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銃撃戦の中へ踏み込める訳がなく、レイシャとターシャはロビーで決着を見届けた。
レイシャはターシャの両手を掴んだまま、こちらに向かって歩いて来るレアールに震え上がる。
その背後から、ビルがダウンしたシャルの左足首を掴み、引き摺っている。
一方ジェレクはその脇で、例の任務に掛かり切りだ。
画面を見下ろすのではなく、目の高さまでそれを持ち上げてプレイしている。
首を完全に折られた為、一時的に半端に填め込んでいた。
大きく動かす事をすれば、簡単に抜け落ちて皮膚だけで繋がった状態になるだろう。
ターシャは顔面蒼白させながら、変わり果てた4体を凝視する。
美麗なレアールは、頬と口元だけを残し、鼻から上を銀で光らせていた。
ゼロの目を思わせる眼光に、やや青みがかっている。
こんな状況であっても、乱れた髪をガクガクした手付きで直していた。
ビルの剥き出した腕は、恐ろしいのだが美しくもあった。
太さの違う骨格が合わさるそれは、人間の前腕骨と類似している。
間に観測できるのは、指の本数分の細い鉄骨が組み込まれ、肘から手首、指へと連結している。
指の構造もまた人間同様、関節に設けられた丸い銀の連結が、朝日に鈍く光った。
そこを配線に沿って這い巡る3色の光は、部分的に裂けた腕や顔の肌からも垣間見える。
だが、彼の両目はどこへ落ちたのか。
あの、自分を撥ねたと言われる男と似た目の開き方をしており、真っ黒で悍ましかった。
彼等は、ウェストの2階から1階にかけて設備されている焼却炉へ向かっている。
透かさずターシャはレイシャの手を振り解き、ボートがあった場所へ向かおうとした。
不意に見えた、サウスの青白いロビー。
小さくゼロが移動する様子が、ここからでも僅かに観測できる。
そこへまた、激しく両腕を掴まれた。
声を上げ振り返ると、レイシャが連絡して寄越した、部下の男が少々息を荒げて立っていた。
「遅いわよ!」
レイシャが怒鳴るのと合わせて、3体が颯爽とガラス扉を開けて入ってきた。
完全に動きを止めているシャルを、ビルが引き摺りながらエレベーターに乗り込む。
彼女が引き摺られてきた床には、弾丸が点々と転がった。
ターシャはそれにまた、目を震わせる。
付いて行く2体が乗車する所、レイシャも駆け込んだ。
男もまた、抵抗するターシャを無理矢理引き連れて乗り込む。
エレベーターが静かに閉まると、ジェレクが立てるゲーム音だけになる。
その真横に押し込まれていたターシャは、そんな彼に心底引いた目を向けると、足元に横たわる彼女をそのまま見下ろした。
もう、シャルだと判別は付かない。
微かに焼け焦げた臭いと、鼻を突く妙な臭い。
薬品室で戦った際に、それらを浴びた影響か。
ターシャは徐々に、頭痛を起こし始めた。
「気の強い女は割とタイプだ…遊ぼうぜ…」
不意に男が、面白がって耳打ちする。
それにゾッとし、足を踏もうとするも軽々躱された。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




