連行
両者、譲れない(?)激しい攻防の只中。
七面鳥の嘴が閃く。
一直線。
目を抉る軌道。
「――ッ!」
ヴェスピナ、紙一重で仰け反る。
風圧が睫毛を揺らす。
そのまま踏み込み、
翼の付け根を鷲掴む。
筋肉が軋む。
「観念しろ!!」
だが――
七面鳥の巨体が捻れる。
強引な回転。
羽毛が爆ぜるように舞い上がる。
白。
視界が塞がれる。
次の瞬間。
背後。
ドォッ!!
衝撃。
「ぐっ!」
背中に蹴りが突き刺さる。
肺の空気が吐き出される。
ヴェスピナが地を滑り、即座に振り向く。
七面鳥は――
既に距離を取っている。
約一羽分。
正確な後退。
冷静。
間合い管理。
無駄のない足運び。
明らかに“喧嘩慣れ”している動き。
ヴェスピナの口角が吊り上がる。
「面白ぇ……」
地面を蹴る。
石畳が砕ける。
――消える。
七面鳥の視界から、消失。
横をすり抜ける風。
次の瞬間。
足払い。
重心を刈り取る。
巨体が、浮く。
一瞬、静止。
「終わりだ!!」
空中で抱え込む。
腕に伝わる重量。
羽毛の下の、硬い筋肉。
そのまま――回転。
叩きつける。
ドゴォォン!!
地面が爆ぜる。
石畳が沈む。
土煙が舞い上がる。
広場が揺れる。
沈黙。
数秒。
羽が、ぴくり。
ヴェスピナが首元を押さえ込む。
喉元に体重を乗せる。
「……悪くなかったぞ」
七面鳥、荒い息。
胸が上下する。
だが。
目は、死んでいない。
むしろ――
燃えている。
闘志。
ネクトリアが呟く。
「……なんか、通じ合ってない?」
アピスが静かに言う。
「ええ。主従の契約が成立しましたね」
「いや、してないよね!?」
ヴェスピナが立ち上がる。
七面鳥も、ゆっくりと立つ。
逃げない。
睨み合う。
数秒。
夜風が羽を揺らす。
ヴェスピナが鼻で笑う。
七面鳥、胸を張る。
祭りの夜は、とても賑やかだった。
夜空に咲く花火が、
静かに思えるほどの歓声と拍手。
アピスが静かに告げる。
「公務執行妨害ですね。
連行します。
……名前を付けておきなさい」
「コイツに名前…?」
「管理上、必要です」
(公務…?? 連行…??)
もはやネクトリアは、
突っ込む気にならなかった。
ヴェスピナが七面鳥を睨む。
七面鳥も、睨み返す。
数秒の対峙。
「……じゃあお前は」
羽が揺れる。
花火が夜を染める。
「……食材だ」
「食材!?」
思わず突っ込むネクトリア。
七面鳥、なぜか誇らしげに胸を張る。
ドン、と花火。
その爆音にも、
七面鳥は一瞬も怯まない。
その様子に――
アピスは小さく笑った。
「……ふふ」
ネクトリア、遠い目。
「……なんなの、これ」




