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姉妹
一瞬の静寂の中、
砂煙を切り裂くように、
二つの影がほぼ同時に現れた。
一人は、優雅な羽音を残して着地したアピス。
もう一人は、地を蹴って滑り込んだヴェスピナ。
二人の視線の先――
白銀を振るう、小さな背中。
「……ネクトリア……」
アピスの声が、わずかに低くなる。
(この魔力反応……間違いありませんわ…)
扇が、静かに閉じられた。
その瞳に宿るのは、
王族としての冷たさと――
姉としての、かすかな安堵。
一方。
ヴェスピナは――
「…………」
一瞬だけ、言葉を失った。
白銀の突きが走るたび、
空気が鋭く裂ける。
見慣れているはずの体術。
叩き込んだのは、自分のはず。
それなのに。
(……っ)
胸の奥が――
どくん、と高鳴った。
次の瞬間。
口元が、ぐいっと吊り上がる。
「……ははっ」
喉の奥から、抑えきれない笑いが漏れた。
「いいじゃねぇか……!」
目が、獲物を見るそれではない。
もっと、ずっと――
誇らしそうに。
嬉しそうに。
拳を、無意識に強く握る。
胸の奥で燃えているのは、
敵意ではない。
――歓喜だ。
(そうだよ、それだ……!)
(それがお前の戦い方だ……!)
その瞳の奥で、
姉としての誇りが、静かに燃え上がっていた。




