[7]
圧倒的白を基調としただだっ広いロビー。
1製作専門の塔、サウス。
壁際中央に据えられたカウンター以外、何も無い寒々しい空間。
病院の様にも見えるそこではゼロが10体以上、青白い照明を受けながらウロウロ行き交っていた。
移動音が合わさり、その場の音はこちらの足音を消してしまう。
各々、単純にプログラムされた1作業に只管取り掛かっている。
積み上がる書類をカウンターの決まった収納ボックスに仕舞っていたり、その場のコンピューターを操作をしていたり。
布を被された何かを別の部屋に運搬していたりと、常に光ったままの白い目は、止まる事を知らない様を見せていた。
そんな彼等を脇に、Rと研究員はそのフロアを抜け、奥へ突き進む。
レアールは頭を軽く振り、髪を軽く靡かせる。
歩みを止めないままレザーコートを脱ぎ、丈の短いレザーベスト姿になり、女性らしい腰の曲線を直に晒した。
伸びる滑らかな白い両腕。
左手首にはゴールドの小さな装飾が付いたレザーのバングルを嵌め、僅かに光った。
「おぉおぉ…補佐官が作っただけあるな……」
彼女の背後を歩いていた研究員2人がその動作に改めて見惚れる。
彼女は3台目で、レイシャが初めて1人で手掛けたアンドロイド。
自由に扱っても良いと博士に言われ、彼女なりの追求が等身大となっていた。
「2代目レイシャ・ハリスってとこね。
どうしたって製作者に似るか、その思考が露わになる。
ビルなんてトップの都合の塊じゃないの」
「でも色気を補佐官が煩く求めるもんだから、声は仕方なく細工したって」
目標の、人間と呼んで然るべき存在とは何か。
その追求は終わる事は無いだろう。
可能な反映は全てやろうとするレイシャの執着に、博士は折れた。
なかなか譲る事をしない彼だが、補佐である彼女の存在がどこか可愛いのか、或いはただ機嫌が良かったのかもしれない。
真正面で、先程の病院とは比較にならない真っ白なエレベーターの扉が開いた。
中の照明は青白く、2体のスタイルが放つ光沢がより格好を引き立てる。
エレベーターが音もなく止まると、遺体は運び出された。
「ご苦労様。外回りは後の2人が戻るまでは不要よ」
2体を残して研究員は担架と共に降り、扉は無音で閉鎖すると再び上昇する。
静寂の間で、レアールは右手を眺めた。
翻し、指を1本1本丁寧に手前に折っては見つめる。
その動作にビルが振り向き、釘付けになる。
「何の任務だ」
彼は音声での解析に切り替えた。
「汚れていたら、手入れをする」
エレベーターの扉が開くと、2体は奥の真っ白な廊下へと消えた。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。