表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#08. Reboot 脱出
93/189

[3]




 ヘンリーは無表情のまま見届けると、その場に背を向け引き返す。

 その先に居た部下とターシャは、端へ大きく寄って通路を開け、俯く彼をそっと見た。

閉じていた彼の目は、薄く開かれる。

その目は、何も無い正面を睨みつけた。

憎しみによる眼振に、視界は揺れている。






 いつからか、他人のくせし、母親ぶる様な口の利き方と態度を取り始めた彼女。

頭の固い、口煩くてならなかった祖父の側近。

祖父は勿論、父すらも優秀と評価し、部下からも信頼されていた。

あああの女のどこの何がいい、憑りつかれた様に庇いやがってと、思い出すだけで胸糞悪い。






 そんな鬱陶しい記憶に、彼は短く強い吐息に合わせ、辛酸を消す。






 そこへ、巨大な軋み音が焼却炉内に轟いた。

咄嗟に一同は振り向き、恐怖に後退る。

密閉された鉄扉が、激しく殴られ凹凸を見せ始めた。



「起動!?」



イーサンが驚き声を漏らすと、周囲は騒ぎ立てる。




聞きつけたジェレクが手元の液晶から大きく顔を向けた。

その反動で首が後方に倒れていく所、透かさず脇に居たヘンリーが右手で支える。

手早く適当な位置に合わせ、左拳で頭頂部を力強く叩き、無理矢理填め込んだ。






 焼却炉からは、まるで猛獣の様な機械の悲鳴が低く上がると、更に扉は内側から連続的に強打され、複数個所が更に突出し始める。



「マズイ…出て来る!出て来るっ!」



焼却チームの部下達はとうとう、叫びながら階段扉を放ち、逃げ出した。






 鉄扉は、けたたましい音を上げて放たれた。

シャルは、荒れ狂いながら縁に乗り出し、機械の叫びをその場に轟かせる。

その場は、大粒の火花と黒煙が立ち込めた。

彼女の骨格は部分的に熱され、半端に溶け出している。




 縁から落下すると、上半身を這わせ、目はターシャに向く。

ターシャはそれに絶叫し、暴れ、男の手を振り解いた。

だが、その場で腰を抜かし、移動困難になる。




 シャルは、破壊しきれていなかった腰椎の予備バッテリーで再起動した。

匍匐前進は、焼かれている事など無関係に、速い。

その場に残る数名は目を奪われ、一気に引き下がる。




 そこへジェレクがその顔を蹴り上げ、前方に夢中になる彼女の視線を逸らせた。

彼女は翻りながらもノロノロと体勢を戻そうと、手足で宙を藻掻く。



ジェレクは胴体から掴むと、焼却炉へ投げた。

しかし、彼女が両足を激しく動かしていた事で、勢いが激減する。

そのまま入り口手前に落下し、彼女は立ち上がろうとした。



そこへ瞬時にジェレクが駆け、腹に蹴りを入れ、横転させる。

火だるまになるシャルに触れた事で、彼にも見る見る炎が纏わりついた。




「消火器!」




レイシャが放った途端、火災報知器が鳴り響き、スプリンクラーが一気に作動する。






 上体に炎を巻くジェレクは、床で藻掻くシャルの両足を掴み、密閉扉の縁に強引に乗せる。

しかし彼女の右膝が縁に立てられ、そのまま蹴り、ジェレクを派手に押し倒した。

そのまま再び匍匐前進でターシャに迫り来る。



ターシャは咄嗟に床を転げ、翻った。

それと合わさる様に、シャルはターシャを拘束していた部下の足首を、熱された鋼鉄の右手で掴んだ。



人体への燃え広がりは凄まじく、彼の足は見る見る炎に包まれ始める。

熱さと恐怖に悲鳴が上がり、その情景にターシャは驚愕しながら叫ぶと、床を慌てて這って階段扉に向かった。

そこへ




......("TAA…SHA,C…LAU…DIA\);

「ター…シャ・ク…ロー…ディア」



「!?」



……command = input

("Transport the corpse safely.: ")

………("I…will…I……will…brin……g…

…her……saf……f…f…ly…TASHA,C…LAU…DIA\);

「無…事…に……連れ…て……来る……」



乱れた羅列に変わるコマンドに沿って放たれたのは、ターシャの名前。

それに留まらず、無事に連れて来ると繰り返す機械の声だった。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ぅおおおーー!!来たーーー!! 何だこの展開は、熱すぎるではないかっ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ