表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/34

毛氈苔

――ネクトリアはむっと顔をしかめ、起き上がる――


「ネクトリア。あなたはこれを」


再び扇が振られる。

地面が裂けるように盛り上がり、

黒光りした小さなモウセンゴケが現れた。


「……何、これ」


細い茎。

先端に、粘る液体。


「―――重ッ!!」

腕が沈む。

小さい。だが異様な質量。


「それで、ヴェスピナに一撃を加えなさい」


「えぇ……」


「そんな訳わかんねぇ雑草、当たるかよッ!」

ヴェスピナが笑う。


アピスの扇がバッと開いた。

「それでは――始め!」


地面が爆ぜる。

「オラァ!! どうしたネクトリア!!」


巨大ネコジャラシが唸る。

ドンッ

バンッ

ゴオォォッ


土煙。

まるで嵐だ。


ネクトリアは避ける。

避ける。

避ける。


両手で持つだけで限界の歪な植物。

腕が震える。


太陽が真上に来た頃――

異変。

動きが、鈍い。

無傷。

だが――


モウセンゴケが、じとりと光る。

ネクトリアの腕。脚。

砂と土が貼り付いている。

動けば動くほど、絡む。

重く。

重く。


「……お、重い……」


膝が落ちた。

ドサッ。


「そこまで」

ヴェスピナが動きを止める。

小さく舌打ち。


「なんだよネクトリア。相変わらず避けてばっかで……」


「だって……」

思い返せば…避けることしか、学んでこなかった。


アピスが静かに告げる。

「お二人とも。明日も同じ時間に、お待ちしております」


沈黙。

風が吹く。

ネクトリア、泥と粘液に塗れてただ沈黙――


ヴェスピナが耐えかねる。

「と、とりあえず風呂入ってこいよっ!」


ネクトリアは俯いたまま。

「う……」

「うぅ……」

「うあぁぁぁあぁぁ!!」


堰が切れた。

「ひっどいよぉーーー!!」


ヴェスピナ、慌てる。

「いや、わかる! わかるけど!! 姉貴もさ、何か考えがあるんだって!」


「うごけない……」


「なに?」


「重たくて動けないの!!」


「……」

「しょうがねぇな……」


軽々と担ぎ上げる。

ネクトリアの手から、じとりと光る植物がぶら下がったまま。


初陣を越え、確かな活躍をした。

それでも――

悔しかった。

期待していた。

自分なら、もっとやれると。

だが――

理不尽。

納得できるはずがない。


夕日が、一つに重なる影を長く伸ばしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ