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狗尾草

――ざわめきと羽音が混じる訓練場――


ネクトリアの足は僅かに震えていた。


そんな中――


ヴェスピナはいつの間にか訓練場の端で食事をしていた。

兵士たちに、自分の妹の成長を自慢げに話している。


それを断ち切るように。

「……静粛に」


アピスが扇を閉じた。

パチン、と乾いた音が響く。

空気が変わった。


「ネクトリア。今日から本格的に訓練を行います」


ネクトリアは瞬きをする。

「え……誰とですか?」


いつもの兵士では、もう相手にならない。

それは、ネクトリア自身が一番分かっている。


アピスは微笑む。

「あなたの相手は――わたくしたちです」


「は?」


訓練場の端。

焼ける肉の匂い。

ジュウ、と脂が爆ぜる音。


ヴェスピナは肉を頬張ったまま固まった。

「ウチらとかよ……加減とか苦手なんだけどなー……」


「ヴェスピナ」


名を呼ばれ、肉を飲み込む。

「あなたは、これで戦ってもらいます」


扇がひと振り。

風が地面を撫でた。


――ズズン。


目の前に現れたのは――

巨大なネコジャラシ。

ふわふわの穂が、やけに堂々と揺れている。


「……」


「へ……??」


ヴェスピナ、唖然。


アピスは淡々と告げる。

「そのネコジャラシで、ネクトリアの速度に追いつきなさい」


「えーっと……」


ネクトリアは、恐る恐る穂を“ふにふに”とつついた。

やわらかい。


「これなら勝てるかも!!」


空気が止まる。

ヴェスピナの目が細くなる。

「……聞こえなかったな。もっかい言ってみろ」


ネクトリアの肩が跳ねた。

息を大きく吸い込む。


「こーれーなーらーかーてー……」


ドゴォン!!

太く、鈍い音。

ネコジャラシが唸りを上げる。

視界が回転する。


次の瞬間――空。

爆風。

舞い上がる土。


「お空は綺麗だよなぁ!!チビ!!」


(なんて大人気ないの……)

アピスは顔を扇で隠し、深く息を吐いた。

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