一日目【昼頃】
小題をそれぞれ変更しました。
ショッピングモールに向かって歩き出す。
「あ~、ちょっと待って。 もう少し川の周辺歩かない?」
……………。
早速の予定変更だった。
ホントなんで休日にこんなヤツと付き合っているんだろう。
まぁ元々何か予定があったわけじゃないけど……。
もう好きにしてちょうだい。
私って意外に面倒見の良い性格なのかな~、と思ってみたり。
川、と言ってもこれは都心辺りを流れる大きな川から分流させて作った人工の川で、三ヵ岡用水と呼ばれている。
都心を流れる川の方が水質改善運動で何かしらやってたりやられてたりしているみたいでこの川もそこまで汚いというわけではない。
鯉を釣って食べよう、とは思いつかないけど。
まぁ余談。
少し川の周辺を歩いて、「こういう水の流れる音とか好きなんだよねぇ。」なんて要らない…すぐ忘れてしまいそうなことを教えてもらったり少し水切りで遊んでから彼が満足したところでショッピングモールに向かい始める。
おかげで着いた時には昼頃で、とりわけ人が賑わいでいる時間だった。
「それじゃ良い時間だしどこかお店でも入って何か食べる?」
私がそう提案すると彼は
「あ~、いや、実はお金持ってないんだよ。」
あはは、と照れたような困ったような表情で自分の頭を掻いた。
「え、じゃあご飯とかどうするの?」
無一文での旅なんてすごく大変そう。
そもそも私と同い年くらいで世界が見たいから、と放浪の旅とはまた大変そうな道を選んだものだ。
本当に自由奔放としてるなぁ、なんて思う。
「う~ん、いや、食べなくてもまぁ大丈夫だし。 でも江見さんが何か食べたいっていうんならそれでもいいよ。」
つまり私が何か食べるんなら自分はその横でそれを眺めてる、と言っているのか。
ばかじゃないのかな……。
「……じゃあちょっとハズれた所に公園あるからそこに行こ。」
「…え?」
「そこならクレープ屋さんの屋台があるだろうから。 その程度なら奢ってあげられるし、私もそこまでお腹が空いてるわけじゃないから。」
「え、いいの? ホントに?」
今ウソ、と言ったらばか正直に肩を落とすだろうな、なんて判るぐらい素直に嬉しそうに確認してくる。
「それじゃそうと決まったら行こ。」
それはボックスカーと言うのかな、まぁ後ろの空間が箱っぽく四角だからそれで良いのかもしれない。 その四角部分を改造して店みたいに取り外し可能らしきカウンターを付けてクレープ作れる設備やら取り付けてお昼頃から16時頃までこの公園に止まってクレープを売っていて、幸い今日も例外じゃなかった。
「イチゴとバナナ一つずつください。」
一個120円、計240円。
前に友達と遊園地に遊びに行った時にそこで売られてたクレープは一個400いくらとかで売られていてビックリした。
私達にとってはこっちが普通だったのでこっちが良心的なのかあっちがボッタクリなのかは判別がつかなかったけれどその場は「まぁ遊園地だしね。」という結論に達した。
……そういう場所で売られるモノは大抵平均より高くなる。
そういうもの。
「はい、バナナ。」
「おぉ、ありがとう! …ゴメンね。」
嬉しそうに謝ってくる。
「いいよ。 元々昼ご飯代からだし。」
「?」
今日は休みだと云うのに今日もまたテーブルの上に書き置きと共に置いてあったお昼ご飯代。
それを使っただけのこと。
母親は今日から休みだと云うことを覚えていないのかもしれない。
「……さ、まぁそんなことは気にしないであそこのベンチにでも座って食べよ。」
イチゴやらバナナやらと生クリームをクレープ生地で包んでチョコを掛けただけの簡単なクレープ。
でもそれは小腹が空いた時にはちょうどいい大きさで学校帰りにたまに買ったりしてる子は私含めて割と居る。
価格もお手頃。
必然的に恋人達の溜まり場になる。
とりわけだった娯楽施設がないから尚更で今も周りにはお弁当を食べてる男女の姿がちらほらと……私たちもその中に混じってたりするわけだけど。
「あぁ…セミの鳴き声がうるさいねぇ~!」
そんな声が聞こえ隣を向いてみればクレープを食べ終わった彼は伸びをしていた。
「セミの鳴き声を聞いてると夏だなぁ、って気がしてくる除け。ね。」
「聞こえなくても夏だけどね。」
この公園の周囲には木が乱立していて場所によっては軽い森みたいになっている。
そのため人間以外の生き物もーーとりわけ虫がーー割と見かけセミの声も複数の種類が重なりあって余計大きく聞こえる。
「それとどうでもいいけどセミって鳴いてるわけじゃないからね。」
そう考えると鳴き声という表現はおかしいと思う。
「ん~、じゃあ羽ばたき声?」
「声であることは変わらないんだ。」
「ん~、声だなぁ。 これは声。」
彼は空を、あるいは木々のほうを見上げそう言いながら笑う。
マイペースと云うことは裏を返せば自分の考え方がしっかりしている、ということなのかもしれない。
「さ~て、それじゃショッピングモールとやらに行こうか。 楽しみだよ。」
「ウィンドウショッピングだけどね。」
「……?」
ウィンドウショッピングっていうのは要はただ見るだけ、と簡単な説明をすれば「あぁ」と納得していた。
「しかし面白い言い方をするね。」
「別に私固有じゃないわよ。」
「そうは思ってないよ。」
見るたびに思うけど彼の笑い方はなんと表現するのが的確なのかな。
柔和。 やんわり。 やわらか。 優しさの混じった。 見守るような。 でもソレは見方を少し変えると……儚げで、弱々しい感じで。
いや、まぁそんなことはどうでもいいか。
あ、……はぁ。
「それより何か見たいものあるの? 私は特にないけど……。」
「ない。」
無駄に胸を張られる。
「……………。」
「…いや、ほら、どうせ見るだけのつもりなんだし適当なトコ入ってみよう。」
「それでいいなら……いいんだけどね。」
むしろそっちのほうが彼の生き方には合っているのか。
そして……そうこうもしないうちに彼はいずこかへ消え去った………。
「あぁレイくんこんなところに居た!」
結局彼はショッピングモールの入り口近くにある100円ショップに居た。
なんですぐに見つけられたかというと彼は100円ショップ窓際のアクセサリー売り場に居たから。
「え、あぁ…ゴメンね。 つい目についっちゃってさ。」
「何? ミサンガ?」
「うん。」
それは子供向けの大小さまざまなおもちゃの指輪だったりガラス製のネックレスと一緒に並んで置いてある簡単な模様のミサンガだった。
「江見さんは何の色が好き?」
「ん~…白、かな。 私らしいから。」
「江見さんらしい? ふ~ん。」
模様は単調なモノばかりだけれど色は割と豊富にそろっていた。
赤、青、黄、緑、ピンク、白、黒、紫、灰。
「あれ、こういう時は訊き返さないの?」
「……え?」
彼はちょっとニヤニヤした感じの笑みを浮かべていた。
「いや? こういう時は訊かれたら訊き返すのがセオリーかなぁ、って思ってたからさ。」
「う~ん。……すぐ忘れそうだからいいわ。 そういうのって訊いたって無駄でしょ。」
「うわ~ちょっとヒドイな傷つくな~。」
全く傷ついたという表情は見せずにそんなことをのたまう。
そして
「僕は青が好きだよ。 空や海のような、綺麗な蒼が好きかな。」
そう勝手に言ってきた。
「……そう。 まぁなるべき覚えてるようにするよ。」
ふふっ。
……そんな感じで笑う彼はいつもの柔和で優しくて少し儚げで弱々しい笑顔だった。
今回少し長くなりました。
止めどころがわかr……ちょっと今回は長めに書いてみようかなぁ~、と。
区切りが良いと感じたのでとりあえずココで切らせていただきます。




