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シャルの姿を見れば、レアールの状態は大した事無い。
しかし、彼女に対するヘンリーの考えは違う。
そこも話に聞いていたイーサンは、こんな事ならば、彼女に無理に対応させなくてもよい様な気もしていた。
結局、見てみたい、試したいというヘンリーの欲はもう、変わる事は無いだろう。
イーサンは煙草の火を消しながら、小さく息を吐く。
そうは思うものの、自分にだって言える事である。
彼は無言で小さく笑い、ヘンリーの背中を軽く叩いた。
「あっさり綺麗に直しちまうよ。
これを機に、新規パーツ入れてやりゃいい。
彼女の表情を、ずっと待ってたんだし」
だが彼は、中庭を見下ろしたまま石の様に固まっている。
また聞こえていないのか。
そう思ったのも束の間、小さく、1度だけ頷いた。
それもまた、酷く不安がる子どもの様だった。
レアールとシャルが、よろめきながら共に立ち上がる。
3体が一斉に彼女に向かう所、先にレアールが右側から一撃入れ、彼女の両肩を掴んだ。
だがその手を掴み返され、彼女がレアールの右脇腹を複数回素早く蹴り、よろけさせる。
そのまま攻め寄るビルに、シャルはレアールを蹴り飛ばした。
だが彼は、飛んできたレアールを受け止めてはすぐ脇に避け、シャルの脆くなった胸部に焦点を当てる。
ジェレクは素早く彼女の背後を取ると、その両肩を掴んだ。
右足を彼女の背中に当て、固定する。
ビルが正面から彼女の首を左手で掴むが、彼女は両手で掴み返し、解放しようと抗う。
彼はその両手を右手で強引に引き剥がすと、そのまま逆方向に捻った。
青白い電流が、派手に宙を照らす。
彼女の腕の抵抗が弱まり、残った左手が垂れ落ちた。
ビルは彼女の首を掴んだまま、右手を引き、僅かに手を開く。
そのまま勢いを付け、露わになる胸骨に激しく突っ込んだ。
火花と電流が散り、ジェレクと共に皮膚の損傷を負う。
背後からのジェレクの固定により、位置がズレる事なくビルの腕は彼女に貫通。
貫き切った手には、導線が複雑に絡まって飛び出た基盤が掴まれていた。
今度はそれを引き抜こうにも、胸部は格子状の骨格で頑丈にカバーされている。
突き破った影響で、激しく破損した格子の数々の先端が、彼の腕に減り込んで抜けない。
彼女の背中からは、その先端が花開く様な形状で突出していた。
ジェレクは、自分の腹前に飛び出してきたそれを、凝視している。
シャルはフリーズしていたが、目や、その基盤にはまだ、青、金、白の点滅が走っていた。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




