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連絡橋の縁に残ったジェレクとビルが攀じ登ると、ビルが先に飛び降りた。
続こうとするジェレクの腕に、ターシャは咄嗟に飛び付き、押さえる。
「止めて!殺さないで!すぐ止めて!」
「あ?」
今にも飛び降りる姿勢のまま静止しては、必死の彼女を凝視する。
「貴方も弄ばれないで目を開けて!
殺し合いなんかしないで眠らなきゃいけない!」
「目は開いてるぜ女。で何だ?眠る?どっちだクズ。
指示は正確にしねぇと任務は失敗に終わるぜ。
てめぇ、スペックまるで0じゃん」
ピストルのスライド音が2丁から鳴り、真下に向けて構え、2発。
1発はそこで取っ組み合うシャルの頭頂部に、もう1発は躱された流れでビルの肩に当たり、その目がふと合う。
「眠るなんてだっせぇプログラムはされてない。
俺達は永久的に作動するアンドロイドだ。
お前、変換すんなら保安官には到底向いてねぇ」
ジェレクは彼女の手を振り払い、縁に立ち上がっては中庭を見下ろす。
2対1の取っ組み合いは、未だ決着が付いていない。
彼は1丁をホルスターに、残る1丁を両手で構え、シャルを狙う。
「止めて!―
2発。
焼け焦げた臭いは荒い潮風に横殴りされ、それと共に涙も散る。
彼もまた、顔や腕の負傷を目立たせていた。
鉄の骨は連絡橋の照明を受け、鋭い光を放つ。
金属を入れ込まれ、薬剤で表面を維持され、自在に操られる故人。
それにアマンダが被る。
ターシャは咄嗟に、その場からウェストの入り口へ走り去った。
ジェレクは見向きもせず、軽快に縁から飛び降り、消えた。
「何でっ……
何で2度も死ななきゃいけないのっ…!」
ターシャは泣きながらつい、言葉を漏らす。
扉を通過し、同じ様な薬剤室が並ぶ廊下に入る。
両側を確認し、すぐ左に扉が見え、飛び付く。
ノブを押すと直ぐ、階段が露わになった。
(アマンダっ…)
中庭で銃声が飛び交っている。
そのままあの広場に奴等が出てしまえばと思うと、ゾッとした。
駆け下り、正面のドアに激しく衝突しては開け放つ。
そこには、黒い3人が居たフロアに似た大理石の床が広がっている。
そこを恐々と通過し、玄関のガラス扉に向かった。
だが、近付いた途端複数の流れ弾がガラス扉に減り込み、巨大な亀裂を生んだ。
ターシャは恐怖に一驚し、反射的に横の壁に背を預け、小さくなる。
外に出られる訳が無い。
彼女は床に這いつくばり、状況を角から覗き込んだ。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




