希望
「お姉さま!!」
ネクトリアが必死にアピスを抱き起こす。
ぐったりとした身体は、まだ温かい。
だが――
ドォン――!!
遠くで、暴走したヴェスピナの巨大な槍が大地を薙ぎ払う。
(このままじゃ……)
喉が震える。
(このままじゃ、みんな……)
涙が一滴、アピスの頬に落ちた。
「……ネクトリア……」
かすれた声。
「え……?」
アピスの手が、そっとネクトリアの手に重なる。
その瞬間――
ふわり、と。
レイピアが淡い金色に脈動した。
「これは……」
「……お母様の……魔力よ……」
ドクン――
胸が、大きく脈打つ。
優しくて、懐かしい光。
あの日、自分を包んだ――あの温もり。
「ネクトリア……聞きなさい……」
アピスの瞳が、まっすぐ妹を射抜く。
「今、あの子を止められるのは……」
一瞬の静寂。
「……あなただけよ」
その言葉と同時に。
アピスの魔力が、ネクトリアへと流れ込む。
ブワッ――!!
金と琥珀の光が渦を巻く。
空気が震える。
ネクトリアの手に、確かな重みが宿る。
母の愛。
姉の想い。
そして――
自分の意志。
三つが、ひとつに重なる。
レイピアが、輝く。
濁りのない光が、世界を照らす。
ネクトリアは、ゆっくりと立ち上がった。
涙で濡れた顔のまま。
だがその瞳は、もう揺れていない。
視線の先。
理性を失い、暴れる姉――ヴェスピナ。
「……待ってて」
震える声。
それでも、確かな決意。
レイピアを握り直す。
「今……私が……」
一歩、踏み出す。
「あなたを――連れ戻す」
その瞬間。
光が、爆ぜた。




