初依頼 3話
レイカ 「鑑定終わったし次はお金稼ぎのためにギルドへ行こうか。」
そうして向かったのは酒臭い酒場だった。まだ昼間なのにとても賑わっている。だが俺たちがギルドに入った瞬間静かになった。その静寂を切りさいてサメ頭の魚人が話しかけてきた。
サメの魚人 「よう坊主。こんなところになにしに来た。ここは女を連れてデートしに来る場所じゃないぜ。帰りな。」
ギルドの洗礼ということだろう。あんなに静かだったのにサメ魚人の一言でギルド内が笑いの渦に巻き込まれた。
ギルドの人達 「ワーハッハー。これは傑作だぜ。」
「ガキの来る場所じゃねぇぞ。ここは大人の世界だぜ。」
「グハハハハッ!」
前の記憶がフラッシュバックした。とたんに吐き気と憎しみの感情が沸いてきた。俺は知っている。人を嘲笑う声だ。俺は知っている。人を見下す目だ。俺は知った。こういうやつらのことが心底嫌いだということを。
レイカ 「ちょっと待った。ガキとは聞き捨てならないな。横の助手くんならまだわかるけど。私は成人してるし。それに遊びに来たんじゃないよ。依頼を受けに来た。覚悟ならとっくにできてる。」
サメの魚人 「そうだったのか。それはなんというかすまなかった。てっきり俺はお前らが遠足感覚で来たもんだと思ってちまって。若い未熟なやつが死ぬくらいなら嫌われてでも帰らせようという考えだったんだ。だが覚悟があるなら別だ。俺はお前らを歓迎するぜ。ようこそ冒険者たち。俺の名前はホーク。よろしくな。」
ギルドのやつらは思いの外いいやつらだった。そのおかげであっさり俺の嫌悪は収まった。肩透かしを食らった気分だ。俺は過去の記憶のせいで見下されると感情的になりやすい。
ホーク 「兄ちゃんには悪いことしたな。お詫びにおすすめのデートスポットを教えてやろう。ここから北西に少し進んだとこにあるシロビレンの丘だ。きれいなヒバナ草が見れるぞ。女を連れて行ったらよろこぶこと間違いなしだぜ。」
スズク 「師匠とは別にデートする関係じゃないって。でもありがとう。」
レイカ 「なに二人で話してるのかな。そんなことよりいい依頼が見つかったから急いで行こう。」
スズク 「わかった。そういえば俺はギルドに名前登録してないけど大丈夫なの?」
レイカ 「大丈夫だよ。ちゃんと私が登録しておいたからね。窒息マゾって名前でね☆」
スライムの検査をいじってくるのか。少しイラってなるチョイスだ。まあさすがに冗談だろう。まさか本当にそんな名前にするような人じゃないしな。
スズク 「まったく師匠ってばからかうのも大概にしてくれよ。」
レイカ 「いや、本当にその名前で登録したよ。ギルドの規約上5か月は変えられないからね。」
スズク 「えっ...」
あとで確認したが本当にされていた。今後はこの人に大事なことは任せないでおこう。そう心に決心した。このあとさすがに叱った。しかし、しょんぼりした姿になった師匠はかわいいかったので、つい途中からなぜか俺が師匠慰めていた。あらためて考えると意味がわからん。
師匠が選んだ依頼内容は、北西にギャングウルフが出たから倒してほしいというものだ。俺の魔術の実験台にちょうどいいから選んだらしい。北西にはホークが勧めてきたシロビレンの丘があるから終わったら寄って帰ろう。
レイカ 「目撃地点に着いたよ。このあたりを探してみよう。」
俺がこの世界で魔物を見たのは最初のスライムだけだ。なので魔物に会うのが少し楽しみだ。ギャングウルフといったか?たぶん狼だろう。ギャングと名前に付くくらいなので、恐らく狂暴で野生感があふれているのだろう。気になってワクワクが止まらない。
レイカ 「おーいこっちにギャングウルフの群れがいたよ。」
一体どんな魔物なんだ?さあご対面と行こうか。
ギャングウルフ 「ワオーン。ケェンカジョウトウダオーン。」
聞き間違えではない今確かにギャングウルフが喧嘩上等だ!と鳴いていた。
そこには狂暴で野生感あふれるリーゼントやモヒカンのたてがみを持ったオオカミの姿があった。
見てもわかる。聞いてもわかる。ギャングの名がついた由来が。
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