日か帰ろ。 明日はどうしようか? 僕はまだまだ足りないよ。」
「……ふふ、全く、貴重な三連休だって云うのに。」
「ありがとう。」
そう満面の笑みで返される。
悩みは話すだけでも言い、と誰かが言っていた。
でもこんなこと話せる相手なんて居なくて、でもようやく話せて確かに少し気が楽になった気がした。
気のせいかもしれないけれど、それでもそう思えた。
むしろあまり知らない人だからこそ話せたのかもしれないな。
「う~ん、お金有ったらあのゲームセンターで遊びたかったんだけどなぁ。」
「ん~、ショッピングモールは今日で周っちゃった感があるなぁ。 明日はどうしようね?」
「あれは? 昼間に行った公園の奥。 パッと見森みたいになってたけど。」
「森…は大袈裟だよ。 せいぜい奥に行けば林ってぐらいかな。」
「じゃあそこにしよ。」
「セミがうるさそうだなぁ……。 でもそこ行って何するの。」
「ははっ。 あぁ…セミ捕りしたいな、虫捕り網ある?」
「えっ? セミ捕り?」
「うん。 なんかやってみたいな。」
「その言い方やったことがないみたいね。」
「実はやったことないかな~。」
「……えっ。」
小さい頃はよくやったものだ。
それこそこの時期ならほぼ毎日やっていたと言っても過言じゃなかったと思う。
「……まぁ、久々にそういうのも良いかな? 懐かしいなぁ。」
なんやかんやで楽しみかもしれない。
セミ捕り。
夏の風物詩。
そういうものなんだろう。
小説の即興簡易プロット・ロイドが目白押しです。
こうやって溜まっていって……忘れていくのかもしれない。
どう手をつけたもうか悩みどころですね。
(どうも後書き欄の使い方を間違っているように思えて仕方がない今日この頃。)




