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山岳種

ヴェスピナの腕が跳ね上がる。


「――っ!?」


七面鳥の蹴り。

速い。

重い。


ドゴッ!!


鈍く、骨に響く衝撃音。

ヴェスピナの身体が石畳を削りながら滑る。


靴底が火花を散らす。


「お姉ちゃん!?」


ネクトリアが駆け出しかける。


「来るな!」


即座に制止。

低く、腹に落ちる声。

その声に、迷いはない。


七面鳥が着地する。


――ズン。


石畳に爪がめり込む。


ギギギ……。


石が軋む。


「グルルル……」


低い唸り。

羽毛が逆立つ。

空気が震える。


体躯が一回り大きく見える。


観衆がざわめく。


「な、なんだあれ……」

「ただの七面鳥じゃねぇぞ……!」


屋台の男が青ざめる。


「だから言ったんです……山岳種だって……!」


七面鳥、地を蹴る。


――爆ぜる。


石片が跳ねる。


「は?」


視界から消える。


次の瞬間。


七面鳥は跳んでいた。


異様な高さ。

花火の火花を背に、黒い影が落ちる。


急降下。


ヴェスピナの喉元めがけ、両脚。


「チッ!」


腕を交差。


ドガァン!!


空気が押し潰される。


石畳に蜘蛛の巣状の亀裂。


ヴェスピナの足が、半歩、後ろへ滑る。


地面が削れる。


観衆、絶句。


七面鳥は着地と同時に横へ跳ぶ。


速い。

重い。

そして――正確。


間合いを外さない。


ヴェスピナが笑う。


「いい蹴りだ……食材」


七面鳥、羽を広げ威嚇。


風圧で提灯が揺れる。


「グルルルル……!!」


今度は低空。


一直線の突撃。


巨体が地面を抉り、砂煙を巻き上げながら迫る。


逃げ場を潰す軌道。


「真正面かよ……上等だ!!」


ヴェスピナも踏み込む。


石畳が割れる。


拳と蹴り。


真正面衝突。


――バギィン!!


衝撃が爆ぜる。


空気が震え、屋台の布がはためく。


ネクトリアが叫ぶ。


「もう…!! 今日お祭りなんだけど…!?」


「ええ…ずいぶん賑やかな祭りですね」


アピスが優雅に扇を靡かせる。


揺るがない声音。


「お姉さま…」


肩を落とし、深く息を吐くネクトリア。


視線は逸らさない。


仕方なく――見届けることにした。

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