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*完結* MECHANICAL CITY  作者: terra.
#06. Please wait 決定
70/189

[21]




 俯く目にかかる髪の隙間から、彼はターシャを()め上げた。



向こうの空気や発言はすっかり、下らないものでしかない。

その、耳障りでワンパターンな正を、美を、ただ一生ブレる事無く貫いていろ。

知ろうとせずに生きていく事が、如何に恐ろしく、何を齎すか。

それを最期まで知る事無く、呑気に生きていろ。



そんな感情が、闇に佇む光の無い目に渦巻いていた。






 レイシャはターシャから大きく目を逸らすと、間を置き、言った。




「相変わらず(こぞ)って同じやり方を繰り返し続けて、人からはみ出さないよう己を守って、そっちが気色悪いのよ。

ただ真似事をして、大した発見も進歩もしないまま、終わり。

刺激も、個性の欠片も無い」




再びターシャに激しく振り返った時、その目は彼女を虚仮(こけ)にしていた。




「突出した、遥かに個性的な手を使う。

一線を越え、リスクに敢えて突っ込み、この目でその世界を確かめる。

恐れられるアクションを起こした先で、新たな可能性、思考、利益、策を生み、未来は開拓される。

実際にそうした偉人のデータを取り入れた上で、現代という世界は成立している。

そちらが煙たいあまり排除した人間が揃えたデータですらも、結局いつかは手に取る時が来るのではなくて?

そうして都合よく流れる時間は、人間が存在する限り途絶えやしない」




互いの距離が縮まり、鋭い声は一層、ターシャに寒気を齎す。




「我々が手掛けるのは、生々しい再生。

どこぞの埃を被った中身の無いプラスチックだのとは、違う。

アマンダ・マクレーンの細胞は、ここで再び生きてるのよ」




ターシャの皮膚は粟立ち、反射的に立ち上がっては後退る。






 皮膚に似ていた物が、散らばったプラスチックであろう目が、箱から散乱した金属類が、ただ形成されているだけだろう。

それらで溢れかえる現場を、実際に通過してきた。






 その一方、自分が遺体呼ばわりされていた事を、思い出す。

ロボットの間を切り抜ける中、生温い何かが足に触れた事もまた、過る。

先程の、理解不能な会話の中に紛れた、人体解剖や防腐処理という発言。




「嫌…嫌止めてっ!」




あの殺風景な家屋で、アマンダの肌にわざわざ保湿等をしていた事も、勝手に引き出される。




「そんなのっ…

そんなのあんた達が都合よく表現してるだけでしょ!?

生きてるって勝手に思い込む、自由過ぎる行為よ!

ここに、生きた人なんて居ない!

彼女は亡くなってる!それは変わらない!」




両耳を激しく塞ぎ、レイシャから数歩離れる。





“自分がここに居る事からお察しが付かないのね”





その言葉に混乱し始めた。

まさか、自分が機械にされると言うのか。

目が高速に泳ぐ。




「違う!組み合わせた作り物っ!

そうよっ!見てきたっ!

そうに決まってるっ!」




つい、叫んだ。

ただ悪戯に、パーツを組み合わせて作られているだけだ。

本物の人間だなんて、馬鹿げている。






「……静かにしろ…………」




低音は、気付けば間近で振動した。

真っ黒な彼の背格好と表情が、露わになる。

光を失った目で圧をかける背後には、ここよりも明るい部屋があった。

丸い大きな謎の籠に、ターシャの目は更に震えた。









MECHANICAL CITY


本作連載終了(完結)後、本コーナーにて作者後書きをします。

また、SNSにて次回連載作品の発表を致します。




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― 新着の感想 ―
[気になる点] いーやぁああーー!!。・゜・(ノД`)・゜・。絶叫!!ww ターシャちゃんが、ターシャちゃんが、如何なるの?!←次、読めよww [一言] 怖いよ、怖いよー。 次が怖いよー。←だから、…
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