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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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復讐は赤い糸で結ばれている

掲載日:2026/07/03

 ザリガニがうじゃうじゃ入ったバケツを、

 頭にかぶらせられ、

 その上から殴られる。

 顔とバケツの間に、

 何匹ものザリガニがいて。

 殴られるたび、

 それが刺さる。

 目の下、頬、首元に。

 赤色が好きなんだろ、

 そう言って同級生は去っていく。

 大丈夫、私は強い子。

 母から教えられたこと。

 



 児童保護施設から、

 祖父の家に引っ越してきた。

 祖父はとても優しかった。

 けれど料理はできなかった。 

 引越してきた、その日の晩御飯の献立。

 白ご飯、

 味噌を溶かしただけのお味噌汁。

 ふかし芋。

 茹でた菜葉の上にハム。

「おじいちゃん、明日から私が料理作るから」

「そうかい、

 何か欲しいものがあれば言いなさい。

 なんでも買ってあげる」


 学校初日。

 転校生、

 という田舎の小学校において、

 珍しい現象のおかげか、

 私は一躍、時の人。

 これほど、ちやほやされることは初めてで、

 私はどうすればいいか、分からなかった。

 からかってくる男子もいたけれど、

 同級生より、一回り大きかった私が、

 立ち上がるだけで、

 そそくさと去っていった。

 翌日、

 無視が始まった。

 あの家の子、ということらしい。

 祖父はどうやら、

 嫌われているらしい。

 けれど、私は、

 前の学校と同じ感じであることに、

 一種安堵感を感じていた。

 何事もなく授業を受け、

 何事もなく帰宅する。

 祖父からお金をもらって。

 近所の商店に行き。

 晩御飯の材料を買う。

 店員さんが目を合わしてくれない。

 家に帰って、晩御飯を作り。

 祖父が喜び。

 食器を洗い。

 宿題をして、

 布団に入る。

 幸せってこんな感じ? 眠りにつく。

 翌日、

 上履きの中に土が入っていた、

 ほんのわずかで、

 私は気づかなかった。

 いじめが始まっていた。

 自分の机と椅子の上、

 座ると分かる、

 なでると分かる。

 少しだけ、土がかかっている。

 机に教科書を入れるときも、

 小指に嫌な感触がある。

 ザラザラと。

 私は気づく。

 誰も、目を合わしてくれないのに、

 みんながこちらを見ていることに。


 それほど、辛くはなかった。

 前の学校でもあったことだし。

 家に帰れば、祖父がいて、

 お味噌汁を私にかけることなく、

 美味しい美味しいと喜んでくれた。

 お菓子も買ってくれたし、

 テレビも見て良かったし、

 熱湯を浴びせられることなく、

 一緒にお風呂に入った。




 何日も続く、いじめのせいか、

 その日はちょっと、体調が悪かった。

 ただ、学校には毎日行きなさいと、

 母から言われていたし、

 大したことないと、登校した。

 ちょっとお腹が痛いかもしれない、

 少しうずくまる様に授業を受けていた。

 次の休み時間、

 その時には当たり前になっていた。

 スカートをめくられる。

 いつもはそれだけで終わるはずだった。

「こいつ漏らしてるぞ」

 そう、囃し立てられる。

 そんなはずないと、私は見た。

 私の下着は茶色くなっていた。

 生理が始まった。


 保健室の先生から、説明を受けた。

 私がお母さんに? 母のように?

 叩いた後に、

「お前は強い子だから」と、

 慰めてくれる、

 優しい母に?

 嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 私の頭はそれいっぱいで。

 この時、もう少し真面目に先生の話を、

 聞いておくべきだった。


 翌日の学校、

「今日は漏らしていないか」

 とスカートをめくられる。

 私は下着を見る。

 血が漏れている。

 赤。

「こいつ、」

 同級生が何かを言う前に、

「赤色が好きだから履いてるの」

 自分でも、驚くくらいの大きな声で、

 自分でも、驚くくらい、

 くだらない言い訳を叫んだ。


 机に赤色のチョーク、

 ノートに赤色の鉛筆。

 制服は真っ赤。

 赤色のランドセルはもっと赤く。

 私の目も赤く。

 この日からいじめは、明らかに変わった。

 彼らは言う。

「赤色が好きなんだろ」




 赤く腫らした目のまま、

 赤く上気した頬のまま、

 家に帰り、祖父に抱きつく。

 泣いてはダメと、母に言われていたけれど、

 思いっきり、涙を流した。

 何日か、学校に行かず、

 お家で、炊事洗濯家事掃除。

 けれど、ナプキンがなくなったので、

 学校に、いや、

 保健室に行くことにした。

 お昼前、この時間なら、授業中。

「先生、あの、」

「ああ、あれから、大丈夫だった?」

「えと、あの、はい。

 あの、なくなってしまったので、」

「ああ、じゃあこれ、

 君、お母さんには伝えたの?」

「いえ、あの、うちには、お母さんがいなくて、

 おじいちゃんと二人で暮らしてます」

「あれ、そうなの? 面倒だねー、なるほど、

 じゃあね、ちょっと待って、」

 先生は机に向かって、何かを書いている。

「このプリントを、おじいちゃんに渡して、ここに書いてあるものを、

 買ってもらうように言ってください。分かりましたか?」

「はい」

 教員用トイレによって、

 授業には出ず、

 家に帰った。

 その日の晩御飯の時に、

 おじいちゃんに言った。

「ねえ、ここに書いてあるものが欲しいんだけど、」

「なになに、なるほど、おお、そうかそうか、

 うーん、お金はあげるから、自分で買いに行けるかい?」

「多分」

「じゃあこれ、いくらになるか分からないから、多めにあげておくから、

 余ったお金は、何か好きなものを買いなさい」

 その晩、祖父に襲われた。

 もう、女なんだろと。


 私には、記憶がないから、

 私じゃないのかもしれない。

 祖父の胸には、

 深々と包丁が刺さっていた。

 どうしよう、どうしよう、

 お母さん、どうしよう。

 私は祖父が助かることでなく、

 私は私が助かることを考えていた。

 ならば、

 きっと、

 これは、

 

 私のやったことだ。


 お金、

 お母さんが言っていた。

 お金があれば、どうにかなるって。

 お金、

 お母さんありがとう。

 祖父の机の引き出し、

 鍵付きの引き出しに、

 お金があったはず。

 鍵は本棚の、

 一番下の本の下に。

 あった。

 鍵を開ける。

 引き出しを引く。

 お札の束と、

 銀行通帳、

 そして、一冊のノート。

 祖父は、

 嫌われていた。

 ノートには、

 復讐の、

 人を殺す方法が、

 びっしりと、書かれていた。

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