[15]
ウェストロビー
ターシャに掴みかかるレイシャ
中庭での戦闘シーン
上層部モニターに戻ります
…
……
………
急速に嵩張り、消えた過去は、古傷を数秒疼かせた。
ターシャを掴む手に、爪が減り込んでいく。
「否定や軽蔑をする事なんて遥かに容易い……
不可能な理由や受け入れたくない理由なんてすぐ見つけられるっ…
ああ、ずっとやっとけ!」
放たれると共に減り込む彼女の爪に、ターシャは激痛の声を上げる。
その背後で、レイシャの目は震え、泳いでいた。
滾る悔いと怒り、終いには悲痛までもが彼女の視界を次々黒く掻き回した。
それを乱暴に拭う様に、目をきつく瞑り、首を振る。
背後の彼女の様子がターシャには一切見えないが、大きな温度差を見せる発言に動揺した。
「人の代わりに機械を使う。
それ程までに技術や人間の思考は変化している。
それを使わない手は無い。
ただの人形にして放っておくよりも画期的だわ!
良いのかしら?
人類の進化を追求し始めている最中、貴方がたの物差しはその程度で。
早急に改新した方が良いわねぇ。
できないのなら…
我々が手掛けて差し上げるわ…」
ターシャは萎縮し、震える。
レイシャは壁から彼女を引き剥がし、外のR達をその視界に入れ込んだ。
「Realは彼等を更に超える。
その顔で表現し、学習能力も長け、最高のパフォーマンスを発揮するわ………
貴方のお友達がそれであったならば…
恐ろしいだなんて最悪な発言はしなかったでしょうよ!」
興奮の浮き沈みが激しい様子に、ターシャは引き攣る。
目前ではまたも、金属の鈍い音が四方八方に響き始める。
レアールが地面にサブマシンガンを投げ、シャルの胸部に貫通するビルの腕を掴んでいた。
貫通の際に開いた骨格が酷く喰い込み、引き抜こうとする毎に皮膚が剥がれていった。
フリーズしていたシャルは、残る光の流れを早めながら、突き破る彼の腕を掴み、微々たる抵抗をする。
背後で更に彼女を掴み、固定するジェレク。
遂にビルは、手にした基盤を握り潰した。
小さく細かい破裂音と共に、それは地面に砂の如く落ちる。
彼女の点滅は、消えた。
ジェレクは彼女を自分の方へ引き寄せると、ビルの腕を勢いよく奥へ蹴り返す。
反動で、彼の右腕はグローブごと抜けた。
その手は完全に皮膚を失い、重々しいシルバーの骨格を露わにする。
点滅しながら配線を伝う白、青、金の光。
それらは腕、関節、指先を走り、上腕から他へ残る皮膚の下に消える。
ただの鉄の塊となったシャルは床に崩れ落ち、3体はまた、それを静かに見下ろした。
「やれやれ」
イーサンが言いながら、その場をふらっと離れる。
だが、ヘンリーは真下の光景に、目を震わせながらニヤけた。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




