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「…部下と下のRは殺すな……
シャルを焼却炉まで連行しろ…」
2体はヘンリーの横で、淡々と銃に触れていく。
ハンドガン、ショットガン、アサルトライフルにサブマシンガンまでもが備えられていた。
まるで服でも選ぶ様な感覚で、それらを手に取っていく。
その隙にターシャは四つん這いになり、震えながらドアの外に向かおうとするが―
手元の床に1発、火花が発砲音と共に散った。
「きゃあっ!」
後方に跳ね上がり、腰を抜かす。
「いいね。2つ貰い。あれは?何してんの?」
まるで同年代を思わせる口調で、ターシャに対して放つジェレク。
彼はハンドガンをもう1丁取ると、軽く見回してはスライド音を立てる。
空のそれに手早くマガジンを仕込み、ベルトに差した。
その流れで、持てるだけのマガジンも回収していく。
返答はどうでも良さそうだ。
「やらかした馬鹿に用がある……何処だ…」
「今のあんたみたく疲労ダダ漏れで、最悪なツラして必死に隠れてるぜ。
殺されるって喚いてやがった。
今頃便器に顔でも突っ込んでんじゃね?」
ヘンリーはつい、彼に少々目を見開き、囁く様に言った。
「お前……また変わったか…?」
ジェレクは装備を整えると両手をポケットに、右足軸に体重をかけて立ち、彼に向き合う。
「アップデートは常々必須。
こんなもん、新常識ってやつじゃん。
つーかビビられ過ぎだろ、トップ。
一発、てめぇらは殺さねぇって言ってやりゃあどうだ。
あの騒ぎ方じゃあ、下で好きに放っときゃいいってもんでもねぇようだぜ」
ヘンリーは以前より変化した彼から目を逸らすと、間を置き、小さく鼻で嘲笑った。
「ビルがもう向かってる」
彼の視線は、ふと彼女に向く。
「丸腰でもやれるだろうが…手強そうなら渡してやれ…
あと……後衛に回れ……」
言い終わりには視線が逸れ、鼻だけで小さく息を吐いた。
「あら。役に立てるのに、残念だわ。
でも、優しいのね」
「…………起動者が煩い…」
レアールはアサルトライフルを眺め、背に掛ける。
流れで、サブマシンガンにも手が伸びた。
滑らかな動作に揺れる両腕は、白くて眩しい。
「嫌な言い方は変わらないわね。
で?本当にそれだけなの?
頼まれた訳ではないわね。
そのフラフラした目と、どこか忙しない鼓動。
判断しておきながら、緊張してるのね。
怖いのかしら?私が潰れる事が。
彼女が心配する事が」
彼の逸らしていた目は、発言の最中、鋭くレアールに向いていた。
「彼女は相変わらず、貴方に冗談の1つや2つ言えと求める様だけど。
それに飽き飽きするのなら、その手と口で、いい加減分からせてやれば済む話よ」
マガジンを胴体に据え付けたポーチに悠々と挿し込みながら、言葉を並べ立てる。
武器を担ぎ終えると、手首まで隠れる革のグローブを丁寧に嵌め、ベルクロで固定した。
「……何だ…お前…………理解不能だ…」
「空間に入り浸り過ぎね、お偉いさん。
私の任務は決まってる。
汚れていたら、手入れをする。
これを嵌めていれば、その時間短縮ができる」
彼は首を掻いては目を宙に、溜め息をついた。
「ここ、笑う所よ」
レアールはジェレクと共に踵を返し、廊下の明かりが差し込む手前まで向かう。
そこで彼女は、床で萎縮するターシャを見下ろした。
「あら、床を汚したなら、手入れをしなさい。
女の嗜みよ」
ヒールの音と共に消え、その後を、いつの間にかスマートフォンを横向きに持って視線を落とすジェレクが通過した。
ヘンリーのポケットにスマートフォンの画面の光が消える。
彼は再びターシャに接近すると、左手で容易く襟首を掴み上げた。
「っ!?放してーっ!」
硬くて痛いそれを両手で掴みかかるが、ビクともしなかった。
MECHANICAL CITY
本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。
また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




