表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
71/189

[22]




「不採用だ……

ここに来るのは屍か…協力者のみ……

お前は生きた屍……対象外にも程がある……

スペックも低過ぎてアンドロイドにする価値も無い……

治験対象になるか…嫌ならそいつと勝手に焼却炉に入れ……」




その言葉に、シャルが僅かに伏せていた目を上げた。

レイシャは眉を顰め、落ち着きを取り戻していたイーサンは顔を強張らせる。

その傍らでターシャは、アンドロイドというワードに硬直する。




「メンテの余地は無い…

シャルロット・デイヴィス、お前はここまでだ…

焼却実行に入れ」




最後は、補佐2人に目配せしながら強く放った。




初めてのアンドロイドの処分。

これまでメンテナンスで維持してきており、処分の選択はした事が無い。

イーサンは、不安な目をヘンリーに向けた。

保安官には、予備バッテリーと予備データ基盤を複数仕込んでいるからだ。




「…い…いいのか?そんな急に」




しかし、その声に覆い被さる様に、ヘンリーは鋭い威嚇の目を向けた。

嫌悪に満ちた黒い双眸は、先程イーサンを落ち着かせた者とは思えない。

その豹変に、彼は喉を縛られる様な感覚に陥る。

直ぐさま、レイシャが慌てて彼を呼び、静かに首を振って否定する。

それはまるで、何も通じやしないと言う様だった。

2人は少々混乱しながら、部屋を飛び出した。




「ここに連れて来る任務は正式に完了した。

処分理由は無い」




シャルの淡々とした意見に、彼の様子は一層変わり始める。




「…クソみてぇに半端な忘却喰らいやがって……

イかれたなぁ……

最後まで貴様はっ………

面倒なっ………」




彼の瞼は失い、徐々に呼吸を荒げ始めた。

ジリジリと厭悪し、体が小刻みに震える。

大きくなる鼓動は体内に響き、視界を揺らした。

そこに何が見えているのか、誰にも捉えられない。




振動する見開かれた目は、彼女に憎悪を滾らせている。

次第に汗が滲み始めると、急に黒い左肘に掴みかかり、爪を立てた。

目は細まり、まるで激痛に耐える様子の中、荒くなる息までも抑えようとしている。

その間ずっと、シャルから目を逸らす事は無い。




「他の任務がある。私は戻る。

そいつが逃げた時、また連れ戻す」




「ほっつき歩いてろっ……

最後に試してやるっ……

抗ってっ……見せてみろっ……

その崩れるザマっ……もう一編っ…

見てやるよっ……!」




彼女の成れの果てを想像しているのか、身に犇めく痛みを堪え、小さく笑いを含ませながら放った。

何かに取り憑かれた様に、瞳孔は開いている。

ターシャが見ている事など、彼からは抜け落ちていた。




「このままその発作が続けば、長くは立っていられないわ。

そもそも以前から安定していない。

だから誤った判断をしてしまう。

大人しく寝る事ね」




「っ!?」




発言に吠え飛ばしかけた時、金縛りが起きた。

視界は霞み、声が出せない。

彼は、ただ彼女が立ち去るのを見届ける事しかできなかった。






 人の体を細かく分析するアンドロイド。

それもまた、組織の1つの理想だった。

立ち去った彼女は、彼に体調の危機を報せたまでである。

しかし、彼はそれを穏やかに受け取る事ができなかった。






 ターシャは、酷い言葉を放たれていながら平然と去る彼女に、恐怖していた。

その傍ら、恐る恐る隣を振り返る。




デスクに腰掛けたまま、まだフリーズして息を荒げていた。

なかなか体が動かない事に、苛立っている。

目に見えぬ拘束に強引に抗い、傍のラップトップに手を伸ばし、キーボードを数秒叩く。

その間まだ、息を必死に整えているのが窺えた。




その異常な姿に、ターシャは小さく後退る。

ドアの先にはシャルが居るだろう。

逃げ場が分からず、ただ彼から今は距離を取った。




「……そんな…選択は……どうでもいい…か……」




彼女は目を細め、先程の焼却というワードから想像する。

働かせるだけ働かせ、己の都合で廃棄するというのか。




「イかれてるだなんて…あんたが言える口!?」




ラップトップは音を立て、閉じられた。

彼は、鋭い流し目を彼女に向けて立ち上がる。

高く伸びた黒い者に体が跳ね、ターシャは更に後退る。




 最初に対面した人間でなくなり、未だ何かに耐えながら、正気を半ば失っている。

視界が揺れているのか、接近し始める足取りは安定しない。

そこへ、黒い左手は徐々に彼女に伸びていく。




「嫌っ…寄らないでっ!寄るなっ!」









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヘンリーは…淡々と壊れる何かみたいで怖いなぁ。 ねぇ、ターシャちゃん。←また贔屓w 焼却炉送りを回避しただけでもまぁ、良かった。 良かったよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ