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第一話

胡蝶の夢、という言葉をご存知だろうか。


蝶になって飛ぶ夢を見ているうちに、蝶としての生と現実があやふやになって、実は今人として生きているこっちの生が全て夢なんじゃないかってなるやつだ。


そんな思考問題は哲学者にでも任せてろって?


まあその通り、俺も普段ならその意見に大賛成だ、だがそうもいかない事態が発生していてな。


ああ、まさしく俺は今、夢で見てる異世界とこっちの世界、どっちが本当なのかあやふやになってるところなんだ。




通学の為に早起きする学生で満員のバスに揺られて、俺は今日も会社に向かっている。


働き始めてから3年は経ったが、朝のこの時間だけは大嫌いだ。


いつもバス内はなぜかうっすらと加齢臭が漂っており、それに人口過密が拍車をかける形でいっそう空気が悪くなり、毎日食べた朝食が吐き出そうになる。


最近、ただでさえ頭痛が酷いのだから本当勘弁してほしい。


そろそろ車でも購入したいなあとは思うが、低い収入となけなしの貯金額を考えればあと数年はこの苦しみが続きそうである。




午前の業務がひと段落付き、小休憩がてら最近新卒で入った後輩と雑談に勤しむ。


「ところで先輩、ここ数日やけにぼーっとしてますけど。恋人に振られでもしたんですか?」


「うるせえな、一度たりともできたことない話はこの前したろ。モテないやつへの恋愛トークは自虐しか出てこないからやめてくれ。」


「あーそうでしたねw」


こいつは庄崎だ。小柄で顔もいいため周りから可愛がられてはいるが、俺より3つは年下のくせによくいじってくる。


「最近、なんか同じ夢を見てる気がするんだよな。内容は靄がかってるんだけど」


「ほえ〜」


「でも、たまにハッとして帰らなきゃ!みたいな思いになるから不思議なんだよなぁ…」


「実家しか帰る場所ない先輩がそれ言うの面白いですねw」


「うるせえ」


「あ、また出ましたねその口癖。言葉遣いが荒いですよ〜。全く、先輩って誰かが一緒にいたげないとダメになっちゃうタイプですよね。」


不意に、鈍い頭痛と共にどうしようもない眠気に襲われる。


庄崎の声が遠くなっていく。


「そもそも、先輩って自分に近づく女を避けてるから彼女できたことないだけであって…」


「…ってあれ?先輩ー?」


「ーーー」


視界がだんだんぼやけ、周りから音が消え、そのまま世界がブラックアウトした。




大量の風塵と共に、大きな爆発音が鳴り響く。襟首を掴まれ勢いよく後ろに引かれる。直後頭上を何かが掠める。


「おい、何ふらふらしてんだレオ!死ぬところだったぞ?!」


振り返ると、後方の石壁に大きな矢が突き立っていた。


表層を砕き割って深くめり込んでいる様から容易にその破壊力が想像できる。


俺の所属する部隊は、ゲリラ的に襲撃を繰り返している敵の弓兵部隊を相手にまさに戦闘中であった。


「すまんバーキンス、助かった」


俺はすかさず手を前にかざして想力を前方に集中させ、お返しがてら敵方にバランスボール大の火の玉を向かわせる。


その数はざっと2桁は超えており、着弾した箇所から地面ごと敵兵達を燃やして命を刈り取っていく。


余談だが、この世界には想力というエネルギーが存在しており、それをコントロールすることで様々な事象を具現化できる。


(この世界…?)


敵はそろそろ撤退を始めるところだったようで、今の炎弾を機に蜘蛛の子を散らすように一斉に離脱していく。


「よくやった!レオ、お前は貴重な攻撃手なんだから戦闘中は意地でも気を抜くな」


バーキンスが豪快に背を叩いてきて少し体がつんのめる。


「ああわかってる、俺もこんなとこで終わりたくはない」


先刻油断し死にかけたとこではあるが、なんとか山場は切り抜けることができたようだ。


「今回も、生き残ることができたな」

初投稿です。

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