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事件

秋祭りの夜――


花火が弾ける。

金の火花が夜に散る。

音楽は最高潮。

人々は笑い、踊り、酒を酌み交わす。


その時。

「きゃああああああ!!」


悲鳴。

広場の端。

葡萄酒樽の裏。

人垣が割れる。


ネクトリアとヴェスピナも駆け寄る。


そこに――

倒れている男。

顔面蒼白。

ピクリとも動かない。

口元には、赤い液体。

胸に手を当てたまま。


「し、死んでる……?」


空気が凍る。

楽師の音が止まる。

子どもが泣き出す。


ヴェスピナの目が細まる。

「ネクトリア、下がってろ」


低い声。

戦場のそれ。


(まさか……毒?)

ネクトリアの思考が駆け巡る。


ヴェスピナが首元に触れる。

沈黙。


「……温かい」

「え?」

「うぅ……もう飲めねぇ……」


もぞっ。

起き上がる男。


沈黙。


ネクトリア「…………」

ヴェスピナ「…………」

観衆「…………?」


「優勝は俺だ……樽三つ……ぐへへ……」


――バシィン!!


手刀炸裂。


「……解散だ」


男、再び沈む。


「酔っぱらいじゃん!!」


空気が戻る。


ネクトリア

「わ、わたし一瞬ほんとに事件かと……!」


ヴェスピナ

「お前、目が本気だったぞ」


「お姉ちゃんもでしょ!?」


その時。


「……いえ」


アピス。

微笑んでいる。

だが視線は、別方向。


「事件ではない――とは、まだ言い切れませんね」


「どどどどゆこと!?」


赤い肉片のような異物。


「赤いぞ。ネクトリア……」

「いや、それりんごの皮」


「この血の量……尋常ではありませんね」

「うん、葡萄酒」


その時――


「そいつを捕まえてくれ!!」


ヴェスピナの目が光る。

「……犯人か!?」

「嘘でしょ!?」


逃げる影。


「逃すかよ!!!」


飛びかかるヴェスピナ。

「オラァ!!観念しやがれ!!!」


――ドスン。


「お見事です。ヴェスピナ」


ギャラリー達の拍手喝采。

誇らしげなヴェスピナ。

その手にはーー。


巨大な七面鳥の首根っこ。


「食材だよそれ!!!!」


「さあ答えな…テメェがやったんだろ…さっさとゲロっちまえ」

「罪を認めなさい。あの場で逃げ出したのが何よりの証拠です」


「なんの罪なんだろう…」


七面鳥が羽をばさりと広げる。

……大きい。

異様に大きい。


そして。


ギロリ。

ヴェスピナを睨む。


「おいテメェ……なんだその目は」


七面鳥、低く唸る。

「グルル……」


ネクトリアが目を丸くする。

「なんか……強そうだね」


屋台の男が震え声で。

「そ、それ……山岳種なんです。

脚力特化で、岩場も大樹も簡単に駆け上がるって……手がつけられないからって、かなり安く売ってて…」


七面鳥はここぞとばかりに、

ヴェスピナを振り払いその腕を蹴り上げた。

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