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槍と針

「ネクトリア…!!」

「お、お母さん……!」

王妃が割り込んでいた。

ネクトリアの目の前に、その背中が立ちはだかる。


次の瞬間――

王妃の身体が、大きく揺れた。

「……あ……」

深い傷。

魔力が、霧のように零れている。

ネクトリアの瞳が、見開かれた。


「お母さん……!?やだ……やだよ……!」


王妃は、かすかに微笑む。


「わた…くしは……ヴェスピナばかり…

…気にかけて…いました…ね…」


後悔の滲む、優しい声。


震える手で、ネクトリアの手を取る。

「ネクトリア……受け取りなさい……これが……あなたを……守ります……」


差し出されたのは――

金色に輝く魔槍。


それは、継承。

それは、王の証。

そして――命を喰らう猛毒針。


ネクトリアの手に、両手でも支えきれないであろう王家の重圧がのし掛かる


次の瞬間。


――ドクン。



空気が、歪んだ。

「……っ!!」

魔力が溢れる。


あふれる。


溢れ出す。


金色の奔流がネクトリアから噴き上がる。地面がひび割れ、空間が軋む。

(……だめ……!)(止まらない……!)


「――ネクトリア!!」


遠くから、異変を察知したアピスの声。

だが――届かない。

魔槍が、飢えたように唸る。


本来なら――

ここで喰われる。

(……こわい……)


その瞬間。


ふわり。


やさしい光が、ネクトリアを包んだ。


(……え……?)


暴走していた魔力が、ゆっくりと、整えられていく。


胸の奥に――ぬくもり。


(お母さんの……魔力……)


ビキ……ッ


王妃の槍に亀裂が走る。

重厚な槍身がほどけ、光の粒となって再構築されていく。


現れたのは――


それまでの魔槍とは、

まるで別物の――

細く、鋭く、しなやかな


白銀のー


ーレイピアだった


「……軽い……」


母の魔力が軸となり、ネクトリアの膨大な魔力が一点に収束する。


歴代最強の魔力。

それを今――


ネクトリアは、初めて“その手”に握り締めた。

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