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僕は病んでない  作者: モノ脳
白上編
5/13

巡った思考

思うに、人間関係とは互いの距離感や関係値のような一つの軸で解析できるようなモノではないのだろう。人間関係は部屋と鍵の関係で表すことができる。友達、親、恋人といった様々な部屋があり、誰にどの部屋の鍵を渡しているかがその人の人間関係と言える。もちろん友達といっても、学校の友達とネットの友達は違う部屋の鍵を持っているし、友達の部屋のように複数人が同時に鍵を持つ部屋もあれば、恋人の部屋のように一人しか入っていない部屋もある。さらに一人が複数の部屋の鍵を持つことだってあるだろう。それはラベリングの作業であり、その人たちへの扱いの差とはその人たちが入れる部屋の違いなのだ。そして僕や白上のような人間は様々の部屋がある中に自分本人にしか鍵を渡さない言わば「自分の部屋」を作る。そうすることで他人と自分の区別を付けるのだ。白上の彼女は恐らく白上から多くの部屋の鍵を渡されて白上の世界の多くに関わるようになったのだろうが結局最後まで白上の「自分の部屋」の鍵は渡されなかったのだろう。僕だって白上から「自分の部屋」の鍵を渡されてはいないだろうし、僕も白上にそうしてはいない。代わりに僕らは互いに「理解者の部屋」の鍵を預けあっている。そしてそれは白上の彼女が渡されていない部屋の鍵の一つだろう。「理解者の部屋」にいることで僕は白上の「自分の部屋」の中を垣間見ることができる。だから理解者の部屋と自分の部屋は隣同士の関係と言えるのだ。僕と白上との出会いは互いに初めての()()との出会いなのだ。




僕は学校へと向かいながら昨日の白上との話を思い返し、考え事をしていた。結局あの後お開きとなったが、白上はまだ質問があるなら次遊ぶ時に答えると言ってくれた。昨日から何かと頭が回るのでなかなか思考に集中できて気持ちがいい。




そして気がついたら学校に着いていた。教室に入ると何か違和感を感じた。皆の視線がいつもと違うのだった。何か腫れ物を見るような目でこっちを見ている。何も心当たりがないので探るように先に来ていた翔に挨拶をすると無視された。何なんだ本当に。自分の席に座った後も、予鈴なった後も、昼休みになってもずっと誰かしらがこちらをちらちら見てくる。翔に話しかけても適当に躱されてしまう。僕は段々疎外感を感じて来ていた。僕に関わることだけがいつもと違って他のことはいつも通りの光景が不気味に思えた。僕は今いじめられているのかもしれない。でも何で?理由は依然分からないままだった。教室の居心地が悪くなり、昼休みに教室を一度出ようとすると足をかけられて転んでしまった。足を出してきたのはあまり話したことがない人だった。いわばクラスの中心人物という人間で別に仲は良くも悪くもない、、、はずだ。少し愛想を浮かべて何?と聞くと


「は?そっちが勝手に足に引っかかっただけだろ。」


と言ってきた。そんな訳がない。だってただ足が引っかかっただけでクラスの視線がこんなに集まる訳がないのだ。やはり僕は何かいじめに近しいことをされているようだ。その理由を聞いても答えは得られなさそうなのでもう何も言わず足早に教室を出た。今は耳に聞こえる全ての音が僕を嘲笑っているような気がして、心がとても痛かった。何なんだ。僕が何をしたんだ。いや、理由なんて何でもいいのかもしれない。ただ皆、自分が相手より優位に立てるなら些細なことで相手のことを馬鹿にしたりするものなのだ。自分の方が相手より立場が上だと示したい欲求がこういう状況をつくり出したのだ。僕がその相手に選ばれた理由など考えても意味はないかもしれない。僕は小春のいる教室へ歩いていた。今はただ自分と対等に会話してくれる人が欲しかった。小春を見つけた。幸いその時は一人で弁当を食べていた。話しかけると小春は明らかに不快そうな顔をした。僕はその瞬間自分が孤独なのだと悟った。もはや自分に味方してくれる人はなく、ただこの胸の痛みに耐えるしかないのだと。どうしようもなく泣きたくなった。が、泣いてしまったらより馬鹿にされた目で見られるかも知れないと我慢した。我慢した分だけ胸の痛みが高まった。小春は言った。


「奏、隣に住んでる犯罪者と仲良くしてるらしいじゃん。話しかけてこないでよ。犯罪予備軍のくせに」


いつも俺のことをミタカと呼ぶ小春が奏と呼んで距離を置いてきたことがまた胸の痛みを強めた。それに何で白上のことがバレてるんだ。僕は白上とはそういう関係じゃないと説明しようとしたが、どう説明すれば良いのかわからなかった。僕は実際に白上の殺人の話を聞いた上で関係を保っている。自分でもその否定に自信を持てなかった。僕は犯罪者へとなっていっているのだろうか。弁明はできないままただ何も言えず、僕は―




目を覚ますと目の前には小春と翔がいた。


「あっミタカ起きた。すんごい寝顔だったよ」


と小春が言い、僕は放課後、翔と一緒に小春を待っていたことを思い出した。待っている途中に寝てしまったようだ。小春は先ほど来て、翔が起こしてくれたらしい。翔が言った。


「涙流しながら笑顔で寝てたぞ、奏。よっぽど()()()だったのか。」


そう言われて僕はまだ自分の口角が上がっていることに気づいた。僕は確かにあの夢の中で深く心が傷ついた。絶望の感覚を夢の中で実感できた。あの時、僕の中でぱっと「ああこれが白上の言っていた絶望なのか」「確かにこの状況を克服できたなら」と思考が巡っていた。白上の話がより理解出来て上機嫌になって、僕は答えた。


「ああ、めちゃくちゃいい夢だったよ」

ep.1ぶりの登場、翔

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