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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生・転移の文芸・SF・その他関係

収容空間の使い方

作者: よぎそーと

「収容空間ね」

 自分の能力を確認し、転生者は考えていく。

 この能力で何が出来るのか。

 どういった利用方法があるのかを。



 地球は日本で人生を終え、どういうわけか生まれ変わった転生者。

 今度の人生は剣と魔法のファンタジーな異世界。

 そんな世界で転生者はとある能力を持って生まれた。

 それが『収容空間』だ。



 正確に言えば、『空間魔術』なるものだ。

 この魔術で出来る事の一つが収容空間である。



 他にも空間魔術には、範囲内にいる存在の感知なども出来る。

 補助としてはなかなかに便利なものだ。

 しかし、戦闘に直接使えるようなものがない。

 そう思われてるので、評価はそれなりだ。

 あれば便利だが、補助でしか役立たないと。



 それが一部から軽視、さらには蔑視される事にもなってる。

 直接的な戦闘力しか評価しない者達だ。

 軍隊や探索者にこの傾向が強い。



 この世界には怪物と呼ばれる存在がいる。

 人間と敵対する強力な存在だ。

 ゴブリンにトロールにオーガ。

 スライムに魔獣に巨大昆虫などなど。

 これらに対抗するのが軍隊であり、探索者である。



 こういった者達は即座に敵を殲滅する事が求められる。

 戦いが長引けば損害を受ける可能性があるからだ。

 その為、どうしても直接的な殺傷能力が求められる傾向にある。

 それが粋すぎて、補助的な魔術を見下し蔑む者もいる。



 転生者もそれはなんとなく感じ取っていた。

 だから呆れていた。

「こっちの世界もか」



 地球の日本においても似たような傾向はあった。

 目に見える分かりやすい成果がもてはやされるという。

 実際にどれだけの効果があるのか、どれだけの成果があがるのか。

 そういった部分はあまり顧みられない。

 ただ見た目で分かる事だけ求められる。



 生まれ変わってやってきた異世界も同じだと思った。

 だからこそ落胆した。



 しかし、それはそれとして自分の能力である。

 これで何がどこまで出来るのか。

 それは知って起きたかった。

 その為、機会を見て様々な事を試した。

 その結果。

「意外と使えるな」

 自分の持ってる能力に満足する事となった。



 そんな収容空間と空間魔術をひっさげて探索者になった。

 探索者とは民間の戦闘員とも言うべき存在だ。

 軍隊が政府の命令で戦闘するのに対して、探索者は民間業者として戦闘を行う。

 怪物を倒して金を稼ぐことを生業とする。

 危険は大きいが、成功すれば成り上がる事が出来る。



 また、家を継げない次男三男以下の子供達がなる仕事でもある。

 他に食いぶちがない場合になる仕事ともいう。

 現代日本のように様々な職業がある世界ではない。

 家を、家業を継がないという事がそのまま失業になるのがあたりまえなのだ。

 そんな世界では、怪物退治をもっぱらとする探索者は誰でもなる事が出来た。

 なにせ怪物は無限といえるほど存在するのだ。

 稼ぎに困る事は無い。



 もちろん危険も大きい。

 怪物は最弱のものでもそれなりに強力だ。

 人間を殺すことが出来る程度の強さはもってる。

 そんな連中と渡り合うのだ。

 死亡率はかなり高い。



 それでも家と家業をつげない転生者に他に道はない。

 食いぶちを稼いで生きて行くには探索者になるしかなかった。



 もっとも、悲観してるわけではない。

 持って生まれた収容空間はかなり強力だ。

 使い方にもよるが、かなり楽に戦闘をこなす自身があった。



 探索者になって早速その能力を使っていく。

 まずは効果範囲の空間を探知して怪物の居場所を見つける。

 そちらに向かっていって、怪物と接触。

 戦闘に入っていく。



 遭遇したのはゴブリン。

 人間の子供程度の大きさを持つ人型の怪物だ。

 能力は低く、身体能力は同じ大きさの人間の子ども程度。

 だが、慎重120センチ程度の大きさはある。

 それが数匹の集団で動いているのだ。

 まとまって襲いかかれば、大人一人くらいは簡単に殺す事が出来る。

 なので油断は出来ない。



 とはいえ、戦闘といっても、武器を振り回して格闘戦に入るわけではない。

 一応、素振りなどの稽古は独自にしていたが、格闘能力に自信があるわけではない。

 使うのは主に収容空間だ。



 この収容空間で、遭遇した怪物の足下の地面を削る。

 収容空間に可能な限りの地面を収容する。

 当然、そこには穴が発生する。



 高さ3メートル。

 縦と横にも3メートル。

 その大きさの四角い穴が出来あがる。

 ゴブリンはそこに落ちていった。

 足下にいきなり穴があいたのだ。

 避けようがない。



 しかも。

 事前に分かっていれば対処もとれる。

 怪我や衝撃は免れなくても、体が自然と反応する。

 なのだが、今回はこれがない。

 いきなり突然の事だ。

 不意打ちになる。



 とうぜん、対処など出来るわけがない。

 意識してとる受け身も。

 無意識に本能がとらせる自己防衛の行動も。

 何の対処もなく3メートルの高さから落ちるしかない。

 それだけの高さから落ちれば、それなりの怪我をする。

 死にはしなくても、体中に衝撃が走る。

 体が動かなくなるほどの。



「おー、上手くいった」

 事前に試した通りの結果に満足する。

 収容空間の能力は、物品を別空間に収納する事。

 基本的にはこれだ。

 これだけしか出来ない。



 ただし。

 収容するものは何でも良い。

 物品を入れるだけと思われてるが、そうではない。。

 入れ物になる空間がいっぱいになるまで何でも入れられる。

 とうぜんながら、地面も収納できる。

 それによって地面に穴が空いた。



「それじゃ」

 穴の中の落ちたゴブリン。

 それを見下ろしながら転生者は仕上げにかかる。

「死んでくれ」

 収容空間の中にある土の塊。

 それを元の場所に戻す。

 隙間無く土がはまりこむ。

 ゴブリン達を地面の中に閉じ込めながら。



 その瞬間、ゴブリン達には凄まじい圧力がかかる。

 土塊が一気に戻ってきたのだ。

 その分の体積・重さが体に一気にかかる。

 ゴブリンが耐えられるわけがない。

 出棺的に押し潰されていく。

 本当に一瞬にしてゴブリンは絶命した。



「さて、それじゃあ回収しますか」

 ゴブリンが死んだ頃合いを見計らって、再び収納空間に土塊を収納する。

 ただし、今度は土塊だけが別空間に取り込まれたわけではない。

 死んだゴブリンの体内にあった魔力結晶も一緒だ。



 怪物は心臓にあたる部分に魔力の結晶がある。

 これが他の生命体における心臓の役割をはたす。

 死んだ怪物は、体を塵芥のように崩壊させ、この魔力結晶だけを残す事になる。

 収容空間に土砂ごと取り込んだ事で、この魔力結晶も手に入れることが出来た。

 便利なことに、自動的に土塊と分離されて。



「よしよし」

 自分の手元に残る確かな成果。

 それを確かめて転生者は次の怪物の所へと向かう。

「この分なら他の方法でもいけるな」

 魔力結晶という成果を手に入れるために。

 他の方法を実際に試すために。



 次の怪物もゴブリンだった。

 それは即座に収容空間に取り込まれた。

 上半身だけを。

 収容する部分は使用者の好きなように指定出来る。

 ならばと体の一部分だけでも収容できるのだろうかと思って試してみた。

 結果は成功。

 ゴブリン達は瞬時に上半身と下半身が泣き別れる事になった。



 次は、事前に収容していたものをゴブリン達のいる所に排出した。

 取り込んでいたのは火。

 たき火などで火だけを収容していた。

 これを振りかける事が出来るかどうかであるが。

 無事に成功した。



 煮えたぎったお湯なども同じように放つ事が出来た。

 収容空間の中では時間が進まない。

 取り込んだものは取り込んだ状態で保存される。

 その為、火の熱気も、お湯の温度もそのままだった。

 沸騰状態のお湯をかぶったゴブリンは、即死はしないが痛みに苦しむ事になった。



 次に、ゴブリン達を取り込んで空中に排出したりもした。

 地上100メートルに出現したゴブリンは、当然ながら落下して死んだ。



 取り込んだゴブリンを土の中に排出もした。

 即座にゴブリンは土と同化して死んだ。



 他にも、思い付く様々な方法を試した。

 その全てが思い通りの結果になった。

 怪物の死滅という、最も望む形で。



 おかげで転生者は楽に怪物退治をする事が出来た。

 空間魔術で怪物の居場所が分かるし、戦闘も収容空間を使えばすぐに終わる。

 新人とは思えないほど簡単に怪物を倒していけた。

 異例なほどの成果をあげる事が出来た。



 レベルも上がった。

 怪物を倒すことで経験値を手に入れた────からではない。

 魔力結晶の魔力を自分に取り込んで己を強化したから─ではない。



 レベルアップとは、ようは自分の力を効率的に引き出せるようになる事だ。

 その為にも、体や魔術、あるいは頭を使う必要がある。

 どうすれば効率的にやれるかを掴む必要がある。

 作業や戦闘でレベルが上がるのは、この方法に気付くからだ。

 そうする事で己のもってる力、霊魂を元にする気をよりよく使えるようになる。

 霊魂そのものを練り上げて強化する事になる。

 これによって精神や肉体の能力を上げる。

 レベルアップとはこういうものだと気付いた。



 今回の場合、空間魔術を使いまくった事が大きい。

 これによって気力を上手く使う事を求めていく事になった。

 それが霊魂を練り上げて強くする事につながった。



 おかげでより効果的に空間魔術を使えるようになった。

 体力や知力と言った能力も上がった。

 やれる事が増えた。



「思ったより便利だな」

 使うごとにより強化されていく空間魔術。

 その性能は止まる事を知らない。

 最初はただの便利な補助魔術だと思っていたが。

 応用する事で様々な事が出来るようになった。

 やれる事の多さを考えれば、単純な攻撃魔術などよりよっぽど良い。



「これは当たりだな」

 身につけた能力の高さに満足する。

 あとはこの能力を使って、出来るだけ成果をあげる。

 手にした成果で平穏な暮らしをする。

 働かなくても生きていけるくらいの豊かさが欲しかった。



「アーリーリタイアに、ファイアだっけ?」

 前世で見聞きした言葉を思い出す。

 たくさんのカネを手に入れて、仕事をしないで暮らしていけるようにしよう、というような意味だったはず。

 前世ではついぞかなえる事が出来ない事だった。

 だが、今ならそれも夢ではない。



 夢と期待を胸に、転生者は新たな人生を進めていく。

 働かずに暮らしていくという贅沢を手に入れるために。

気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


面白かったなら、評価点を入れてくれると、ありがたい






______________________



以前、こちらのコメント欄で、俺の書いた話を話題にしてくれてたので、覗いてみると良いかも


http://mokotyama.sblo.jp/

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