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静止したシャルを、ジェレクが左手で胸元から持ち上げた時、それは即、掴まれた。
彼女の安定を失った首が戻り、そのまま彼の額を頭突きする。
掴みかかる彼の手を肘からへし折り、軋ませ、腹から蹴飛ばした。
彼は派手に床を転がり、俯せになる。
ビルはレアールに左手を伸ばすと、彼女は背負っていた未使用のサブマシンガンを投げた。
彼は受け取った流れでチャージングハンドルを引き、トリガーを引く。
轟音は中庭中を響かせ、建造物が振動する。
その中からは、部下達が身を引きながらも目を光らせていた。
シャルはほぼ、レザーを半端に纏ったゼロの様な見た目になっていた。
弾をボディで弾かせながら、ビルに一直線に疾走。
連射は即終わり、彼は、そのまま向かい来る彼女の頭部、頸椎を打撃。
屈折した所、膝で腹を蹴り上げ、銃の先端で右横面を叩き、首が大きく捻れる。
捻られた方向からレアールの腕が伸びる。
その髪を掴むと引き込み、腰を蹴り、下半身が高々跳ね上がり、シャルは地面に崩れた。
だが、その体勢でも彼女は両手を伸ばし、レアールの手首に掴みかかる。
深々とそこに指先を減り込ませながら引き寄せ、そのまま彼女の襟首を掴み、顔から石畳に叩き込んだ。
瞬時に亀裂が大きく走る。
その左横面をジェレクが2丁で連射しては腰に仕舞い、シャルの顔面を回し蹴りした。
彼女は雑に吹っ飛び、転倒。
その間レアールが、減り込んだ顔を石畳から引き抜いた。
細かな炸裂音に、ビルとジェレクが目を向ける。
彼女の皮膚は地面に持って行かれ、そこにへばり付いていた。
両頬と口元が何とか残り、鼻と目から上は骨格の銀を鋭く放っている。
屋上の3人は目を剥いた。
「っ…!?」
レイシャはまたも青褪める。
横のヘンリーは声と瞼を失い、恐る恐る横目で彼女を見る。
そんな彼を盾に、イーサンも彼女を覗き見た。
「もうっ!やり過ぎなのよっ!」
堪らずヘンリーの左肩を引っ叩き、声を上げた。
彼女は乱暴に扉の向こうへ消え去る。
残った2人は目を丸くさせ、数秒、扉を見つめた。
その後、ジワジワと互いに顔を見合わせる。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




