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次の日。


「食材ー、ご飯だよー」


ネクトリアは膝をつき、小皿に餌を置いた。


目の前の巨大な七面鳥――食材は、誇らしげに胸を張っている。


「食材って……本当にその名前で良いの?」


……ゴル!!


大きく羽を広げる食材。


その姿はまるで

「当然だろう」と言っているかのようだった。


「そ、そっか……気に入ってるんだね……」


ネクトリアは少し苦笑する。


ふと、何かを思い出した。


「あっ、そうだ!これあげる!」


取り出したのは、収穫祭で買った真っ赤なスカーフ。


鮮やかな秋色。


「こうやって……首に巻くんだよっ」


くるり。


首元に巻かれる赤。


……ゴルル!!!


食材は羽を大きく広げた。


誇らしげだ。


どこか威厳すら感じる。


「よく似合ってる!」


ネクトリアは嬉しそうに笑った。


――その時。


食材の首がピクリと動いた。


……!!


次の瞬間。


勢いよく立ち上がる。


「え?」


何かを察したように、城門の方を睨む。


「どうしたの?」


食材は答えない。


そのまま――


ダッ!!


地面を蹴り、一目散に走り出した。


「えっ、ちょっと待って!!」


ネクトリアも慌てて追いかける。


(やばいやばいやばいーー!!)


その時だった。


見張りの兵士の叫びが城内に響く。


「敵襲ーーー!!

敵襲だーーー!!」


警笛。


鐘。


城が一瞬で戦時の空気になる。


ヴェスピナが雷のような速度で飛び出した。


「どこだ!!」


城門。


そこに押し寄せていたのは――


黒い大群。


「なっ……」


ヴェスピナの目が見開く。


「なんだぁ!?」


それは。


大量の七面鳥だった。


城門前を埋め尽くすほどの群れ。


羽。


爪。


鋭い目。


完全に――戦闘態勢。


「おいおいおい……」


ヴェスピナが頭をかく。


「どうなってんだよ」


その瞬間。


兵士が城壁の上から叫ぶ。


「囚人が脱走しましたーーーー!!」


城内が騒然とする。


そして。


一羽の七面鳥が、ヴェスピナの前に降り立った。


「おま……」


見覚えのある大きな翼。


「食材じゃねぇか」


食材はゆっくりと羽を広げる。


赤いスカーフが風に揺れた。


そして。


七面鳥の大群へ向かい――


高らかに叫ぶ。


グォルァアア!!


地面が震える。


それに呼応するように、


グォルァアアーーーーー!!


七面鳥の大群が咆哮した。


「なんだってんだ……」


その時。


空から影が降りた。


アピスだ。


ふわり、と優雅に着地する。


「どうやら――」


静かな声。


「逃げ出した囚人は群れのボスだった様ですね」


七面鳥の大群を見る。


そして食材を見る。


「そのボスを従えたのだから……」


くすり。


「あなたは七面鳥のボス、という事になりますね」


ヴェスピナが眉をひそめる。


「し……七面鳥……」


アピスは優雅に続ける。


「丁度良いですね。


今となっては名ばかりの騎士隊。


七面鳥で騎乗戦闘も……


わたくしは悪くないと思いますよ」


「七面鳥にねぇ……」


ヴェスピナは肩をすくめた。


「いや、やめとくわ」


食材が誇らしげに胸を張る。


「ん?」


ヴェスピナが首元を見る。


「なんだその布」


赤いスカーフ。


触れようとした瞬間。


――バシィ!!


鋭い羽が、手を弾いた。


「な、なんだよ……」


ヴェスピナは苦笑する。


「大事なものなのか?」


……ゴル!!


食材は胸を張る。


赤いスカーフが、風に揺れる。


「そっか」


ヴェスピナは笑った。


「大事にしてんだな」


ゴルル!!


食材は群れの方を振り向く。


そして――


ダッ!!


走り出した。


その瞬間。


七面鳥の大群が、道を開く。


まるで王の帰還を迎えるかのように。


食材は中央を走る。


群れが後ろに整列する。


そして――


そのまま森の方へ消えていった。


ヴェスピナが大きく両手を振る。


「元気でなーー!!


またいつか喧嘩しようぜーー!!」


兵士が慌てて駆け寄る。


「アピス王妃!!


囚人が……!!」


アピスは上品に笑った。


「執行猶予ですね」


「はぁ……」


ネクトフラムの兵士たちは今日も、


規格外の姉妹達に振り回されるのだった――


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