第#話:「終わる世界」
枯れ果て、深く罅割れた大地。
重く黒ずんだ黄金の雲が空を覆い、空気を裂くような風の音が、辺りに響き渡っていた。
弱々しく燃える小さな炎だけが、この地を薄く照らしている。
風が激しく吹き荒れて、その小さな光すら、消し去ろうとしていた。
死んだ世界。
もし、この光景を見た者がいるならば、そう言うのだろう。
生き物の気配など、微塵も感じられない筈だった。
だが、そんなこの地に、たった三つ。
微かな明かりに照らされる、三つの人の姿があった。
一人目は、低く盛り上がった岩に、身を預けるように倒れていた。
長剣が握られた手はだらりと下がり、長い黒髪は土で汚れていた。
片方の腕は無く、胸元には抉られたような傷穴がある。
胸の傷や口元からは、血が溢れた痕が見て取れる。
薄く空いた目は、色が抜け落ちたかのように真っ白だった。
死んでいる。
それは、誰の目にも明らかだった。
二人目は、黒髪の女性から少し離れた所で息絶えていた。
焦茶色の髪をした少年。
顔は横を向いていて、こちらからは見えない。
藍色のローブは破れ、その裂け目から流れ出た血が、乾いた大地を赤く濡らしていた。
そして、三人目は。
その少年の亡骸の前で、静かに立っていた。
他の二人と、年齢は同じくらいだろうか。
オリーブ色の髪が光に照らされ、風を受けて揺れていた。
だが、表情は読み取れない。
小さく何かを呟いているが、何と言っているのかも、分からない。
空に垂れ込める雲が、少女の真上へと吸い寄せられるようにして動いていた。
少女は言葉を止め、ゆっくりと左手を掲げる。
その指には、小さな宝石がついた指輪が嵌まっていた。
少女は、真上へ掲げた左手の指輪を、静かに見つめる。
髪から覗く金色の瞳が、淡い煌めきを宿した。
風がさらに勢いを増す中。
少女が、もう一度何かを呟き、目を閉じると。
指輪に嵌まった宝石が、金色に輝いた。
弱々しく揺れていた炎は、いつの間にか、音もなく消えていた。
溢れ出した光は、瞬く間に天地を染め上げていく。
黄金の光が、人影も、風も、大地も、空も。
その全てを飲み込んで。
――この世界は、終わりを迎えた。
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