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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
72/189

[23]




その手に恐怖し、反射的に屈むと彼の脇を擦り抜け、荒々しく床を滑って転倒した。

その拍子に、伸びていた手がデスクの下の銀ペダルに当たる。




 突如放たれた機械音に、大きく肩が竦んだ。

上体を起こし、飛び込んだ光景にまたも瞼を失う。



「っ!?」



ガラス越しにある球体の籠が回転し、人体が露わになった。

それに腰を抜かし、擦り這いで後退る。




そこへ、襟首から急に引き上げられ、体が一気に浮いた。

革の冷たさが、背筋を這う。

ヘンリーは、空いた右手で彼女の両手を手早く背後に回し、左手で固定した。



「いっ!」



その力はまるで、シャルに掴まれた時の感覚と同じだった。






「縁と言えばこいつだ……」



右手で彼女の後頭部を鷲掴み、前方の人体に突きつける。

恐怖に涙ぐんだ一驚が上がった。

目前には、鉄格子の中で眠る、短髪のブロンドの男。

眼窩に沿って広がる真っ暗な両目の奥には、白光が灯っている。




「……お前を植物にした張本人だ……

起きたら…詫びさせてやる……」



「はっ!?」



理解不能な発言に、咄嗟に振り返る。



「有り得ないっ!本人なんかじゃないっ!」



彼はげんなりし、細々溜め息をついた。

頭が悪いと言いた気だ。



「分解された物を見た!

組み立ててる!そうでしょ!?本人な訳無い!

アマンダだって葬儀も火葬も終えてる!

あんなのっ…出来過ぎた人形よっ…」



言い聞かせる様に、またそれを願う様に、彼の発言を否定し続ける。



「…使えるもんは……全て使う……」



掠れた声で零れる異常な発言に、ターシャは激怒した。



「いい加減にして!遺灰だって撒かれてるっ!」



呼吸を乱しながら、彼を肩越しに睨みつける。

一体、どこを見て話しているのか。

正面のスポットライトを受け、僅かにその目は濃紺を見せる。

そのまま瞬きも忘れ、彼は口を開いた。




「知り過ぎたついでだ……

てめぇらは遺体の替えを焼き…

カルシウム材を撒いた……」




ターシャは堪らず絶叫した。

常軌を逸したそいつから逃れるべく、全身を揺さぶり、捻っては、激しく体当たりする。

彼は前のデスクに触れさせるまいと、暴れる彼女を勢いよく後方の床に投げ飛ばした。




 衝撃と共に激痛が全身に迸る。

顔から落ち、打撲の跡が滲み出た。

彼は、片耳に受けた鋭い叫び声に一時目が眩む。

そして、彼女をジリジリと睨みつけた。




 ターシャは瞬時、レイシャのローラーチェアに駆け寄り、彼に向かって投げる様に乱暴に滑らせる。

当然彼は、飛んできたそれを左手で容易く受け止めた。

ターシャはみるみる血相を変える。




「許さないっ…なんてっ…なんて酷いっ……

こんなとこぶっ壊してやるっ!

あんたが焼却されろっ!死ねっ!」




正面から飛ぶ涙ぐむ怒号にも、彼は怯まない。

そんな発言にも、すっかり慣れてしまっていた。




「……なら……連れてけ……」




左手が重く伸びた時、部屋のドアが放たれた。






 廊下の灯が一気に差し込み、床に太い電球色の線が走る。

ターシャは声を上げ飛び上がり、現れた者達に震えた。




 レアールとジェレクが、ガンベルトとマガジンポーチを装着した状態で入室する。

ヘンリーは2体を目にするなり、イーサンの席の傍の壁に向かった。

よく見ると引き戸になっていたそこを、微かな金属音を立て解錠し、滑らせる。




ターシャは掠れた悲鳴を零し、目を奪われた。

そこには、数種類の銃が重い黒光りを放って縦向きに並んでいた。

2体は吸い寄せられる様に、そこへ移動する。




 ターシャは床で大きく身を引き、呼吸を荒げながら思った。

一刻も早く、ここの存在を外に報せなくてはならない。

こんな場所は、あってはならない。

壊してやる。

目の前の状況を見て、ただただそれらの感情は巡り続けた。










MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[一言] 教えたのは何でー。 まだピンチなのー。 ターシャちゃん、何時一息つけるのー。 僕の珈琲は何時、お代わり出来るのー?←勝手にしろww アマンダの死の真相、成る程ねぇーって、今更思ってます。
[一言] ターシャの怒りはもっともですね、親友の遺体を冒涜されたわけですから…… 知りすぎてしまったターシャ……ますますピンチに陥ってますね…… そして、組織の人間が言うこれも人工的な進化というべ…
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