好奇心
翌日の昼下がり――
「……つまんない……」
ネクトリアは、城の回廊で頬を膨らませた。
訓練は体術ばかり。戦場は禁止。魔槍も禁止。
幼い頃からヴェスピナと喧嘩を繰り返していたネクトリアに、
ミツバチの兵士がまともな手ほどきを出来るはずもなかった。
魔術の才能に恵まれなかった彼女は、
皮肉にもヴェスピナによって叩き上げられてきたのだ。
(わたしだけ……なんにもできない……)
胸の奥が、もやもやする。
さらに、退屈な理由はもう一つあった。
――王妃もアピスもヴェスピナも、ここ最近はずっと戦の話ばかりしている。
自分だけ、置いていかれている気がした。
だから――
「……ちょっとだけ、見るだけだから……」
幼さゆえの好奇心。
ネクトリアは、巡回する兵の隙を見て、こっそり戦場へ向かった…。
期待に胸を膨らませたどり着いた先、
岩陰から覗いた戦場。
ミツバチ軍VSオオカマキリ軍。花畑の領土を巡る戦争だった。
血と羽音と、金属の擦れる音。
その空気に、胸がざわつく。
同時に――
後方にいた王妃が、はっと顔を上げた。
「……この魔力……まさか……ネクトリア!?」
羽音が鋭く震える。
嫌な予感が、全身を貫いた。
「……あの子……!」
王妃は戦場を駆けた。母としての本能に突き動かされるように。
――しかし。
「――誰だ」
ネクトリアの背後に、巨大な影。
オオカマキリ兵の鎌が振り上がる。
「……っ!!」
足がすくむ。
咄嗟に、ネクトリアは迷った。
訓練は積んでいた。
しかし、実戦経験はまるでない。
魔槍を出せば勝てるかもしれない。
だが、母との約束を同時に違えてしまう。
躊躇するネクトリア。
しかしそんな余裕は無かった。
――死ぬ。
そう思った、その瞬間。
――ギィン!!
火花が散った。




