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三姉妹

風が、強く吹いた。

遠くで、羽音がざわめく。


アピスの視線が、すっと戦場の外縁へ走った。


「……来ます」


ネクトリアも、遅れて顔を上げる。


草陰の向こう。

新たな気配が、幾重にも重なっていた。


オオカマキリ軍――増援。


複眼の光が、夜の中で不気味に揺れる。


ネクトリアの指先が、震えた。


だが。


その震えは、さっきまでとは少し違っていた。


アピスはゆっくりと立ち上がり、

ネクトリアの前に一歩出る。


「ネクトリア…この先は戦場です。あなたは下がっていなさい」


いつもの、冷静な姉の声。


けれど。


ネクトリアは、震える手で――

地面に落ちた白銀のレイピアを、拾い上げた。


ぎゅっ。


小さな手に、力がこもる。


「……やだ」


かすれた声。


アピスの眉が、わずかに動いた。


ネクトリアは、まだ涙で濡れた顔のまま、

それでも、前を見ていた。


「……もう……」


一歩。


姉の横へ並ぶ。


「……なんにもできないの…!!…やだ……!!」


風が、三人の王女の髪を揺らした。


その瞬間。


アピスの口元が――

ほんのわずかに、柔らいだ。


「……まったく」


優雅なため息。


だが、その声には、

確かに“姉の誇り”が混じっていた。


「本当に……放っておけない子ですこと」


ぱちん。


扇が開く。


琥珀の瞳が、戦場を射抜いた。


「ーーよろしいですわ、ネクトリア」


夜気が、張り詰める。


「――王族の戦い方を、ここで学びなさい」


その直後。


ヴェスピナが、にやりと牙を見せた。


「……はは」


肩を鳴らす。


「やっと三人並んだな」


前方。


オオカマキリ軍が――

一斉に、踏み込んだ。


そして――


白銀。

黒金。

琥珀。


三色の輝きが、ほぼ同時に瞬いた。


次の刹那。


三人の羽音が、同時に夜を裂く――!


白銀の閃光が、最前列を貫き。

黒金の暴風が、大地ごと敵陣を揺らし。

琥珀の魔力が、戦場そのものを掌握する。


羽音が、悲鳴に変わった。


オオカマキリ軍の隊列が――

初めて、明確に崩れる。


その中心で。


ネクトリアの瞳が、まっすぐ前を射抜いていた。


もう、震えてはいない。


その背後で、

アピスが静かに告げる。


「――前進」


ヴェスピナが、獰猛に笑った。


「了解ッ!!」


焔蜂国家ネクトフラム。


その頂点に立つ三姉妹が――

初めて、同じ戦場に並び立った。


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