8日目「間取り」
八限目「間取り」
あ~今日は蒸し熱かね~思わず上のパジャマを脱いだよ。
ひょっとして寝室の間取りが悪いのかしらん・・・なんて小ボケは置いといて・・・。
ふあっと?間取り?
ナニソレ・・・聞いてないよ~(当然ですが)。
そういえば~ちょい前、ホラー物件モノ流行ってたよね・・・。
ん~見切り発車といくか(笑)、ジャンル間取りコメディ、ホラー?でいってみよー。
「リアル間取りな話」
苦節浪人生活3年を経て、俺は念願の大学生となった。
比較的裕福な家庭に育った俺は、両親の勧めもあり、下宿や寮ではなくてアパートorマンションで暮らすことにした。
で、今、大学近くの不動産屋を訪れている。
新生活をエンジョイかする為にもいい部屋を見つけないとな。
「いらっしゃいますー」
カウンターには、いかにも軽そうでチャラい日焼けした丘サーファー風な男がいきなり挨拶と共にウィンクしてきた。
「一人暮らしの物件を探しているのですが・・・」
「OKOKオールOK」
男はそう言うと、俺に馴れ馴れしく肩組みをしてくる。
「あの・・・」
「心配なんてALLナッシング。ミーがトレビアンな物件をご紹介っ!レッツGO」
俺は無理矢理、不動産屋の社用車に押し込められると、とある物件へと向かった。
「着いたYOっ!」
「あの・・・ここは」
目の前にある建物は古びた廃屋だった。
「おすすめの物件デースっ!ひあういごー」
「・・・あの俺、一人暮らしなんですけど」
「オウ・・・チッチッチッ・・・住めば都というね。さささ」
男は強引に俺の背中をぐいぐい押してくる。
(なんて日だ)
俺はそう思った。
そこは築50年以上建っているであろう老朽化した一軒家だった。
中に入ってみて俺は驚愕する。
まず陽当たりが超悪い。周りが竹林に囲まれているので、まあそうだろうと思った通りだった。
いきなり土間玄関の側に謎のトイレが3つ並んでいる。
風通しもよくなさそうで、じめじめとしていて、すえた臭いがする。
キッチンと風呂が同じ場所にある。
家のど真ん中に廊下があり、歪にもほどがある。
やたらと多い収納スペース。
俺はもはや怒りと苛立ちを覚える。
「あの」
「ファンタステックでしょ」
男はうっとりと家の中を見渡している、さも自分が住みたいと言わんばかりに、
「んな、訳ないでしょ」
「ホワイ?」
「なぜって、こんな家、誰だって住みたくないですよ。まして俺は学生なんですから」
「そう・・・ですか。残念デース」
男は首を傾げる。
「もう帰ります」
俺はくるりと背を向け、家を出ようとする。
すると、
「ちょっと待ったーっ!」
部屋のどこからか声がした。
「社長」
男はそう言った。
部屋の中心にあるリビングの床から、ゆっくり男が這い出て来る。
「怖っ!」
俺は思わず言ってしまった。
這い出てきた社長らしき人物は、貞子ばりのキモい動きで四つん這いで俺に迫ってくる。
「来るな・・・来るなっ!」
右手になにか白いものを持っている。
絶対ヤバいに決まっている。
「勘弁してくれーっ!」
俺は不覚にも腰を抜かしてしまう。
「わ・・・わたし、訳アリ物件を扱う株式会社、『リアル間取り堂』の社長、恵夢馬兵です。物件の銀河系軍団なんちって」
彼はそう言うと、わざとらしく仰々しい動きで俺に名詞を手渡した。
「・・・わ、訳アリ物件なんて嫌ですよ」
俺は震える手でその名詞を受け取った。
「左様ですよね」
「?」
「いや、あの・・・こちらのお客様がどうしてもと・・・ね、露那卯渡くん」
「ええ、社長」
「へ?」
頷き合うふたりの隣でいた者は・・・。
クル~キットクル~!
「ちょっと、アンタたち、なに口ずさんでるんですか」
「失礼」
おしまい
うーん。
家の間取りって大切だよね。