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3光は、ジェレクの骨格に絶え間なく巡り続け、基盤等の損傷は然程無い様子を見せていた。
人間で言う火傷の様に、腕一帯と胸部の骨格は黒く燻んでいる。
顔は、鼻から上半分に皮膚を残し、右耳は側頭葉にかけて全焼、左耳は半端に焼けている。
ゼロとは違い、銀に光る下顎を持つ。
口元には、発声に合わせて自在に唇を動かす為の、短く細かい突起が光る。
側面に整列した歯も、数ヵ所が焼け落ちていた。
側頭葉の部分には、丸型のガラリを思わせるパーツが露わになり、隙間から3光の点滅が漏れている。
「トップ!」
事態が収束し、部下は顔を突っ伏す彼に駆け寄る。
だが彼は、無言で震える右人差し指を、火傷して床で唸る部下に向けた。
彼はそのままフラフラと、傍に寄る部下に体を軽くぶつけながら押し退け、壁にずっしりと背を預けた。
顔はずっと伏せたまま、そこでフリーズする。
「…………先に連れてけ…」
床で唸る部下を見て、イーサンが静かに指示を出した。
応急処置が手早く施され、搬送準備を整えていく。
補佐2人がヘンリーに近付こうとしたが、彼は右手で遮った。
震えながら、細々と溜め息をつく。
まるで溶接でもされたかの様に、壁から動こうとしない。
ぐったり俯き、強張る顔を隠す。
肩で息をする速度は、徐々に上がっていく。
全身がまだ痛い。
胃から、今にも突き上げて来る。
封じた物が噴き出しそうになるのを、生唾ごと只管呑み込み、奥へ奥へと押しやる。
身から滴るのは、水ではなく汗かもしれない。
胸痛に頭痛、吐き気は、肘から肩にかけて負った火傷の痛みを、大きく上回っていく。
左腕を覆っていた物は完全に焼失し、水を滴らせ露わになっていた。
右手が力無く、その装着位置を掴む。
嘗て失った利き手は、青と白の2色が巡る、アンドロイドと類似モデルの義手だった。
その掌を、下向きに広げる。
手首から手先を動かす連結の嚙み合わせが悪くなっているのが、妙な軋み音で分かった。
燻みを帯びた、どれだけ軽量を試みても重い、銀の手。
虚ろな目が、規則的に手先まで流れる点滅に落ちる。
晒したくない。
だが、隠す力が無い。
動悸が押し寄せ、周りの音を遠ざけ始める。
視界は淀み、闇が大口を開けた。
来る。
浮き彫りになる声はまた、いつまでも止む事無く犇めき、全身を縛り付けてくる。
長いか、短いか、その札は出てみなければいつも、分からない。
微かな高音が、耳から脳を貫く。
右手が反射的に側頭部を抑えると、息を吸い込み、止まった。
(…あ――…ははっ……もう……分かったよ…
…分かってるよ……)
………
……
…
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




