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僕は病んでない  作者: モノ脳
白上編
3/13

侵食される日常

「宿題、出てないぞ」


「忘れました。すみません。」


「持ってくるのをか?」


「やってくるのを」


「そうか、残ってやれ、教室最後に締めろよ。」


はぁ、正直者は救われると言ったやつは誰なんだ。嘘つきめ。大体僕がやってないのは数学の課題だぞ。現代文担当の吉田が取り立てるものでもないだろ。それにそういう熱血さは体育教師が持つモノだろ。現代文なんて「教師のキャラが薄い教科ランキング」20年間連続トップの教科だろ。(僕調べ)様々な文句が頭の中で湧きつつも僕は仕方なくやり残している宿題を解き始めた。普段なら何も考えずに黙々と宿題をやるのだが、今日は白上との昨日の続きが待っている。急に楽しみが先送りにされてイライラしているのだ。




結局宿題を終わらせるのに1時間半もかかってしまった。今から急いで帰っても白上と遊ぶ約束の時間は1時間遅れてしまう。それでも少しは続きを聞けるかもしれないと急いで帰ろうとしていた時、後ろから


「あっミタカじゃん、何してたの?」


と声が聞こえた。僕のことをミタカと呼ぶのは黒木小春(くろきこはる)だけだ。小春とは違うクラスだか、小中高と同じ学校に通う幼馴染だ。たまに僕のクラスに来ては駄弁って時間を潰している。僕は後ろを向いて


「宿題の居残り。それとミタカって呼ぶのやめろよ。同じクラスに三鷹って奴いるの知ってるだろ」


「いいじゃん、昔から呼んでたんだし、もう三田って呼ぶのも奏って呼ぶのもしっくり来ないんだよ。それにミタカは「みた⤴︎か」だけど三鷹は「みた⤵︎か」だもん。」


「その違いに当人が気づけてないんですが」


「それは気にしない気にしない、今から帰るなら一緒に行こうよ。私も今帰るとこ」


「いや無理だな、僕は急いでいる。」


白上のところに早く行きたかった僕がそう言って走り去ろうとすると、小春は僕の腕を掴んで言った。


「まぁ待ちたまえよ。たまには一緒に帰ろうよ。ねぇミタカ君」


僕は小春を振り解こうとしたが無理だった。小春は意外と力があるようだ。僕は諦めて言った。


「分かったから離せ。痛い痛い」


そんなんで僕と小春は一緒に帰ることとなった。無理やり一緒に帰らせておいて、特に話したいことがなかったのは小春らしく、僕たちはつまらない話を続けながら帰路に着いた。




白上の部屋を訪れたのは、約束の時間からちょうど1時間半ほど後だった。白上は怒りを抑えているような不機嫌な顔で


「遅くない?なんかあった?」


と聞いてきた。初めて白上から圧を感じたので適当な理由を作る余裕もなくなって


「宿題の居残りをやってまして、、、」


と答えると白上は悩みに苦しむような顔をした後、


「忘れてた訳じゃないんならまぁ、、、じゃあさそういうことがあるんなら連絡先交換しよ。」


と携帯を差し出してきた。実は一緒にゲームをするような仲になっても僕と白上は連絡先は交換していなかった。しかしそれはただ隣同士と言うこともあり、する必要があまりなかったからだ。白上から今日まで言われなかったということは白上もそう思ってたのだろう。しかし確かに今回のようなことがあるのなら交換しておいた方がいいかもしれないと思い、ラインを交換することにした。思うに先程までの白上は僕が逃げたのか事情があるのか連絡先を聞いておかなかったことで確認が取れず、ただ待たせられた怒りを僕にぶつけるか迷っていたのだろう。白上と僕はまずゲームの方を進めることにした。ゲームを1時間ほど進め、区切りのいい所で止めにした。2人用という珍しいゲームの割にはストーリーもしっかり描かれていて全体のストーリーのようやく半分だろうというとこまで何とか進んだ。暫く感想を語り合った後、会話が途切れたタイミングで僕は


「昨日の話の続き、聞いても?」


と今日の僕の本題を切り出した。すると白上は少し笑って


「もちろん。…でもその前に何で君にこういうことを話すのか詳しく言っておこう。」


と言った。僕は少し混乱して


「僕が白上さんと似てるからじゃないんですか?」


と聞くと、白上は首を控えめに縦に振った。


「そう。ではどこが似ていると思う?」


「他人に興味がないところ…」


「そうだ。でも重要なのはそこではない。重要なことは僕らが内向的であるということだ。僕らは他人に関心がない分、自分に対して関心が向く。自分とは何なのか、自分にとって大切なことは何なのか、自分はどうしてこんな行動をするのか。そうやって考え続けて悩み続けできた君だから僕のことが分かるのだとそう思って僕の話を聞いて欲しいんだ。」


そう言われて、確かに僕は自分に対して人より関心が高いかもしれないと納得し、


「…分かりました。」


と答えた。白上はまた笑って、


「じゃあ教えよう。僕が彼女を殺したのはそれが僕が一番苦しくなると思ったからだ。僕は彼女のことが大好きだったし彼女も僕のことを好いてくれた。彼女は僕の一番身近で大事な人だった。だからそれを壊して彼女を僕自身から奪ってしまえば、僕は苦しくいられるとそう思ったんだ。」


白上の言っていることは理解できなかったし、側から見ればそれは狂人の様だった。しかし僕は不思議と白上と僕は似ているのだと、だから白上のことは理解できるはずだと、頭を回すのを止めなかった。昨日のあの()()()()()をまだ僕の頭は忘れずに追い続けていた。

新しいキャラの名前考えるのが一番時間かかった。

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