3日目
3日目、クリスとブランドンは乗っ取りを画策しようと動き出した。ベンの出した結論は?
滞在期間の3日目がやってきた。
翌日、ケビンやリズの部屋にファックスが届いた。
住人が1人、増加。ネズミが二匹。
2人はその手紙を受け取りはぁと溜息を吐いた。
3人が司令室に集まる。
ベンが決意を決めた顔で大佐を見つめていた。
大佐はその目を見つめ返す
「他の2人は部屋に戻るように」
部屋には大佐とベンの2人になった。
ベンは覚悟を決めた目で切り出す。
「私は英雄都市の入居を辞退します。」
大佐はフッと笑う。
「まだ、入れるかも分からんのに辞退か」
大佐はベンを見つめ返す。
「何故だ?」
「ここは英雄都市と言われる生やさしいものではないからであります」
「ほう?」
「ここは戦場でPTSDを患った人達が入る、即ち、巨大な療養所であるからです。」
大佐は口角をつり上げて、笑った。
「流石にモニターの映像を見たら、わかるか」
ベンはコクリと頷いた。
「Yes」
ベンは大佐の後ろ姿が見えている。
「お前みたいな奴が市民に大勢いれば、いいんだけどな」
大佐の回答はまるでベンの答えが合っていることを示すようだった。
大佐はベンに向き直る。その表情が悲しさを携えていた。
「ベン、お前はここに入居が決定した」
ベンの目は大きく見開かれている。
街ではクリスとブランドンが物陰に潜みながら、周囲の様子を見まわしている。2人はアイコンタクトを交わすと建物を次々と移動する。
クリスはブランドンの所に行く。
ブランドンは訝しげな表情で、クリスを見詰める。
「どうしたんだ?」
「声、デケェよ」
ブランドンはムッとした表情でクリスを見詰める。
「誰も居ねぇ」
クリスが申し出る前にブランドンも同じ感想を抱いていた。街には住人が1人も居なかった。
家では届いたファクスの内容を住人が眺めている。
そこには非常事態発生、家で待機すべしと書かれていた。
女性はベビーカーから人形を抱え上げた。
「もう、戦争はごめんよね、私の可愛い赤ちゃん」
女性は人形を我が子をあやすように扱っている。
ケビンが訓練していた所まで来たが、誰も居ない。
ブランドンの顔には焦りが滲んでいる。
「流石におかしいじゃないか?」
クリスが口を開こうとした時、パァンと音が鳴り響き、クリスは崩れ落ちた。
ブランドンは遠くからクリスの様子を観察する。
血が出ている量から致命傷を受けたと感じた。
ブランドンは周囲の様子を見て、物陰に潜みながら、移動した。
「うるさいんだよ」
ケビンはそう言うと片付けを始めた。
ケビンはプロだ、任務の為なら、決められたターゲットを排除するのに躊躇いはない。
ブランドンはクリスを見捨てて、逃げ出した。
ケビンは全滅した部隊の生き残り。大佐が向かうまで、たった1人で持ち堪えた英雄、その考えが頭の中で反芻する。
「ねぇ」女性の声で呼び止められる。
「わぁ!」ブランドンは驚いて、声を上げる。
「静かに」
リズが口に手を当てて、静かにするジェスチャーをしている。ブランドンはリズの後をついていった。
「大丈夫?さっき、銃声がしたけど?」
「クリスが撃たれた!犯人はケビンです!」
「へぇ?」
「いきなり、発砲してきたんです!」
ブランドンは必死に説明した。
リズは冷ややかにブランドンを見やる。
「ケビンはね、大分、頭がいっちゃってるけど、間違えで、味方を撃つほど、狂っちゃいないよ?」
ブランドンはリズの冷たい声にたじろいだ。
「クリスとブランドンは一昨日と昨日、街を見学してるから、街には入らない筈、命令違反だね?」
侵入してるのが、バレたそう感じたブランドン
リズから手元に収まるものを投げられた。
ブランドンは咄嗟に受け止めた。それは拳銃
「一発、自分に撃って、、出なかったら、見逃してあげる。」
ブランドンは撃鉄を下ろすとリズに銃を向けた。
「アンタをやって、俺はここの住人になる、頭のおかしい奴らを殺して、俺が新しい秩序を作る」
ブランドンは引き金を引いた。
ドォン!その瞬間に鈍い音が響いた。
ブランドンは辺りに転がり回り、その手は真っ赤に染まっていた。
「アンタ達が考えそうなのは全て予想済み、私は捕虜になって、ロシアンルーレットをさせられた時、確実に自分が死ぬ回転をしてしまった。それで引き金を引いたら、弾は出なかった。私はあの時の間違いをもう一度、再現し、完璧な状態を作り上げた上で間違えたい」
リズはそう言うと、去って行った。
(狂ってやがる、自分の命を掛けて、間違えを期待するなんて)ブランドンはそう思いながら、去るのを見守った。
司令室ではベンと大佐が見つめ合っている。
「僕がここに入居する?どういう事です?僕はまともなのに」
ベンは全く、心当たりがないというように不思議な顔で大佐を見つめている。
大佐は重たい口を開いた。
「お前はなんで、この都市に入りたいと思ったんだ?」
「それは母親に楽な暮らしをさせたくて」
大佐は顔を横に振る。
「NO」
「どういう事ですか?母親を案じるのがおかしいんですか?」
大佐は慈しむような優しい声で語りかける。
「母親はどうなっている?」
「家に居ます!」
「お前がPTSDにかかって、自宅療養中に亡くなったのにか?」
「何を言っているんだアンタは!」
母親が死んでいる?何を言ってるんだ?
こんな時に電話?
ベンは急な事態に混乱しながら、携帯を取り出した。
「どうした、母さんか?」
大佐はその様子を注意深く見つめている。
「何だって?今、そこまで来ているって?」
ベンはドアの方を見つめている。
「母さん!」
ドアは開いておらず、誰も入ってきた形跡もない。
「母さん、駄目じゃないか!ここは軍の施設だ!規律違反だ」
「大丈夫だ」
大佐はベンの母親には触れずに答える。
「ここは私個人が購入した土地だ。国のものではない」
ベンは呆然としている。
「なぁ、ベン、お母さんとここで暮らせ、その方が安心だろ?」
ベンは虚空の空間を見つめる。
「まぁ、分かったよ、こんなチャンスはないかもしれないもんな」
大佐はベンの母親はいるという事で会話を進めていた。
「話はついたようだな、新しい部屋を案内するまで、部屋で待っていてくれ」
ベンは部屋から退室した、見えない誰かの手を握りしめたまま。
大佐はモニターでクリスとブランドンが倒れているのを見つけた。マイクに会話を始めた。
「クリスとブランドン、ここの住人になろうと殺人を企てたクソ野郎ども、でも、お前らが最悪なのはこれじゃない」
クリスとブランドンは荒い息で音声を聞いている。
「クリス、お前は前線に送る、補給物資から弾薬をくすねて、弾薬不足で死者が出た」
クリスは舌打ちをした。
「ブランドン、お前は減らそうと内密に動かなきゃいけない所を大声で話して、敵に情報を漏洩し、死傷者を出した」
ブランドンは頭を抱えた。
「その上、この裏切りだ、言い逃れはできん」
大佐はボタンを押した。
ドームから金属管が現れた。
そして、そこから水が放出される。
クリスとブランドンは激痛でのたうち回る。
全身から血が吹き出す。
強酸が頭上から降り注いていた。
クリスとブランドンの身体は溶けていった。
建造物は周囲の金属で、無事だった。
2人の服が消えた頃、雨が止んだ。
日誌には大雨と書かれていた。
暫く時間が経った頃、
ベンは家を与えられて、そこに住んでいる。
殺伐した、その場には木に縛り付けられたヨハンが居た。大佐は銃を構えて、標準をヨハンに向けている。
「また、こうなんですね」
ヨハンは不敵に大佐を嘲笑っていた。
「お前は捕虜になり、部隊を裏切り、隊の行動を相手に漏らした、結果、部隊は全滅した。」
ヨハンは面倒そうな顔で大佐を見る。
「何回、私を処刑すれば気が済むんですか?」
大佐は何も答えない。
パァン!
乾いた銃声が周囲に轟くと、そこには銃を構えた大佐しかいなかった。
司令室に戻るとそこには門番が居た。
大佐は冷ややかに見つめる。
「俺が悪かった」
大佐は無関心にその告白を見つめている。
「国の悪巧みだと思ったんだ、不正を暴こうと、
そしたら、個人の療養施設なんて」
大佐は首を振る。
「全てはもう遅いんだよ」
クリスとブランドンのような人物はこれまでと同じように現れるだろう、そして、今回と同じように処理するだろう。これまでと同じように
ケビンは車の影に隠れている。
直ぐに飛び出すと電光石火の速さで人形にペイント弾を当てる。壊れた人形の手にタッチをする。
何もない空間に教官と言って敬礼する。
リズが現れる。
「どう?少しは上達したの?」
ケビンはむくれる。
「うるせえ」
ベンが現れる。
「ご苦労様」
と一声掛け、去って行く。
「お母さんどう?」
リズがそう声を掛けるとベンは笑って
「今日も元気だよ」と答えた。
ケビンとリズは面倒なのが増えたと溜息を吐いた。
母親はベビーカーから人形を抱き上げる。
学校では教師の目は涙で潤んでいた。
「とうとう嫌いを克服したか」
スープにいつも、ほうちされめいた人参が無くなっていた。給食の前に座らされた人形の目は給食を恨めしく眺めているように見える。
大佐が虚な表情でモニターを眺めている。
皆、元気で毎日を送る。




