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戦士の燈
戦場に、短い静寂が訪れていた。
ネクトリアは、震える指先で
白銀のレイピアを見つめる。
白銀の切っ先が、
かすかに震えている。
胸の奥で――
とくん。
確かな鼓動。
それが――
少女が初めて“戦場に立った”証だった。
そして同時に。
「……わたし……」
かすれた声が、こぼれる。
「……戦える……?」
その瞳に、
まだ小さく、だが確かに――
戦士の光が灯り始めていた。
「――ええ」
静かに、アピスが告げる。
「その切っ先は、すでに敵へ届いていますわ。ネクトリア」
断定。
迷いのない、王族の声音。
ネクトリアの肩が、わずかに震えた。
その背後で――
ヴェスピナが、ぐっと拳を握る。
「……っ」
一瞬だけ黙り込み。
次の瞬間。
にかっ、と大きく笑った。
「当たり前だろ」
誇らしげに。
心底嬉しそうに。
「誰の妹だと思ってんだよ」
その一言で――
ネクトリアの握るレイピアの震えが、
ほんの少しだけ、収まった。




