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ターシャは身動きが取れず、シャルの硬い体にしがみ付くのに精一杯だった。
そこからは微かに、軋み音が聞こえてくる。
実に速い速度で駆ける最中、目に飛び込むのは頭部や首元。
そして、振られる際に時折覗かせる腕。
攻撃を受け続けた事で皮膚が抉れ、部分的に金属骨格が露わになっている。
皮膚の切り口は黒く、人が切り傷を負った時のものと類似していた。
部屋を飛び出して数秒、ビルが視界に現れる。
速度が早く、ターシャは悲鳴を上げた。
それがまるで後を押す様に、シャルの足が更に早まる。
ターシャは突如激しく後方へ引かれ、彼女のレザーベストの裾を掴み、顔を突っ伏す。
進路は瞬時に方向転換した。
風が激しく全身を這い、髪が大きく靡く。
ヒールで橋が叩かれる音が鳴り響いた。
その真下。
中庭で待機していたレアールが、ふと見上げる。
先程まで傍に居たジェレクは、居ない。
彼女は背中からアサルトライフルを回し込み、照準を覗くと、連絡橋の手摺りに沿って流れる様に連射した。
「きゃあああーっ!」
銃声と飛び散る火花の数々。
それに堪らずターシャが悲鳴を上げた時、シャルは瞬時止まる。
ビルは追い付くと、肩からターシャを引っ張り、後方へ投げ飛ばした。
シャルに振り返られる寸前、右から左手で首を手刀打ち。
彼女の姿勢が僅かに左に傾く。
そのまま左手でその左肩を掴み、固定。
再び、頸椎から下3カ所を連続で打撃する。
彼女がよろめいた所、その背中を勢いよく蹴り飛ばした。
シャルは前方に転倒しかけるも立位を保ち、彼を振り返る。
彼は透かさず、僅かに開いた胸部と腹に、目にもとまらぬ速さで右拳を連打。
そのまま両膝を連続で蹴る。
彼女の膝が逆向きに折れるも、即、復旧。
ターシャは身を起こし、這ってサウスの入り口まで寄り掛かる。
アンドロイドの恐ろしい争いに、目は激しく揺れ動く。
シャルが膝の復旧後、僅かに前屈みになり、上体を徐々に起こしていく。
その時、頸椎に1発放たれた。
彼女は不意に手を触れ、振り返る。
ジェレクがウェスト入り口から現れ、手にしていた任務のスマートフォンをパンツの裏ポケットに仕舞った。
着用していたミラーレンズのサングラスを外すと、モダン部分を咥え、もう1丁引き抜き、構えた。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




